ホーム 01【食べに行く】 現代人の心の渇きを潤す立吞み処、中村酒店@津市

現代人の心の渇きを潤す立吞み処、中村酒店@津市

国道23号線。三重大学の近く。
この町に生まれ育ち、もう慣れてしまっていた景色。

バドがドーーーン!

中村酒店から突き出した、バドワイザー。
見覚えがある方も多いのではないだろうか。

派手なこのオブジェも気にはなるが・・。
それより気になっていたのは写真右下の「立ち飲み処」。

中村酒店に隣接する立吞み処を眺めていた。
明日からの仕事を思うと、少し気が重い。
当日はそんな夜だった。
悶々とした気分を、喉を潤し、スッキリしたい。
そんな衝動に駆られ、初めて店に入った。

結構早い時間帯だったが、次々とお客さんが入ってきた。
お客さんはそれぞれに、笑い話をしながら吞んでいた。

入店したとき、スーツを着た一人の学生が、お店の方と話しをしていた。
どうやら就職か何かの面接の帰りだったらしい。

まずはハイボールでシュワッと。
角ハイボール、200円・・・、200円!!
全体的に安めのセッティング。
大学生にも優しい。

さすがは酒屋の立吞み処。
こだわりのお酒も手頃な価格で愉しめる。

奥の席で吞んでいた、おじさん達に話しを聞いてみた。

私:ここにはどういう時に来るのですか?
おじさん:0次会やな。今日も0次会、やんな?

そういうと顔を見合わせ、おじさん達は笑った。

私:若い子が立吞みにいるのが、なんだか不思議で・・。
おじさん:学生さんも悩みやプレッシャーがあって、フラストレーションも溜まるんやろな。ちょっと吞みたい。そんなとき値段も高くないこういうところがいいんやろなと思う。お酒って、一人で吞むものじゃないやろ?

私のとなりでは、ほぼ毎日ここに通うという学生。
と、そこには缶のハイボール・・。

学生:となりの酒屋で缶のハイボールを買ってきて、ここで吞むのが一番安いです。1杯目はここでハイボールをたのんで、2杯目はそのジョッキに買ってきた缶ハイボールを注ぐのが学生パターンですよ。

すばらしいテクニックを教えてもらい、ついマネしたくなる。
でも、そんなのありなのですか?

オーナーの中村さん。

お店の方:ぜんぜんいいですよ。

さっそく隣接する酒屋へ。

日本の次世代を代表する、地酒のひとつとも評される、名張の銘酒「而今」も豊富にあった。

ちなみに、つまみも立吞み処に持込可能。

学生さんのマネをしてみた。
非日常的で何だか楽しい。

そして立吞みスペースに戻る。

先程のおじさん達のテーブルを横切ると、つまみが豪華になっていた。

おじさん:大人はこういうの、食べやな。

学生さんのマネをして、浮かれていた自分を少し反省。

学生さんが食べてるのは、湯切りしない版のUFO。
学生の間では、大辛あんかけ風焼そば味が人気らしい。

それにしても、この不思議な空間。
どのようなきっかけで始まったのだろうか?
お店のオーナー、中村さんに聞いてみた。

中村さん:昔はどこの酒屋にも、立吞みスペースがあるのは珍しいことではなかったんですよ。こういうスペースを角打ち(かくうち)と呼びます。大正時代は安い焼酎をてっぱつと呼んでいて、それを四角い升で吞む。升には角があるから角打ちです。

ちょっと粋だなと思った。

中村さん:昔、角打ちがあった理由として、当時はお酒を売るのは酒屋だけ。酒屋がツケ払いでお酒を売っていたから、現金を確保するために角打ちがあったんですよ。

なるほど。
しかし、今の時代にこの値段で角打ちを営んでも・・。
あ、そうか。
入店したとき、学生とお店の方が面接について話していたのを思い出した。
学生にとってここは、ただお酒を吞む場所ではない。

中村さん:常連の大学生が、卒業式の後に来てくれたりね。

そう言うと、中村さんは嬉しそうに学生が残していった “お店の卒業写真” を眺めていた。
中村さんは学生から「お父さん」、奥様は「お母さん」と呼ばれることもあるという。

ときに、学生が立吞みスペースに入りきらないことも。
そんなとき、中村さんは酒屋内に特設スペースを設けるといい、見せてくれた。

私:すごい!そこまでしてくれるのですね。

実家を離れて暮らす学生にとって、ここはキャンパスにもアパートの一室にもない、心のよりどころなのだろう。

ほんの一杯のつもりが、すっかり長居してしまった。
そして少しいい気分の帰り道。
「お酒って、一人で吞むものじゃないやろ?」
冒頭に聞いたおじさんの一言が、リフレインしていた。

何だか久し振りに、足取りが軽くなった。

 


 

中村酒店
津市栗真町屋町1655-2
tel 059-232-4024
tw https://twitter.com/x6AilVjvoTgryDH?lang=ja

※営業は17:00〜

 

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