長年通っていた喫茶店が閉店し、
行き場を失い路頭に迷う。
そんな経験がある人も多いのではなかろうか。
2016年10月。
三重県桑名市にて、
惜しまれつつも46年間の歴史に幕を閉じた、
喫茶サフランの客もそうだった。
そう、サフラン難民である。
参考 【哀報】46年間地元で愛され続けた喫茶サフランが閉店へ。どうするサフラン難民。
閉店から早2年。サフラン難民は今。
あのサフラン難民が、
新たな溜まり場を見付けていると聞き、
潜入することにした。
揖斐川と長良川の堤防から、
徒歩2分程のところにソコはある。
和室喫茶 銀のすず
まず外観にビビる。
えっ、入っていいのかしら。
躊躇するほどに”普通のお宅”
もちろん靴は脱ぐ。
そして自然と出てくる、
「おじゃましまーす」という言葉。
知らない者同士が向かい合うのも当たり前
畳だ。
スリッパはなく、
足に感じる柔らかな畳が気持ち良い。
部屋の中央には大きなテーブルが一つ。
大人たちが、
ギュッと座っている光景にギョッとするが、
これがここの文化。
知らない者同士、
向かい合うのも当たり前。
なんというか相席を越えたスケールなのだ。
品の良いママさんに、
モーニングをお願いし、ちょっと一息。
ぼーっと庭を眺めていると、
”サフラン難民”というワードが聞こえてきた。
--えっ、もしかして、サフラン難民ですか??
あの人もこの人もサフラン難民!!
「サフラン難民だけど何か?」
そう答えてくれたお客さんたちを
よく見ると知った顔ばかり!!!
サフラン難民だ…
2年ぶりの再会に軽く感動を覚える。
あれから一体どうしてここに漂流したのか。
経緯を聞いたところ、
やはりサフランがなくなってからというもの、
腰を落ち着かせられる場所は見付からず、
彷徨っていたところに、
”畳が敷いてある面白い喫茶店がある”
と友人に聞き、来てみたら、
その心地良さにはまったのだそう。
「俺ら、やかましいし居座るけど大丈夫?」
と最初にママさんへ確認も行い、
「よろしいですよ」と答えをもらったのだとか。
少々疑ってママさんに聞いてみた。
―—ママさん、それは本当ですか??
ママ:「ええ。何故こんな男の人ばっかり漂流してきたのかしら?と不思議だったのだけど、お話聞くうちにサフラン難民だということがわかったの。居座るといっても、待つ程のお客様がいらしたら、皆さんスッと替わってくださるからとても有難いのよ」
客:「それにええ男ばっかりやしな!」
そんな冗談が飛び交う中、
玄関にまた新たなお客さんの気配。
―—もしかしてサフラン難民ですか??
客:「えっそうだけど、何か?」
モーニングはチンチンのゆでたまご。時にカレーパンも。
銀のすずのモーニング。
こだわりは熱々なゆでたまご。
「温かなゆでたまごの方が美味しいでしょ」
とママさん。
とろみのあるヨーグルトはお手製。
付け合わせは果物だったりサラダだったり、
毎日来るお客さんのために日替わり。
レアだが、
ママさんの気分によっては、
揚げたてのオリジナルカレーパンが登場する日も。
不定期なので出会えた人は超ラッキー。
出会いと憩いの場
8年前に始めたという銀のすず。
老後の楽しみとして、
自宅の部屋で何かできないかなと考えたのがきっかけ。
当時ママさんは、
珈琲もパンもあまり好きではなく、
その発案にご家族は衝撃だったとか。
今は毎日、ユーモラスなお客さん達から、
元気をもらっていると仰るママさん。
―—そういえば、店内にBGMかけていないのですね。
ママ:『以前はかけていたんだけどね、会話の邪魔になるからやめようってなったの』
この日は土曜日で席はゆったりしていたが、
木曜と日曜はお客さんが多く、
長テーブルがギュギュっといっぱいになる。
そして他愛のない会話で盛り上がり、
自然と皆、友達になってしまうというのが、
この銀のすずの楽しいところ。
銀のすずという”居場所”
「こういう雰囲気だからそりゃはまるよね」
サフラン難民含め、
常連さんたちがこの銀のすずを愛してやまないのは、
この雰囲気と居心地。
気さくで優しいママさんと、
目と声が届く程よい距離感で、
お客さん同士も和気あいあいと寛いでいる。
まるで親戚の家に来たような気分で、
ついまったりしてしまう。
気付けば時刻はお昼前。
さて、そろそろ・・・と、
徐々に席を立つお客さんたち。
「ではお先に失礼します」
”おじゃまします”に始まり、
”お先に失礼します”で終わる。
喫茶店というよりも、
元気をもらえる出入自由なサークルとでもいうのであろうか。
サフラン難民が居つくのも俄然納得の、
素敵な”居場所”がそこにあった。
Photo by y_imura
和室喫茶 銀のすず
住所:三重県桑名市東太一丸13
電話:0594-23-4357
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事