三重・桑名で100年以上続く老舗「いもや本店」

初代は壺焼き芋屋、二代目はかき氷屋、そして三代目からは玩具屋として、地域の子どもたちに遊びを届けてきた。

かつては店先に自転車がずらりと並び、入店制限をかけるほどのにぎわいだったそう。
長居すると店主から「レッドカード」が出されるのも名物で、目安は30分以内。退場の合図が笛とともに響いた。

ミニ四駆がブームだった時代には、店主がコースを作り、弁当持参で遊びに来る子どもたちもいたという。
「お年玉をもらうと駆けつけた」
「長居すると笛をピーッと吹かれて怖かったけど、それも楽しい思い出」
「自分の子どもの頃から、今では孫までお世話になっている店」
地域の大人たちからはそんな声も多く聞かれる。
現在、店を切り盛りするのは、84歳のおかあさん(三代目)。

紀伊長島から24歳で嫁ぎ、義両親の営む「いもや二代目」を手伝うことになった。
ご主人は8年前に他界し、今はひとりで店を守っている。
「おとうさん(三代目のご主人)は、もともと勤め先でエレベーターを作ってた。その時のいもやはかき氷屋で、私は嫁に来て“大事な嫁さんやで”って、焼き物はやらなかったけど、みたらしや焼きそばもあってね。お団子も蒸して焼いてタレつけて手作りでやっとった。氷も細こう削って美味しかったよ。石取祭のときもよう売れてたわ。ほんまにええ両親やった」

そう語りながら、「これ面白いやろ」と駒を回して見せてくれるおかあさん。

——なぜ三代目から玩具屋に?
「スーパーが近所にできて、食べ物も洒落たもんも並ぶようになった。それならおもちゃの方がいいのではって。親戚一同すぐ賛成。昔は地域のお祭りもたくさんあったから、みんな夏休みになるとくじ引きの景品買いに来てたね」

——最近はどんな人が訪れますか?
「今の子はゲームだから、細かい遊びせんでしょ。今は大人が多いね。2、30年経って大きくなったお兄ちゃんたちがようみえる。あの頃買えなかったものとか、流行ったものを買いにね」

——玩具屋の面白さは?
「仕入れで変わったもん入ると面白いね。あと女やから可愛いもんがやっぱ好きやな。 なんせ一番に見れるしな」

——桑名の暮らしはどうですか?
「いなかやけど好きやね。名古屋行って、桑名に戻ってくると“やれやれ”って思うし、帰ってきたらお茶漬けシャシャッと食べたなる。のんびりしたところがええね。色んなお店もあって。私の出身は紀伊長島で、昔は巡航船に乗って高校まで通ってたんよ」
店内にはガンダムや仮面ライダー、プラモデル、ボードゲーム、おまけのおもちゃまでぎっしり。

それでも、当時は天井一面にまで飾られていた物はなくなり、数がだいぶ減ってきている。

ひときわ目を引くのは、尻尾のないゴジラ。
「それは売りもんとちがう。寂しいから、お父さんの代わりやね」とおかあさんは笑う。

積み上げられたおもちゃの中から掘り出し物を探すのは、まるで宝探し。
思わず「うわ!これ懐かしい!」と声が漏れる。
エピソードトークの披露も止まりません。
大人も童心に返ること間違いなし。時間がいくらでも溶けます。

この日、私は「つちのこ」と「きらきら指輪」を購入。

友人は、(おそらく)40年弱前の「秋元康プロデュースの電撃入籍ゲーム」を購入。

芸能人お忍びアベックとパパラッチが騙し討ちするルールらしい。
(えぐいw)

「これはおまけに」
とおかあさんがくださったのは、懐かしの”妖怪けむり”と”鉄道の袋とじ”。

かつて子どもだった大人たちの思い出が詰まった「いもや本店」。
時空も時間もとける、タイムカプセルな玩具屋です。

いもや本店
住所:桑名市新町99
電話:0594-22-1447
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身。元夫の都合で三重県へ移住し、現在は東京との二拠点生活。金融業界での経験を基に業務改善拠点を開設後、経営・事業戦略におけるPR視座を体系化。「さかさま不動産」など、新たな概念を社会に浸透させる事業を得意とし、その過程で得た生々しい成功・失敗事例を通じて社会構造を整理。認識・行動変容を狙う戦術や共創を軸に、多様な組織やプロジェクトに伴走・加速させている。日本PR協会「PRアワードグランプリ2023」最高賞受賞。仕事好きが集まる場「ニカイ」という拠点も運営している。この記者が登場する記事




