「もう人と比べるのはやめよう」
30カ国を旅したヨガインストラクターが、地元・三重の滝で見つけた答えとは──

轟音響く滝の前で、圧倒的な存在と対峙するようにヨガのポーズをとる女性がいる。
水しぶきを浴びながら深く呼吸する姿は、自然と一体になっているようだ。
「人と比べて落ち込んでしまう」
「頑張っているのに心が満たされない」
誰にでも心当たりがあるようなこんな悩みに答えを示してくれるのが、ヨガインストラクターのchiharu(西松千春)さんだ。
世界各地を巡った彼女が人生の転機を迎えたのは、意外にも地元・三重で出会った一本の滝。
そこで気づいたのが、ヨガの教え「サントーシャ」──今あるものに目を向け、心を満たす生き方だった、
今回はそんなchiharuさんに、滝とヨガから学んだ「心穏やかに過ごすヒント」を伺った。

世界を旅して気づいた、心の整え方
Q:まず、chiharuさんの自己紹介からお願いします。
ちはる:生まれは京都です。小さい頃から好奇心旺盛な性格で、9歳のときに祖母とヨーロッパ旅行をしたことがきっかけで、旅が大好きになりました。これまでに30カ国を訪れました。学生時代までは芸能の仕事もしていましたが、今は三重県でヨガのインストラクターとして活動しています。
Q:ヨガを始めたきっかけは?
ちはる: 学生の頃、スポーツで怪我が多かったんです。それで予防のためにヨガを始めたのが最初でした。大阪のヨガ教室に通い、母がインド舞踊をしていた影響で、ヨガのためにインドにも何度か行きました。
──ヨガの本場、インドにも足を運ばれたんですね。
ちはる:そうなんです。通ううちに、ヨガの教えについても学ぶようになりました。
最初は体のために始めたのですが、次第に心のあり方にも興味を持つようになりました。
Q:ヨガの教えの中で、大切にしていることはありますか?
ちはる:私が大切にしているのは「サントーシャ」という教えです。“今あるものに満足する心”という意味で、日本だと「足るを知る」に近いと思います。
──なるほど、“足るを知る”に近い考え方なんですね。
ちはる:はい。私たちって自分を人と比べたり、高すぎる理想を求めたりして、ストレスに感じてしまうことがよくありますよね。サントーシャは現状を受け入れて、今あるものへ感謝を向け、比較や不足感にとらわれすぎない“心の訓練”のことです。続けていくと心が落ち着き、毎日を穏やかに過ごせるようになります。
アナギの滝との運命的な出会い
Q:滝を巡るようになったきっかけは?
ちはる:自然の中で心をリセットできる場所を探していたときに、知り合いの方に尾鷲市にある「アナギの滝」を教えていただいたんです。実際に訪れてみたら想像を超える美しさで、蒼く透き通る滝壺に心を奪われました。そこから滝を巡るようになったんです。

