どう生きようが自由だ。
しかし自由に生きるのは、難しい。
お金だっているし、何かと時間も取られる。
それが現実ってヤツか。
しかし、突然自由を手に入れることができたら・・。
私だったら、持て余してしまうだろう。
まだ自由をコントロールして、楽しむ程のスキルを持ち合わせていないからだ。
では、自分に何が足りないのか。
勇気、才能、それとも努力?
デザイナーやライターのハシクレとして、自身のそれが、どれも中途半端に感じるときがある。
それは、圧倒的な才能を持ち、自由に生きる人に出会ったときだ。
初対面で「負けた」って思うとき。
しかしそんな人と話しをすると悲観的な感情は消え、ハッと何かに目覚めさせてくれる。
そして、自分の内側に小さな火が着き、熱を感じる。
話は変わるが「鬼才」という言葉が好きだ。
今回は伊勢の河崎で出会った、そんな鬼才の話をしたいと思う。
大げさに言うと、その才能に触れ、自分の中で何かが確実に変わった。
そして、自分の青さに直面することは怖いことではなく、案外と爽快であった。
—まず、遊びをつくること。
1月の終わり。
柔らかい冬の日差しは温かく、春を想いながら津新町駅の改札をくぐった。
電車に揺られ約40分、宇治山田駅に到着。
今回は特別に、ボランティアで同行してくれたカメラマン(y_imura記者)と、伊勢のソウルフード「からあげ丼」を頬張り、普段は滅多に人を入れないという、鬼才のアトリエへ向かう。
不安と緊張、そして期待が入り交じった気持ちで、部屋に入れていただいた。
アトリエは居住空間も兼ねていて、基本的に室内の撮影はNG。
発表済の作品や、部屋の一部に限っては撮影OKをいただいた。
私の緊張を察してか、柔らかな笑顔で迎え入れてくれたのは、画家でありデザイナーの中谷武司さん。
いや、室内の作品を見渡すと、画家やデザイナーという肩書きだけでは収まらないと感じた。
油絵、銅版画、木版画、水彩画、スケッチ、Macなどなど。
実に様々である。
そして、まず紹介いただいたのがこれだった。
オリジナルの刺子半纏(さしこはんてん)。
背中には中谷さんが考案した、不在の存在ベルナール・ギー。
さらに室内にあった帽子。
明日、刺繍屋に発注を出すため、最終の調整を行っていた。
伊勢神宮の宮大工が被る帽子を、リメイクしたものだ。
刺子半纏や帽子は、中谷さんが企画とデザインをして、仲間が有志で購入。
中谷さん:これを着て、河崎の街を歩いたり、地元の居酒屋とか行ったら、「あれは何だ」と話題になるかも知れないでしょ。
さらに中谷さんと仲間は、数年前に「セブンガールズ・風変わりな挑戦」という作品をつくった。
それぞれが営む仕事などをテーマに女装をしている、モノクロのフォトグラフだ。
7つの作品の中から少しだけご紹介したい。
そう、中谷さんは溢れるアートの才能で遊んでいるように感じる。
しかも、妥協なく、真面目に。
この時点で私の思考回路は、パンク寸前。
この感動を、なんと表現すればいいのだろう・・。
粋。そう、粋だなと思った。
中谷さん:まず遊びをつくること。おもしろいモノが創りたいから。そうしていたら、仕事の依頼に繋がったり、おもしろい人と繋がれたり。
なるほど。
クリエイティブの本質を垣間見た。
マーケティングに裏付けられた手法とかではなく、もっと根源的なところ。
そんな中谷さんは、東京を経てニューヨークで数年間の活動していた時期もあった。
しかし戻った先は東京でなく、生まれ育った伊勢だった。
中谷さん:満員電車みたいな感じが苦手なんです。自分でレールを敷いて、電車を走らせちゃえ、みたいな方が好き。
いわゆるクリエーターにとっての整ったレールとか道がなく、未開拓な部分も多い「地方」で活躍するには、そのような発想が必要なのだと学んだ。
—伊勢という地
中谷さんの生まれ育った生家は、外宮のほど近く。
外宮は小さいときの遊び場だったという。
「地水火風空」を、木版画で制作された作品。
中谷さん:日本的な森羅万象を表現するには、銅版画でなく木版画がしっくりきます。
