前編
中編
とお送りしてきました、愛知県岡崎市職員の晝田(ヒルタ)さん。
ヒルタトリロジーの最終章です。
――晝田さんを自己分析すると、長所や強みは何でしょうか?
晝田さん:「行動力」と「フットワークの軽さ」、そして公務員と外の世界の両方を見られる「バランス感覚」でしょうか
――「生意気」とか「態度が大きい」と言う批判に対して、どう思いますか?
晝田さん:「単なる晝田のPR活動でしょ」と今でも言われますが、最近は、目立っていいんだと思うようになりました。笑
――批判する人は少なからずいますからね
晝田さん:アフリカのことわざに「早く行きたいなら、一人で行け。遠くに行きたいなら、みんなで行け。」というものがあります。よく、「1人の100歩より、100人の1歩」と言われますが、1人の50歩だったり、30歩だったり1,000歩だったり、開拓できることをする人がいてもいいと考えています。その方がより早く遠くへ行けますし。言葉の捉え方ですがね。
――たくさんの活動をしているのはどんな感覚なのですか?
晝田さん:ゲーム世代なので、現実世界でゲームをしている感覚ですね。「仮説→検証→歓喜」を繰り返して強くなって、ちょうどいい敵を倒し続けるような。
――身体はえらくない(しんどくない)のですか?
晝田さん:確かにしんどい時はありますし、もっと人に分けた方がいいと言われます。いろんなコミュニティーに参加、参画しているんですけど時間的に限界で…(笑)
任せるのと放置するのとは違いますし、人に任せるのは難しいです。一人で抱えきれないレベルになってきたところを誰かに任せ、共有することで広がりが生まれ、岡崎から日本や社会、世界をより良い方向に導いていけると信じています。
量は質を凌駕する
「ここやる」のいいところは、失敗ができる事。
晝田さんは「ここやる」はゼロからイチをつくる場で、「トライアルの場」「失敗できる場」と自己分析しています。
「もっと量じゃなくて、質を求めた方がいいんじゃないの?」という意見がある。
「しょうもない」とか、「女子大生とタコ焼きパーティやって何なの?」「何か生まれるの?」みたいに言われることもある。
ただ、どんなことでもトライアルでやっていくことで、質が磨かれていくものです。
すなわち、量をこなすことで、質に変えていけるということ。
市役所の業務と「ここやる」を連動させる事例を1つご紹介します。
当時の晝田さんの業務の1つであった企業創業支援で、「Startup Weekend(スタートアップ ウィークエンド)」というアメリカ発祥のプログラムを、「ここやる お試し半日版」として行いました。
「Startup Weekend」とはシアトルから始まった起業家精神を育てるイベントで、通常2泊3日かかるものを半日に凝縮したお試し版としてです。
それがとても好評で、市役所の業務として予算を取り、2017年の6月に実際に動き出しました。
岡崎市は地方自治体初のスポンサーになり、約40人が参加されました。
初開催!Startup Weekend岡崎の開催報告!! – Startup Weekend Japan
https://nposw.org/swokazaki/
「ここやる」で小さく初めて、市役所が少し大きいものをやる。
そこから行政の事業としていってもいいし、民間が発展させてもいい。
そういうことができるのも、市役所から独立させた出島としての「ここやる」のおかげなのです。
そしてここやるは、皆が認める存在になっていく
ここやるの活動では数々の賞を受賞しています。
主だったものを3つ掲載します。
○2017年4月 Forbes JAPAN「日本を元気にする88人」
世界的な経済誌であるForbesの日本版が選ぶ「日本を元気にする88人」に晝田さんが選ばれましたが、このことについて晝田さんはこう述べています。
私一人では何もできていません。
ナカガワ、ノザワ、オガワの”ここやる”スタートアップメンバーがいたからこそです。
普段からここやるに来てくれる皆様がいたからこそです。
ここやるに来れなくても応援してくれる皆様がいたからこそです。
【雑誌】『Forbes』の「日本を元気にする88人」に選出されました! – ここやる活動ブログ/愛知県岡崎市/空き店舗撲滅運動ここdeやるZone
http://cocoyaru-okazaki.hatenablog.com/entry/2-170425-forbesjapan
