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“TOKYOを目指す中学2年プロサーファー”放課後の海 @ 国府の浜

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早朝も放課後もトレーニングはかかさない。目の前に2020年のTOKYOがまっているから。

Jpsaプロ 川瀬ここな ホームブレイク:国府の浜 契約:FORCE Surfboard :BILLABONG :シンジケート

 

Ise local location

静かな海はいい。人影の少ない寂しい冬の海の方がもっといい。なぜなら、磨かれた目的意識を持つ人の熱量を見つけやすいからだ。

長男にコーチングをする川瀬文也さん。彼に出会ったのは2018年2月の冬の海だ。
彼らのサーフィン対する姿勢には、夏も冬もない。

 

国府の浜で出会ったサーファー家族は、まだ春が遠い寒い海で、際立って目を引く。

この日出会った川瀬文広(カワセ フミヤ)さんは、娘の心那(ココナ)さんにサーフィンの指導をしている。彼女は中学生で、またプロサーファーだ。

川瀬家6人全員がサーファーだと知った。そしてサーフィンをするため三重県津市から志摩市に移り住み、サーフショップと駐車場を営み、またそこを住居とし、家族全員でサーフィン中心の生活をしている。

ローカルサーファーの中でも注目される女子の若手。東京オリンピックの強化指定選手である。当然、地域や地元からの注目も高い。

 

子ども達は、住まいでもあるサーフショップ「アディクト[ADDICT]」から通学している。家族6人だと少し不便さを感じそうだが、この場所から、サーフィンの頂点を目指していた。

左から父 川瀬文也(フミヤ)長男 斗嵐(トラン)次女 心那(ココナ)長女 新波(ニーナ)三女 煌渚(キラナ)母 幸美(ヨシミ)さんだ。

私は彼らとサーフシーンの撮影の約束をし、春の波が来るのを待つ事にした。

 

 

新学期になる

そして春が来た。少し波が上がったので、連絡を取り約束を履行する。この日、次女の心那(ココナ)がいない。インドネシアのバリ島に行っていると言う。 昨年もこの時期、バリ島で大会があり、ちょうど中学の入学式と重なり欠席したという話だ。

地元の高校に通い早朝も放課後もサーフィントレーニングを欠かさない。長女ニーナ。

今回の撮影では長女の新波(ニーナ)さん、高校2年生の写真を撮る事ができた。すこし話を聞く。すると「妹と大会でよく同じヒートで、兄弟対決をしたんです。」と話してくれる。

サーフィンが好きだと自覚したのは、まだ数年前なんです。と正直に話してくれた。

妹がプロの大会に出るようになり、今は兄弟対決はなくなっている。でも将来の話を聞くと、彼女もプロ志願を持っていた。「実力を試したいので、今シーズンのプロテストを受けてみたい。」と話す。

いずれプロの舞台で、また兄弟対決が実現する事だろう。それにしてもこの兄弟の名前は、見事なキラキラネームだ。すべて、奥様の幸美(ヨシミ)さんが名付けたと聞いた。

 

台風のうねりを待つ。

 

6月の雨、梅雨前線を刺激する5号台風が現れた。この日の天気は予報とは違った空になってきた。私は川瀬さんに、「子どもたちが学校から帰宅したら、波に乗る姿を撮影をしよう。」と声をかけた。

台風5号は、予想に反し日本列島を東に進む。国府の浜は、東ウネリでクローズしていたが、すこし落ち着いた夕方の海になってきた。

どんよりとした夕方、雲の切れ目から虹の筋が見え出した。波の高さは人の身長よりはるかに高い。サーファー達はヘッドオーバーの波だと言う。そして波が白く崩れる事をサーフィン用語で「スープ」と呼ぶ。今日の波はその「スープ」が力強く、人をねじ伏せようと迫ってくる。

西世古プロの長男アツヤ君中学1年生。親譲りのダイナミックなサーフィンで器の大きさをみせた。
R2サーフショップオーナーの次男リク君。レールの入ったボトムターンがすばらしい。

こうした波に対応できるのが上級サーファーだ。そんな波を前に、子ども達は生き生きとサーフィンをしている。そして、この場にいる子ども達の技術レベルが高い。

ボディーボードのナミカちゃんはNSAで連覇していると聞いた。「確かに」とうなずけるサーフィンをする。

2018年8月に、国府の浜で開催されるサーフィンの全国大会がある。その「NSA全日本サーフィン選手権大会」に出場が決まったメンバーだとわかった。つまり、三重を代表する選手達ばかりだ。

その中に女子中学生の心那(ココナ)がまじる。彼女はプロになったので、アマチュア大会へのエントリーは認められない。そんな心那が小学生頃、このNSAの大会成績が良かった。その頃東京オリンピック強化選手の話があり、その中に入った。

