ホーム 02【遊びに行く】 地域の人たちに愛される「相棒」二人の、 “服を通して福を与える”取り組みとは

地域の人たちに愛される「相棒」二人の、 “服を通して福を与える”取り組みとは

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「うわぁ、かわいい!」

取材だということも忘れ、色とりどりのヴィンテージのワンピースを手に取り、はしゃいでしまう。懐かしさを感じるテキスタイル、鮮やかさの中に品を感じる配色、襟元の細かなディティールは、今では出会えないデザインばかり。袖を通すとシルエットも美しい。

ここ「Fukumochi vintage(フクモチ・ヴィンテージ)」は桑名市矢田にあるヴィンテージの洋服を扱うセレクトショップ。元は「福餅」というお餅屋さんだった場所が、リノベーションされ生まれ変わった。店内には店長の生駒郁代さんがセレクトしたセンスの良い古着が並ぶ。

かわいい古着を前に思わず「これはおいくらなんですか?」と生駒さんにお聞きすると、「実は売り物ではないんですよ」と教えてくれた。ここにある洋服は会費制で、一年の間に借りた洋服を何度でも交換できるシステムだそう。


「とってもええ考えやと思いませんか?昔は自分の服は自分で作って、買ったら尚更、嫌でも持っとらなあかん。ここは借りて、もういいなと思ったら次のやつを借りてったらいい」

そう教えてくれたのは坂本 都始子さん。元々この場所で60年以上「福餅」を営んでいた方、つまりこの場所の家主さんだ。にこにこと話をしてくれる坂本さんの膝の上には生駒さんの次男がちょこんと座っていた。

みんなが持ち寄り、みんなが借りる。世代を超えた「Our closet」

お話を伺っていると、近所の方が服を持って訪れた。「これ、母のものなの…捨てるに捨てれないし」そう言って何点か服を取り出した。実はここで扱う服のほとんどは、ご近所に住む方やその知人の方から寄贈してもらった服。中にはブランドものやオーダーメイドのものもある。

持ち寄ってもらった服がすべてお店に並ぶわけではないが、“服を持ち寄る”ことに意味があるのだと生駒さんは言う。

若い方も年配の方もみんなが持ち寄って、みんなが借りるっていう行動が繰り返されることが、『Our closet』というコンセプトにつながっています。大切にしていた服には大切なストーリーがあって、そのストーリーをもつ服をまた違う誰かが大切にしてくれる。持ち寄る側にも喜びがあるといいなと思っていて」

「古着」というコンテンツを通して、幅広い世代がつながっていく。30代の方が借りた服を次のシーズンには50代の方が借りていくこともあるそう。世代を超えて好まれるヴィンテージの世界観。私を含め、実はこの世界観を好む人たちには共通点があると生駒さんが教えてくれた。

古着が好きな人って物事に主体的な人が多いと思うんです。与えられた流行ではなく、服に自分がわくわくする宝探し的な要素を求めているような。私が一番やりたいと思っている『この町を面白くする』。それに一緒に関わってくれる予備軍みたいな人が来てくれているんじゃないかって」

「古着」はこの町と沢山の人との関係性を作るきっかけ。そこから町がにぎわい、豊かになっていくことが重要だと生駒さんは考えている。結婚を機に愛知県からこの地に来て、まだ数年しか過ごしていないはずの生駒さんが、なぜこんなにもこの町に愛着をもっているのだろうか。

 

お寺での出会いがもたらした心の変化。「住んでいる」場所から「自分の大切な」場所へ

生駒さんと坂本さんが出会ったきっかけは、お店の向かいにある善西寺で開催している「おてらこども食堂でたまたま隣に座ったことからだった。坂本さんの家は善西寺の門徒として先々代から長い付き合いがあり、住職に声を掛けられてしばしばお寺のイベントに参加していた。

「生駒さんの上の子がこっちに風船とばしてきたんよ、それで私が「やったなー」って一緒に遊んでたん。確かあの時が最初やったな。それから一ヶ月にいっぺん、こども食堂で会うようになってね」

懐かしそうに目を細める坂本さん。そこから子供を介して坂本さんと生駒さん一家との付き合いがスタートした。はじめは挨拶程度の間柄だったが、次第に近くを通ると必ず坂本さんの顔を見に家に立ち寄るように。一人住まいだった坂本さんはとても喜んで、子供たちの面倒を見てくれた。

子供のころからマンションで生活を送っていた生駒さんにとって、初めてもてた「地域との繋がり」。それは新鮮で、とても心が温まるものだった。坂本さんを通じて、生駒さんにとって地域が「住んでいる場所」から「自分の大切な場所」へと次第に変化していった。

「自分が出産して身動きも取りづらくなったときに、もっと自分の歩いて行ける範囲で楽しい店だったり、楽しい人に会えたりする場所があったらいいなって思っていました。でもそれを言ってるだけだったら一生実現されないし、その望みは叶わないなって思って。元々私は裏方が好きなんですけど、この町においては自分でやらないと!って」

