三重県総合博物館 で2025年7月26日(土)から9月23日(火・祝)まで「第40回企画展 地獄へようこそ 鬼と亡者と閻魔の世界」が開催されています。カッと目を見開いた恐ろしい表情の閻魔王(えんまおう)のポスターが印象的な本展。地獄を描いた怖い掛け軸などの美術作品から、極楽にちなんだ阿弥陀如来像まで、あの世を表現した文化財の数々をじっくり堪能できます。本記事では、企画展担当の瀧川和也さんに伺った見どころと筆者の本展を見た感想を紹介していきます。
地獄のはじまりと地獄絵
地獄とは、仏教の伝来とともに日本にもたらされた思想で、文学や美術に大きな影響を与えたそうです。平安時代の僧が記した仏教書「往生要集」により、のちに絵でも表現されるようになり、地獄のイメージが広まっていったとのこと。
地獄:悪いことをした人が落ちる地下の世界で、さまざまな責め苦を受けます。(会場内の地獄めぐりMAPより引用)
瀧川さんの説明によると、地獄というのは地下8階建てのビルのようなもの。8つの八大地獄があり、犯した罪が重いほど下の階に送られ、与えられる苦痛も大きくなるそう。展示では「往生要集」に基づいた地獄絵の掛け軸がいくつも並びます。絵の中では、地獄で亡者(死んだ人)が受ける痛みや苦しみの場面が細かく描かれています。
掛け軸の向かいには、スライドを見るスペースがあります。150カットにわたる地獄絵の解説を約15分で見ることができます。掛け軸とスライドの両方を見ることで、地獄絵への理解がより深まります。想像を絶するほど残酷な、精神と肉体の両方を追い詰められる数々の苦しみ。展示会場でも「気分が悪くなりましたら、無理に資料を見ないようにしてください」と注意書きがあるほどです。
絵には、人の死後の身体の朽ちていく側に春から秋への季節のうつろいを桜や紅葉を用いて表現したものもありました。残酷さと美しさが共存している様子に思わず目を奪われました。他の絵の中でも、探してみてください。
地獄といえば、閻魔様!
地獄で罪を裁く裁判官である閻魔王。奈良県奈良市の東大寺所蔵の重要文化財「閻魔王坐像」を見ることができます。鎌倉時代の古いものは数が少なく、貴重だそう。瀧川さんのおすすめは「低い位置から像を見上げてみること」。眼球に水晶が使われており、下から見ると角度によってキラッと光るので、閻魔王の目つきの迫力がより増すのだとか。ぜひ、会場で閻魔様の怖さを堪能してみてくださいと瀧川さんは話します。
地獄を出て、極楽へ
本展は、恐ろしい地獄絵や彫刻作品だけではありません。地獄における救済者の地蔵菩薩像や、極楽浄土(苦しいことや悩むことがない心安らかな世界)を描いた絵図の展示もあります。期間中には展示替えも予定されているため、ご興味のある方は何度でも足を運んでみてください。さまざまな関連イベントも予定されているので、解説を聞くと、地獄や極楽についてをよりおもしろく読み解けると思います。
地域にまつわるこんな展示も
本展では展示資料の撮影は取材以外では禁じられていますが、撮影可能な場所もあるのでご紹介します。こちらは、津市下弁財町にある真教寺閻魔堂を模したもの。実際のお寺には、高さ2メートルもある閻魔王がいらっしゃるとのことで、バス停の名前もそれにちなんで「エンマ堂」なんだそう。会場では、写真を撮ったり、覗き穴から中を覗いたりしてみてください。
本展のポスターに使用されている閻魔王の「閻魔庁図(津市西来寺所蔵)」をモチーフにした撮影スポットが用意されています。閻魔王に懺悔しているようなポーズをするとこんな写真が撮れます。
会場には、地獄めぐりMAPがあり、会場の案内や地獄にまつわる用語の説明が掲載されています。ぜひ展示を見る際の参考にお手に取ってみてください。本展の展示資料は約160点というボリューム。絵の細部までじっくり見たり、スライドを見て解説を読んだりしていると時間が経つのがあっという間でした。これから観に行かれる方は、時間に余裕を持って行かれることをおすすめします。
「第40回企画展 地獄へようこそ 鬼と亡者と閻魔の世界」
2025年7月26日(土)〜9月23日(火・祝)
本記事は、内覧会のご招待をいただき作成しました。展示資料の画像は、許可をいただいて撮影しています。
2023年より三重に夫と共にUターン移住。仕事は、グラフィックデザインとライティング。Yahoo!ニュースで地域情報発信も。現在は0歳児の子育て奮闘中。