ココナのサーフィンは、大人のように大きく見える。海の上で自分をどうみせるか。そこがプロの技だ。試合に勝つ事は、見る人に感動を与える事とつながる。

本格的にJPSAと呼ばれるプロの大会に参戦しだした2018年。シーズン終了時、上位8位以内に入っていなければ、オリンピック強化指定選手から除外される。取材をした6月現在、一試合が済み、今のところ7位となっている。今後の活躍から目が離せない。

 

 

 

学校生活

志摩市には、県外から移り住むサーファーは少なく無い。波の他に、仕事や教育、地域の特性、住民の理解など、様々な問題を考え抜いてこの地に決める。

さて、心那(ココナ)のサーフィンをみていると、本当に中学生なのだろうかと疑問になってくる。それを確かめたいと、彼女が通う志摩市立東海中学に行ってみる事にした。

出迎えてくれたのは向井教頭先生だ。「たしかに心那は2年生の生徒です。」「全校生徒191名の内、3人だけ部活しない生徒がいるんですが、その一人でもあります。」と話す。

撮影だからといって、学校の規則である「通学時ノーヘルで自転車に乗らない。」という約束は破らない。

「それはつまり帰宅部という事ですか。」と質問する。「はい、そうです。そのすべてが、実はサーファーなんですよ。」と返ってきた。

どうやら10年ほど前から、この地区の中学では、必修クラブの制度は無くなっていた。教頭先生の説明によれば、「生徒と家の人、また学校との連携がふさわしく取れていれば、生徒の活動を応援している。」との事だ。彼女のプロサーファー活動は、こうした理解ある人々や、地域が支えている事がわかった。また先輩サーファー達の影響も大きい。

たっちゃん駐車場は松林付近にある、ここが彼女の自宅だ。

それを向井教頭先生は加えて、「全体としてサーファーの子ども達は、学校の提出物や、決まりに対して真面目です。それは自分の行動で、サーファーの評価を下げないように頑張っているようにも見えます。」そして、「昔とかわりましたよね。」「今日ではサーファーが海のゴミを拾い、海岸をきれいにしている。」

サーフィンを目的に、この志摩市に移り住む事は大歓迎です。地域として、とても喜ばしいことですよ。」と話してくれた。

 

 

 

「好き」を継続する

サーフショップ、駐車場と奥様と二人で切り盛りする。こども4人を世話する妻(ヨシミさん)は、毎日サーフィンどころじゃないですよ。と苦笑いする。

サーフィンを続け家族を養う。また子ども達をアスリートとして育てていくには、時間や費用がより必要になってくる。そこで、好きな事を生業にし続ける事の難しさや、試練などはないのかと川瀬さんに質問した。

すると「正直考えてる暇がありません。」とすぐ返事が返ってくる。

「生活がどれほど苦しくても、私には些細な事です」と話し、「それよりもサーフィンを続けられる幸せ、それも家族全員で。」「自分の苦労は苦労じゃないです。」と話す。例えば病気や災害とかで、苦労している人からみれば、自分なんてほんとに幸せ者だと思いますよ。」と言う。

何事よりもサーフィンを第一にする父親。オリンピック出場が決まったら泣きますかと聞くと、「泣きますね」と静かに答えてくれた。

彼に様々な質問をするが、すべて熱量で返ってくる。「好きだから!好きだからできるんです。好きだから耐える事が、容易いんです。」

彼は上も向いても、また下を向いても必ず。「好き。」と言う気持ちが基礎にある。写真を見ていると、私には彼の足音が「全てが好きだから」。と聴こえて来る。

 

 

 

「好き」を仕事にする

 

人生を有意義なものにする最大級の秘訣、だれでもこのテーマに悩む。

4時に起床そして朝練、放課後から日没まで。 いざ競技サーフィンとなると、「どこにそんな闘争心が隠れていたんだ。」と言うくらい人が変わるという。

ほとんどの若者は、壁を乗り越える術を学校や部活、また先輩や両親から学ぶ。大人は当然のように、自分が教わった事を子どもに教える。でも多くの若者は、なにかしらのコンプレックスを少なからずもった個性の塊だ。

 

川瀬家はグフィーフッターが3人。唯一トランがレギラースタンスだ。妻のヨシミさんはボディーボードをする。

人間は自分のアイデンティティーを見つけるのが普通に難しい。多くの人は「好き」だといえる事を探し続ける。またそれを生業としていく環境に、どうたどり着くかが課題になる。こうした課題の解決方法はあるだろうか。

 

何度も打ち寄よせる波に、

サーファーは繰り返し石ころの様に

もみくちゃにされるのがいい。

 

 

サーファーにとって人生の答えは海にある。サーファーの教科書はつまり自然の力だ。例えば、角のある石ころが、繰り返し波にもまれるなら、やがて角は丸くなっていく。同じように人の性格も、波にもまれる事に影響を受け、それは生き方にも及ぶのだ。

7番テトラ横のレギュラーがいい。カメラを意識した角度でインサイドまで乗り継いでもらう。サーフィン写真の秘訣は事前打ち合わせと、自分の手でピントを操作する事を繰り返す事だ。
多くの失敗がある。でもそれが秘訣だ。波乗りも、写真も、全てが共通する世界だ。