自分たちが住む町は自分たちで何とかできる。生駒さんにとっての町と私のいい関係

地域にどこか賑わう場所を作りたい。そう考えた生駒さんは善西寺の住職である矢田俊量さんに相談をもちかけた。引っ越しをしてきた当初、足しげく通ったリサイクルショップにヒントを得て、年齢関係なく集える「古着」を扱った場所を作ってみたい、と伝えた。

「おひとりで暮らしながらも、地域に根ざしており、地域を誰よりもご存知の坂本さんが、最新の地域づくりに興味を持つ生駒さんと互いの強みを活かしてタッグを組んだら、そんなおもしろいことはないんじゃないかなと思いました。これは、よそでやっていない、且つうちでしかできない。ワクワクしませんか?」

朝晩お寺で手を合わせることが生活の一部となっているほど、お寺と太く信頼関係がある坂本さんの存在があったからこそ、矢田さんはこのプロジェクトを手掛けようと心に決めたのだ。

また、その話を住職から聞いた坂本さんも「ここを(福餅)使ったらええやないの」、たった一言で場所の提供を快諾した。こうして善西寺の“RETERAプロジェクトの一環として、Fukumochi vintageはスタートをきった。資本になる洋服も住職や坂本さんの声がけでお寺の門徒さんから多く寄贈され、中には坂本さんの服も何点かあった。

美しい網目の白いニットは坂本さんのお手製。実は女学校を卒業した後に四日市にある洋裁学校に通っていた坂本さんにとって、刺しゅうや編み物はお手の物。元々穴が空いてしまっている服は布をあて、刺しゅうをしてリメイク。ボタン付けやすそ直しも坂本さんが手をかけてくれるおかげで、長く眠っていた洋服たちもこうして日の目を見ることができるのだ。

話をしながらも時折、往来に目をやり行きかう近所の人に必ず声をかける。長くこの地で商売をしてきた坂本さんはこの町の顔である。坂本さんはお店がオープンする際、福餅の顧客だった人や近所の人に自ら生駒さんを紹介していたという。

なぜ二人はこんなにも信頼を寄せられる間柄なのだろう。不思議に思って聞いてみると、「嬉しかったんよ」と坂本さんがその理由を教えてくれた。

「私はね、病院についていってもろたんが一番嬉しかった。ほっといたら危ない病気やった。息子を遠くから呼び寄せるのもかなわんし、お医者さんの難しい話を理解できるんかも不安やったんやけど、生駒さんが一緒についてきてくれてねぇ、子供を連れて。ありがたかった…」

そして、生駒さんにとっても坂本さんは大切な存在。言うなれば世代を超えた「相棒」なのだそう。生駒さんがこの町にきて実現したかった“自分の歩いて行ける範囲の楽しい場所”を一緒に作ってくれた相棒、坂本さん。さらに坂本さんの存在を通じて、自分がこの地域で何ができるのかがはっきり見えてきたと生駒さんは言う。

「野菜の買い物を坂本さんに頼まれた時に、この地域の人たちが野菜を買いに行くのが大変だっていうことを知って。じゃあ、その『あったらいいな』をこの店で叶えようよと。そうしたら 野菜を通じてまた新しいつながりができるかなって思ったんです」

今度は八百屋さんを、さらにはママが仕事できるコワーキングスペースを、あとはFukumochi vintageに来た人が町を楽しめるガイドブックを作って…と生駒さんの夢はどんどん広がるばかりだ。

「自分たちの暮らしとか生活を、自分たちの力で何とかしようと考えれば、豊かになる気がしていて。自分の町に対して、主体性のある人が増えればきっと暮らしやすい町になっていくはずだから」

人を思う気持ち。助け合う気持ち。その気持ちからどんどん地域に、人に、あたたかな関係性が生まれていく。

今日も誰かが坂本さんに会いに、生駒さんに会いに「Fukumochi vintage」にやってくる。そうやって二人を介し、これからも様々な人たちが地域とゆるやかにつながっていくのだろう。

(撮影:y_imura

 

Fukumochi vintage(フクモチ ヴィンテージ)

三重県 桑名市西矢田町35

facebook:https://www.facebook.com/fukumochivintage/

Instagram:https://www.instagram.com/fukumochivintage/

Twitter:https://twitter.com/Fukumochivtg

 

ミカミ ユカリ

OTONAMIE×OSAKA記者。三重県津市(山の方)出身のフリーライター。18歳で三重を飛び出し、名古屋で12年美容師として働く。さらに新しい可能性を探して関西へ移住。現在は京都暮らし。様々な土地に住んだことで、昔は当たり前に感じていた三重の美しい自然豊かな景色をいとおしく感じるように。今の私にとってかけがえのない癒し。

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