○2017年8月 HOLG 「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2017」
地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government(HOLG)」が、地方公務員の他薦をもとに『地味』『派手』を問わず、地方公務員が、「本当にすごい!」と思う地方公務員を表彰する賞です。
HOLGが表彰することで、高い成果を上げた職員の活躍を他自治体や一般市民、そして、大手メディアへ成功事例として共有し、地方公務員の方々がより力を発揮できる環境の構築繋がっています。
『地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード』結果発表 – Heroes of Local Government
https://www.holg.jp/interview/hirutakoichiro/
アワードはこの年が第一回目で、晝田さんは最年少の29歳で受賞しました。
この時も、
こうした表彰をいただけるのは私だけがスゴイというわけではなく、
”ここやる”に来てくれる方や職場の仲間が会ってこそだと思います。
他の受賞されている方の錚々たる顔ぶれや実績からすると、
もっともっと私はやっていけるしやっていかなければならない
と、驕ることなく進み続けます。
【感謝】「地方公務員が本当にすごいと思う地方公務員アワード2017」受賞しました!! – ここやる活動ブログ/愛知県岡崎市/空き店舗撲滅運動ここdeやるZone
http://cocoyaru-okazaki.hatenablog.com/entry/20170922-holg-award
○2018年10月 地域に飛び出す公務員を応援する首長連合「地域に飛び出す公務員アウォード2018」
「地域に飛び出す公務員」とは、公務員が自分の時間を活用して、一国民、一地域住民として、職場や家庭における役割に加え、プラスワンとして、社会貢献活動、地域づくり活動、自治会、PTA、消防団、NPO法人などの活動に参画している公務員のことです。
デスクワークのみや9時5時、お役所仕事と言われがちな公務員ですが、全国には面白い取り組みをしている公務員は多くいて、そういった方を応援する首長(知事・市町村長)の首長連合が表彰しています。
実はこの首長連合の代表は鈴木英敬三重県知事!
4回目のアウォードには「ここやる」を含めて25組の応募があり、その全てが表彰されました。
About us | 地域に飛び出す公務員を応援する首長連合
https://tobidasu-rengo.com/wp/about-us/
商店街からも飛び出して、空気をつくる側に
晝田さんは市役所を飛び出して空き店舗を借り、さらにプライベートで借りている空き店舗も飛び出して、庁内外、市内外の幅広いジャンルの方と一緒に地域活性化、地方創生を目指した活動しています。
例えば「みらおと!」。
乙川河川敷という公共空間の利活用を通して、市内外の人とともに大型音楽フェスを毎年実施しています。
この「みらおと」は、内閣府主催の「地方創生☆政策アイデアコンテスト2018」において、優秀賞とチームラボ賞をW受賞しました。
miraoto!
https://www.miraoto.site
コミュニティの創出だけではなく、シビックテック(市民がテクノロジーを活用して社会課題を解決すること)を目指す「Code for Aich(C4A)」でも代表も務めています。
「C4A」は、ITやモノづくりの力によりみんなで解決する有志の団体です。
「C4A」も「Linked Open Data チャレンジ Japan 2018」で優秀賞を受賞したり、2019年にはIBMのコンテスト「Call for Code 2019 Global Challenge」の日本代表にも選出されました。
日本は課題先進国なので、C4Aの活動がもしかしたら世界の社会課題を解決することになるかもしれません。
Code for AICHI(C4A)
https://www.code4aichi.org
また、全国に約100団体ある「Code for xxx」の人たちが一同に会する「Code for japan Summit 2020」が2020年10月に愛知で開催されるとのことです。
ぜひチェックしてみてください!
