島国日本の文化は海外から日本へ
“ 私自身がこの命を誰にも差し上げていない。(差し上げて)いないワタクシがこの命を生きるために、一日生きるために、どれだけの命を頂戴しているのか、分かりませんわな ”
曹洞宗の有名な尼僧、青山俊董さんの言葉で始まるのは、映画「典座 TENZO」の予告編動画(公式ホームページ)。「典座 TENZO」はカンヌ国際映画祭「批評家週間」特別招待作として上映や、マルセイユ国際映画祭で観客賞を受賞。2019年10月から東京で上映が始まる注目度の高い映画だ。今回、典座のプロデューサーを訪ねた。
津駅から徒歩数分のところにある曹洞宗塔世山 四天王寺の住職、倉島隆行さん。全国曹洞宗青年会の前会長も務め、典座のプロデュースも手がける。典座は製作が全国曹洞宗青年会で、監督はサウダーヂやバンコクナイツなどを作った映像制作集団「空族」の富田克也さん。ちなみに典座には、東日本大震災で被災した福島県の住職役として倉島さんも出演している。
倉島さん:お坊さんもいっしょ。苦しんでいる仲間なんです。悩みを共有したりして。
典座ではもう一人、重度の食物アレルギーの子どもを持ち自身もかつてアレルギーがあった山梨県の住職と、合わせて二人の住職が現代社会に悩みながら仏教に向き合う物語。
倉島さん:のび太君を見ていると「自分もがんばろう」って思うでしょ。それは人の苦しみが分かるからこそ。のび太君は出来が悪いけど人間味があります。
泣き虫だし、弱虫だし、テストを隠して怒られるし。しかし私自身の内面にもそんなのび太君はいる。皆さんの中にものびた君がいるとしたら、きっとそののび太君は憎らしい奴ではなく、守りたくなる存在ではないでしょうか。のび太君・・、いや映画の話に戻ります。なぜフランスで日本仏教の映画が・・。
倉島さん:日本は島国文化。日本が持っている独自の素晴らしい文化や伝統があります。フランスなどの海外で禅が普及するのもそれです。しかしそういう伝統や文化があるのに自国に自信が持てない日本人も多い。逆輸入的に外国人が日本の良さを伝えることで、その素晴らしさを日本の人に気付いてもらえたらと思います。
お話を聞かせていただいた部屋にある机の素材は、船の底板。これも木の文化を持つ日本の素晴らしさの一つに見えた。
本堂には「円相」のアート作品も展示されている。
倉島さん:お寺はアートなんです。人は死に対する恐怖がありますが、極楽を知ることで恐怖を緩和するケアシステムが昔からあります。
仏教の教えが哲学であり、それを形にした物がお寺という空間を作っている。なるほど、お寺は生きると死ぬという普遍性をテーマにしたアート。そして日々の暮らしの中でも視点を変えれば、案外身近なところに日本の良さがあり、それは外国人から見ると魅力に感じるのかも知れない。
今あるモノを磨くコト
倉島さんは三重県曹洞宗青年会の仲間と和太鼓集団「鼓司(くす)」も立ち上げ、海外でも講演。剃髪をした坊主頭に袈裟を着た集団が、チカラいっぱいに和太鼓を演奏する姿。それは外国人にどう映るのだろう。
倉島さん:衝撃だろうね(笑)。太鼓は青年会が現状のままでいいのかを、根本から見直すために始めました。お寺には太鼓があります。しかしずっと使っていない場合もある。引っぱり出してきたらほこりを被っていたり、壊れていたり。それを修理して磨いて使うんです。当たり前の物事。太鼓を始めることで、それが足元にあることに気付き始めた。日常に向き合うということです。まちづくりもそう。足元にあるものを磨く、修繕することです。
四天王寺の横には幼稚園や県の機関などが入っていた施設があり、それらの建物は四天王会館として再活用されている。
カフェ、古本屋、アートギャラリー、劇場など今の時代に合った形で事業者がそれぞれに運営。
倉島さん:8年程前に始めたのですが、若い人が喜ぶ空間づくりをハード面で協力できると考えました。あとは感性のある人に入ってもらい盛り上げていただければ。そのためにも、まずは住職がイキイキしてないと。
海外での活動や地域づくりにも積極的な倉島さんの話を聞いていると、何だか前向きな気持ちになる。
それは日々の暮らしの中で改めて日本の良さを見つける喜びであったり、今あるモノやコトを磨くことで、暮らしが豊かになると思えたから。
【Spin on】sessions〜生き抜く切り替え〜というイベントを開催します!