──辿り着くのは大変だったとか?
ちはる: はい(笑)。普通に行けば30分位のところなのに道に迷ったり、ハチに追いかけられたりして、駐車場から2時間くらいかかったんです。
でもようやく目の前に滝が現れた瞬間、心を掴まれました。そこから一気にハマって、三重県を中心に100本以上の滝を訪れるようになりました。
Q:滝とヨガの組み合わせは、特別な体験になりそうですね。
ちはる: ヨガは呼吸や心を整えますが、滝の前に立つとその感覚がさらに深まるんです。水しぶきの音や澄んだ空気に包まれると体の余計な力が抜けて、すっと心が潤っていくような感覚になります。
──自然に心が整う感覚ですね。
ちはる: そうですね。滝は癒しや浄化だけでなく、日常を振り返るきっかけにもなっています。ヨガの教えにある「サントーシャ(今あるものに満足する心)」のように、比べたり求めすぎたりせず「ありのままの今」に目を向けられる。そんな感覚を自然と気づける場所なんです。
三重の滝の魅力——chiharuさんおすすめスポット
滝巡りにハマったchiharuさんは、アナギの滝以外にも数多くの三重県の滝を訪れている。
Q:三重県でおすすめの滝はありますか?
ちはる: 「六十尋滝」「南谷の滝」「伝唐滝」などが良かったです。この中だったらアクセスしやすくて比較的安全に行ける六十尋滝がおすすめです。
──どこにある滝ですか?
ちはる: 大台町にあるのですが、なかなか迫力がありますよ。室町時代に見つかった名瀑なんです。これからの時期は周辺の紅葉も綺麗で、季節の移ろいも一緒に楽しめます。行かれるときは道中の情報や現地の状況をよく調べしてから訪れてくださいね。
明日からできる「サントーシャ」の実践法
世界各地を旅し、100本以上の滝を巡ったchiharuさん。その経験から生まれた「心を整える方法」は、驚くほどシンプルだった。
Q:忙しい現代人でも、サントーシャを日常に取り入れる方法はありますか?
ちはる:特別なことをしなくてもできますよ。朝起きて窓を開けて深呼吸する、ふとした時に空を見上げてみる。ほんの数秒でも「気持ちいいな」と思えたら、それがサントーシャにつながっています。
──普段のちょっとした事が、心を整えるきっかけになるんですね。
ちはる: ええ。大事なことは、比べすぎ・求めすぎから距離を置いて、今の自分の状態に感謝することだと思います。人と比べて焦るのではなく今の自分をそのまま受け入れて、感謝する。そうすることで自然と心は軽くなります。比較に使っていたエネルギーを、自分を高めることに使えるようになるといいですね。
──たしかに、そう考えると気持ちが楽になりますね。
ちはる:はい。そうやって心を整える習慣が、自然と心の安定につながっていくと思います。
心を整え自分を取り戻すヨガ教室
現在、chiharuさんは津市でヨガ教室を開いている。

Q:ヨガを通じて、どんなことを一番大切にされていますか?
ちはる:ヨガを通じて心身を整えることを大切にしています。まず自分のこころを一番良い状態に整えることが、大切だと思います。 「痩せる」とか「鍛える」よりも、心を整えることです。
──なるほど、ヨガの本質を大事にされているんですね。
ちはる: はい。ヨガの原点にある「心の安定」を大切に、呼吸と静かな時間を中心にお伝えしています。

Q:どんな方が通っているのですか?
ちはる: 平日だと生徒さんの中心は50〜70代ですね。看護師さんや介護職の方など、心身を酷使するお仕事をされている方が精神的な安定を求めて参加されるケースが多いです。もちろん、それだけでなく、「体を動かして気分をリフレッシュしたい」という思いで通われる方も多いですよ。
──体だけじゃなく、心の支えにもなっているんですね
ちはる: そうだと思います。「ヨガを始めて心が穏やかになった」と感想をいただいたときは、本当にやっていてよかったなって感じます。
Q:教室はどういう場所でされてますか?
ちはる: 自然光が差し込み、外には木々が広がる明るい空間です。観葉植物も置いてあって、スタジオというより「居心地のいいリビング」に近い雰囲気ですね。初めての方でも緊張せず過ごしていただけます。

──窓の外の景色も、とても素敵ですね。

ちはる: ありがとうございます。ここは津市の「ファミリーエクステリア本店」さんの敷地内なんです。まわりが緑に囲まれていて、窓から見える木々にも癒されてます。すぐ隣には観葉植物のお店「PLANTS 2306」もあるので、生徒さんたちもレッスン後によく立ち寄られているんですよ。

──本日はたくさんのお話をありがとうございました。
ちはる:こちらこそ、ありがとうございました。
滝やヨガを通じて気づかせてもらえる「サントーシャ」の感覚は、深呼吸や空を見上げることからでも始められます。その小さな習慣の積み重ねが、やがて「心穏やかに生きる」ことへとつながっていくのです。
あなたも明日から「足りないものではなく、すでにあるものに目を向ける」習慣を心掛けてみませんか?
chiharu Instagram
@plants_chiharuyoga
取材協力
観葉植物店「PLANTS 2306」
@plants2306.fe
取材・撮影・執筆
兼子 ヤク
@kaneko89
(滝の写真は chiharu さん提供)
本職は料理人。京都芸術大の通信学部で映像を学びながら文章と写真でも表現活動をしています| webマガジンOTONAMIEでは人物に焦点をあてたインタビュー記事執筆中| 好きなことは読書、人に会うこと、サーフィン、犬と遊ぶ。