そして、絵や版画、デザインワークなど、様々な技法で創られている作品の一つひとつは、個々の作品としてだけではなく、演目のなかの一つでもあると教えていただいた。
そんな日本人の持つ、自然崇拝を感じさせる作品を創る中谷さんにとって、伊勢神宮、そして神様とはどういう存在なのか。
中谷さん:神さんの実態って、自然そのもの。自然にチューニングするという行為を行う場所が、伊勢神宮やと思います。
私たちは、食事を調整したり、運動やマッサージをして、肉体というハードを整える。
しかし気持ちや心といった、ソフトを整えることにあまり意識がないように思える。
伊勢神宮に参拝し、その凜とした空気を感じ、気持ちが落ち着くのは、自然にチューニングしていたのかと思うと、伊勢神宮という存在が自分の中にストンと落ちた。
—冷たいヤツではなく、温かいヤツ。
アトリエから程近くにある、モナリザ(現:中谷武司協会)に伺った。
ここ河崎は、蔵や古民家が建ち並び洒落た雰囲気だ。
店内には、中谷さんがデザインした商品が売られている。
安乗神社のお守りや、サトナカクッキー(ササササササササササ)など、目にしたことがある人も多いと思う。中谷さんの代表的な作品だ。
三つ入りサトナカクッキーの箱は、ポケットからスッと出して手渡せる。
中谷さんは、開発時にその感覚を大切にしたいと思っていたという。
中谷さん:ピンポンの箱って、何かいいなと。そして、何もピンポンだけ入れる箱じゃなくてもいいなと。
この発想力。
デザインで遊べるくらいの才能がないと、まず浮かばない発想だと思う。
ちなみに「サトナカ」とは、伊勢に実在した地名で、今はない。
サトナカクッキーをはじめ、店にあるほとんどの商品は手仕事で作られている。
アトリエで見せていただいた、スタイリッシュな手のスケッチを思い出した。
このスケッチで、商品の魅力を伝えたいと教えていただいた。
そして、伝え方、伝わり方について、モナリザ(現:中谷武司協会)はとても大切にしているという。
そうやって、丁寧に伊勢の魅力を伝える商品。
私は一つひとつがアート作品のように感じ、時間を忘れて見入ってしまった。
そんな中谷さんがおすすめする、お店ってどんなところだろう。
中谷さん:一月家。あれぞ「伊勢」って感じです。
一月家はOTONAMIEでも取材させていただいた、昼から営業している伊勢の老舗酒場だ。
詳しくはこちら。
湯豆腐が有名で、エメロンでも地元めしシリーズとして展開している。
伊勢といえば、伊勢うどん、もここで販売している。
伊勢出身の友人に「病気のときにも伊勢うどん」と聞いたことがあった。
そして、この伝え方。
もしや・・。
中谷さん:小さいときのボクやね。
THE CREATIVE・・。
お店にいるだけで、また中谷さんと話しているだけで、本当に楽しく一瞬で時間が過ぎ去っていった。
私:ところで中谷さん。才能って何ですか。
中谷さん:好奇心の強度です。
オトナになると、忙しかったり、目の前のことで一杯になったりする。
しかし、そんな日常であっても忘れてはいけないこと。
好奇心。
それは人生を愉しむための、特効薬なのかも知れない。
追記
モナリザから中谷武司協会に変更しました。
2019.11.23
※中谷武司さんと他2名のゲストに迎え、OTONAMIE4thイベントを開催します。詳しくはこちら。
(終了しました)
※中谷武司さんをゲストに迎え、OTONAMIEワークショップVol.6を開催します。テーマは「伝えるチカラ」。詳しくはこちら。
EMELON/モナリザ
三重県伊勢市河崎2-4-4
tel 0596-22-7600
モナリザ hp http://www.emelon.net/monnalisa/
EMELON hp http://www.emelon-shop.net
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村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事