サーフィンを本当に愛する人は、失敗してもまたチャレンジする。そして体で学習する。それは同じ事を何度も繰り返していく事で、今まで出来なかった技が、突然出来たりするからだ。

 

 

5号台風が少し遠ざかる。国府の浜には、青空とオフショアの波がやってくる。この日の波は形がとてもよく、撮影日和となった。

「自分の好きな物を見つけるにはどうしたらいい」と心那に聞く。「うーん」とよく考えた後「わかりません。」と謙虚に返してきた。言葉にしないのは、自分の若さをみた謙遜さに感じた。きっと教える立場に立てば、サーフィンで得た感覚を言葉に変換できる大人になるだろう。その日が楽しみだ。そして教頭先生にも同じ質問した。すると「とにかくいろんな事にチャレンジしてほしい。」そして、人の生きる術とは金銭ではなく。本来の教育とは・・などの言葉を頂いた。さすがに大人の答えを持っている。つまり。

 

波を求め続ける事。

そのドアを叩き続ける事。

そうすれば、

答えが必ず返ってくる。

私には、そう聞こえた。

 

 

 

 

放課後のサーフィン部

志摩の中学校にサーフィン部というものは無い。だが国府の浜に、放課後集まる学生達は、まるで部活の仲間のように仲がいい。

姉二人と一緒に朝のトレーニングから参加し、夕方も。小学5年生で将来自分もプロを目指していると話す。トラン君は、一人トランクスで海入る。
次から次へ波に乗る子どもたち。波の数だけ波の表情があるが、大会となると、波に対する適応能力やセンスが求められる。次代のサーファーたちは、サーフィンをスポーツとして捉える。完全なアスリートの活動場として海は変わってきている。

彼らが波に乗る姿にも個性がある。特に長男の斗嵐(トラン)くんは、どんな波に乗っても、その都度大きなガッツポーズをする。その訳を聞いた。すると、大人からみると単純に見える技1つ、その1つができた事に毎回感動している姿だった。

海パン一つでこのポーズ。大人が考えるより、答えはもっとシンプルだった。余分なものを身につけ、人は大切な事ほど忘れてしまう生き物かもしれない。

 

三女の煌渚(キラナちゃん5歳)にサーフィンを教える父親。この川瀬さんの姿は、子どもと時間を共有する事の幸せ。この幼子がやがて、自然の力と家族の絆を感じ取り、ある日の一コマが記憶に焼き付いたら、一人前のサーファーに育つだろう。

5歳で台風のうねりでサーフィンを教えられる。というより逆に波乗りを教えろという立場らしい。川瀬家4人目のアスリートだ。

 

 

NSA全日本アマチュアサーフィン選手権大会

オリンピック種目になったサーフィンへの注目度は高い。そんな中で2018年の夏、「NSA全日本アマチュアサーフィン選手権全国大会」が国府の浜で開催される。ここで三重の代表選手メンバーが戦い、また世界の舞台で活躍していくのだ。

「今回の撮影で特に気に入った一枚。」ここで育つ友達は、やがて特別な存在になる。左から リク、カイト、コウスケ、トラン、アツヤ、ココナ、ナミカ、ニイナ。伊勢ポイントも二代目サーファー達の時代が来た。

 

気づくと伊勢のサーフポイントは、次代サーファー達の姿に変わってきた。大人になった私たちも、二代目サーファー達の海に戻り、またいい波に乗りたいものだ。

 

夢、希望は、意志を静かに貫く者の手に。彼らの「好き」は、金銭ではない夢の舞台、またその努力だった。そんな熱い人を、私たちは応援したくなる。

 

そして特に、人影が少ない静かな海は良い。そこは、大人が持つべき、磨かれた目的意識という課題に取り組むには、いい場所だからだ。

 

 


Special Thanks

 

 

ADDICT Surf Garage

https://www.facebook.com/addictsurfgarage/

サーフボードのレンタルなどもある。

三重県志摩市阿児町国府2887-22

営業時間 7:00~18:00

 

川瀬ファミリー

取材最終日に皆さんと一緒にサーフィンをする事で、また深く知る事ができました。また子ども達、一緒に波乗りをしましょう。
「シャワーしか無いので2月のお風呂が大変なんです。」と笑いとばす川瀬さんが印象的でした。そして三女が5歳でこれです。はたしてどんなサーファー女子になるでしょう。10年後が楽しみですね。

 

たっちゃん駐車所

駐車場はサーフショップと併設している

休憩所、この駐車場の常連の子ども会のおやつタイム。平均年齢10代前半の駐車場って他にないでしょう。いい意味で若さに圧倒されて楽しいです。

 


おまけの動画

中学2年女子プロサーファー編

 

y_imura

yoshitugu imura。Otona Muster 兼 記者。サーファーからフォトグラファーに、海に持っていったギターでミュージシャン活動もする(波音&Ustreet )ドブロギター奏者。伊勢市在住。
この記者が登場する映像  

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