視点や暮らしを切り替えて想像力を働かせれば、何か特別な存在になろうとしたり背伸びをしなくても、豊かな気持ちで生きていける。取材を通じてそんな気にさせていただいた倉島さんを始め、以前に取材を通じて同じような気持ちなったOTONAMIE記者の伊澤さんをゲストに迎え、Spin on考案者の中谷さんにもパネリストとしてご参加いただき、イベントを開催します。
OTONAMIE4周年イベントでもあり、今や多くの人が関わるローカルWEBメディアに育てていただいた読者や記者の皆様へ、ご案内を申し上げます。
OtonaMiemu
Otonamie【Spin on】 Sessions
生き抜く切り替え
日程:2019年11月23日(土祝)
時間:午後2時30分〜午後5時(会場受付:午後2時00分)
会場:三重県総合博物館Miemu レクチャールーム
定員:80名
参加費:1,000円(税込)
※OTONAMIEステッカープレゼント有り
ゲスト
▲今回取材させていただいた津市四天王寺の住職、倉島隆行さん。
▲早稲田大学を卒業して南伊勢の漁師兼地域おこし協力隊(ライター)になった、伊澤峻希さん。
記事:度会県前編・度会県後編・伊澤さんが書いた記事一覧
パネリスト
▲サトナカクッキーや波乗守などを手がける、伊勢は河崎の鬼才クリエイター 中谷武司さん。
記事:https://otonamie.jp/?p=45938
内容1 14:30〜15:30
第一部 トークライブ
ゲスト:伊澤さん、倉島さん
パネリスト:中谷さん
ファシリテーター:OTONAMIE代表 村山祐介・副代表 福田ミキ
ゲストやパネリストなどとのトークライブ。創造的な生き方を実践されているゲストを通じて “みらい” を生きるヒントを模索します。
内容2 15:45〜17:00
第二部 クロストーク
参加者の簡単な紹介。ゲストを参加者が円形で囲むように座り、参加者の取り組みややりたいことなどランダムに選んでクロストーク。その中で面白みのある内容があれば後日OTONAMIEが取材して記事として発信。
参加受付専用メールフォーム
ご参加は下記専用メールフォームから。ご質問も受付ています。
イベントは終了いたしました。
Facebook イベントページはこちら
https://www.facebook.com/events/448232862451593/
OTONAMIE with Takeshi Nakatani
「Spin on」ご挨拶
歴史上、日本が経験したことがない人口減少がやってきます。今ある無駄な仕組みやルールが削ぎ落とされ、スリム化する社会でどう生きるのか。時代の変わり目では社会が変革するのを待つより、個人が視点や暮らしを切り替えた方がいい。そう歴史は教えてくれます。
前置きが長くなりましたが本音は、そんな未来でも愉しく生きていたいのです。沈み行く大きな泥船に乗って「愉しいとは何か」とか「幸福とは何か」などを議論するのではなく、飛行艇でも拵えて、行きたいところに行き、会いたい人に会い、創りたいものを創る。それにはちょっとしたコツが必要です。そう、スピノンです。
今回、クリエイターの中谷武司さんとOTONAMIEで「Spin on(スピノン)」を開始します。正体不明のスピノンは「Get it on!(ゲリロン)、Get up!(ゲロッパ)」というロックやソウルの精神で、三重という地域をサヴァイブして参ります。デザインされた髑髏(しゃれこうべ)は、いつかは死を迎える自分という存在に傲り高ぶらず、自然に生かされている人間は何者でもないということを表現しています。
どうぞお付き合いの程、お願い申し上げます。
Supported by OTONAMIE Partners
やまぜんホームズ
パートナー記事:https://otonamie.jp/?p=61452
プラトンホテル四日市
パートナー記事:https://otonamie.jp/?p=63970
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事