この秋、桑名が村正 に沸いた。
村正とは、
室町後期~江戸初期に
桑名で活躍した刀鍛冶 。
そしてその作となる日本刀の名。
徳川家に仇をなす妖刀 としても知られる。
(詳しくはこちら )
その村正に触れられる という
貴重な鑑賞会が4日間限定で行われた。
桑名市民会館
主催は、日本刀特別鑑賞会実行委員会(昭和印刷株式会社)。
定員の約450席の予約枠はあっという間 に埋まり、
参加者は、北は北海道、南は九州、更には海外 から日帰りで訪れた方も。
しかも半数以上が女性。
ゲームやアニメ の影響で、
刀剣女子と言われる刀フリークの女性が増えているよう。
今回私もスタッフとして参加し、
日本刀の魅力 を知った。
講師は
刀匠 宮入小左衛門行平 氏。
父である人間国宝 宮入行平氏の伝法を踏襲しつつ、
刀を研究、
独自の境域 を完成させた刀匠。
日本刀文化の振興推進に
精力的な活動をされている、
(公財)日本刀文化振興協会の専務理事でもある。
職人さんってお話苦手というイメージがあったが、先生のお話はとっても面白い。
先生曰く、
日本刀は俗説や通説ばかりが出回ってしまう為、
職人自らも”伝える力 ”が必要な時代だと仰っていた。
伝える力・・
どこでも求められるね。
研師 小野敬博 氏、森井鐡太郎 氏もお迎えし、講演会からスタート。
展示された刀は11振り。
どれも本に載っているような名力 ばかり。
日本刀は、
作られた時代がどういう時代 だったのかと
歴史的事象が反映されている美術品。
初めは、「全部同じに見える…」と思っていたが、
ポイント を教わると、
こんなにも違いがあるのかと驚いた!
鎌倉~江戸の時代順 に並べられた刀について
1振りずつ説明がなされる。
<日本刀の代表的な種類 >
▼太刀 銘 吉房(鎌倉)
備前福岡一文字派を代表する名工
バランスよく華やかで優美。
反りが素晴らしく、美しい太刀 の代表的な姿。
刃文が丁子刃 で雲のような模様が出ている。
<備前伝の特徴 >
600年以上前の作品で、
今回の刀の中で一番古い もの。
▼刀 無銘 則重(鎌倉)
相州伝の典型的姿。
黒い地鉄部分 が特徴的。
松皮肌 という
松の木の皮のような模様がはっきりと出ている。
また稲妻や金筋の景色もみやすい。
俳優 故 高倉健 氏から寄贈されたもの。
▼脇差 銘 修理亮盛光(室町初期)
備前長船派の刀工。
品の良い地鉄と精美な刃文が特徴。
伝統的な脇指。
▼刀 銘 村正(室町後期)
謎が多き村正。
研究を遅らせている一因として、
製作年号 がほぼ入っていないことが挙げられる。
コレクター家康の目に留まったのも納得の名刀で、
名刀あってこその妖刀伝説 とのこと。
▼短刀 銘 村正(室町後期)
素晴らしい村正の短刀
一番の特徴は茎 (なかご)
茎の形がたなご腹 で、やすりが真横に切ってある。
(通常は斜め)
また刃文がはこがかり、表裏同じ というのも特徴。
▼短刀 銘 村正(村正写し)勢州義明斉廣房模之
村正を写したもの。
出来はとても良いけれど、
村正の特徴である”たなご腹 ”を本物と比較すると大胆さが違う。
左が写し、右が村正。
実は廣房は、
今も桑名にお店を構えている廣房打刃物店 のご先祖なのだそう。
しっかり廣房の銘がきられている。
ここまで上手に村正を写しているのは、腕が良かった証拠だという。
美濃(関)系統 の特徴をもつ村正。
ここから美濃の刀が並ぶ。
▼短刀 銘 兼升(室町末期)
ゆったりとした刃文。
▼刀 無銘 兼元(室町後期)
刃文の互の目 が、
元から先まで連なっているのが
関の刃の特徴。
以上、ここまでが古刀 で、
桃山時代からは技法がかわり、新刀 に区分される。
特に江戸時代は平和だった為、侍は形式的に刀をさしていたといわれている。
▼刀 銘 (葵紋)康継於越前作(江戸初期)
徳川家康 から一文字もらい、葵の紋を打つことも許されていた名工。
南蛮貿易で南蛮鉄 を輸入し刀を作っていたという記録もある。
新し物好きかつ、輸入品を使える立場でもあったということ。
▼脇差 銘 丹波守吉道(江戸中期)
刃文の中に、すだれ刃 というサっとすだれたような線が堅調に出ている。
▼刀 銘 信濃國真雄
形の良い長巻。真田家に抱えられた名工。
弟は有名な山浦清麿 。
兄弟でも全く作風が違い、ドラマチックな生き方×激しい作風の清麿に対し、
真雄は堅実で真面目な人生×実直な作風を貫いた。
このように、
時代や作者 の特徴や感性を捉えると、日本刀鑑賞の面白味がグーンとUPする。
参加者は、懸命に講師の話を聴き、熱心にメモを取る方も。
続いて、
鑑賞の方法とお作法 を学ぶ。
まずは刀の前で敬意を表して一礼 。
ゆっくりと刀を手に取り、全体の姿 を眺める。
白熱球の光を透かし、刃文 の変化や景色をみる。
次に、
ふくさで手元 に引き寄せる。
黒と白のコントラストは研師によるお化粧。
黒い地鉄に光をあて覗き込むと、刀鍛冶が何度も施した
ミルフィーユ状や肌模様 が確認でき、
時代や流派、作者の特徴が景色 となって表れているのがわかる。
さぁ、いよいよ参加者 の観賞。
制限時間は、
1振りに対し1分間。
手にすると、自然と背筋が伸び、
伝わってくる緊張感 。
その真剣な眼差しと、マナーの良さに感心してしまう。
自分の好きな角度で、好みの光をあて、重みや感触、バランス感を堪能する 貴重な体験。
フォルムや反りに皆さんうっとり 。
鑑賞を終えた方にお話を伺ってみた。
「手が震えた」
「脳内シミュレーションを超えた感動」
「刀と歴史の重みを感じました」
「この余韻でご飯3杯イケます」
「暫く手を洗いません」
と手に残った鉄の匂いを嗅ぎ、浸る方も( ´艸`)
会場から
「並んでいる刀は人を切ったことありますか?」
という質問も出た。
「わからない」 というのが回答になるわけだけど、
実は日本刀って、
武器としての殺傷能力 は
さほど高くなかったのだそう。
戦国時代の戦での負傷原因を調べると、
1位:銃
2位:槍
3位:石
4位:刀
というデータが出ていた。
なんと。
それでも侍が大切に腰に下げていた刀は
プライド(誇り) の象徴。
深い関係性の中で、魂や想い と共に譲り譲られ、
その想いを重んじる豊かな心の持ち主たちにより越え渡った長い歴史。
作品としても美しいけれど、経緯やストーリー、巡り合わせまで想像すると、
壮大なロマン がある美術品だと思った。
その他、
会場では、桑名市内の和菓子屋7店舗が協力した妖菓村正 が販売され連日ほぼ完売。
桑名に縁ある松平の家紋”梅 ”のあんと使ったものや、
村正の製法をイメージし、羽二重餅 で包んだもの等、
各店のコンセプトは面白かった。
同時期に開催された
桑名市博物館「村正展 」も大盛況だった模様。
こうして村正フィーバーに沸いた桑名。
日本刀の美を通し、日本の文化を感じ、
伝統が次世代 にも受け継がれていくことを願いたい。