(参考)昨年の「Code for japan Summit 2019」
https://summit2019.code4japan.org
さらに晝田さんは、「一般社団法人 未来創造」という東海圏の企業や組織の垣根を越えた事業創造の場で、ビジネス化や「ビジネスエコシステム」の形成にも参加しています。
※ビジネスエコシステムとは、まさにビジネスの「生態系」であり、企業や顧客をはじめとする多数の要素が集結し、分業と協業による共存共栄の関係を指す。
(総務省|平成30年版 情報通信白書|ビジネスエコシステムの変化より)
未来創造
https://www.createfuture.biz
公務員は基本的に真面目なので、学級委員タイプでムチャはせず、周りの空気を読んでしまいがち。
空気を読まずに、晝田さんは「空気をつくる側」に回ることを意識しています。
最近の学生は、まちの人と一緒にお祭りやイベントなど、まちづくり関わる人も多いですが、公務員になって2、3年経つと組織の中で段々と染まってしまうことも多いです。
公務員になろうと面接で話した時のことや、採用辞令をもらったあの日のことを今一度思い出して、空気をつくる側に!
めげずに外、出ましょ!
――晝田さんから若手職員へ言葉を贈るとすれば何でしょう?
晝田さん:若手には時間がある。これは強みなので、若手はもっと外に出るべきですね。公務員の内輪の勉強会に参加するのもいいですが、Comfort zoneにいると居心地が良く安心します。
しかしながら、成長するという点ではもっと外の未知の世界、Learning zoneに飛び出すことでしか成長はできないので、ぜひチャレンジしてみてください!
もっと外のコミュニティーの人達と繋がって、外の人達はこんだけすごいスピード感で動いているのだとか、こんだけすごい想いを持っている人がいる、というのを若手のうちから知ること。
人それぞれ得意なことや好きなことは絶対あるので、中途半端でなく1つずつやりきれば、どんどんやる気が出てくるものです。
小さなことでも色んな人や団体を巻き込んで始めてみるたり、逆に巻き込まれてもいってどんどん発展していくので、私も成長したいなと言う若手は外に出ていくとをオススメします。
――中堅からベテランの人たち(大人)にお願いすることは何でしょう?
晝田さん:若手職員をサポートしてあげてください。金銭的な支援であったり、まちの人と繋ぐ人脈的な支援、批判を受けたときに壁になってあげることなどです。
――大人は家庭や仕事の配属などで、外に出る時間を作れない人もいますしね
晝田さん:若手には時間があるので、そういった先輩達の想いを汲み、考えを教えてもらいながら進める。そうすると、「自分がやりたかったけどできなかった。だから手伝うよ」と、先輩から応援してもらえるようにもなります。
外へ出るタイミングは若手に限ったことではなく、大人の方も家庭とうまく両立しながらでも、子育てが一段落とした時でも、その時期は人それぞれです。
めげずにどんどん外へ出て、色んな人脈を作って学びを得ていく。
そうすることで、物事を上から見るだけでなく、横から見ることができるようになります。
仕事としてできないのだったら、プライベートで外のコミュニティーに参加してみたり、運営側に参画してみる。
そこで何か違うなとか、自分でもっとやりたいと思えば、コミュニティーを自ら作ればいいのです。
公務員の志や能力が1%上がれば、世の中無茶苦茶良くなる
公務員 = 無限の可能性
公務員の志や能力が1%上がれば、世の中無茶苦茶良くなるんじゃないか
これは、毎回400〜500人規模の官僚と47都道府県の自治体職員の交流の場「よんなな会」を主催する脇雅昭さんの言葉です。
よんなな会
http://47kai.com
公務員は9時5時の安定だとか、お役所仕事、たらい回し・・・とネガティブなイメージが多い職業です。
私も市役所職員ですが、人員が削減され職員一人にかかる負担が増える中、生産年齢人口の減少や社会保障費の増大、老朽化する施設の維持など課題が多くあります。
一方、スピード感のある民間や世界においていかれないように、AIやロボットの活用や電子化・ペーパーレス化などをし、自治体職員でしか出来ない業務に注力して行政サービスを維持できる「スマート自治体」への転換が急務です。
誤解を恐れずに言うと、公務員は社会を、世界を良い方向に変えられる職です。
それは公務員はクビにならない職業だからで、本来は最も挑戦できる職のはずなのです。
週7日間=168時間ある中で、40時間は職務に専念しないといけませんが、残り128時間をどう過ごすか。
自分が心からいいと思える活動は商店街の空き店舗を借りることでなくても、スポーツの指導者であったりPTAであったり消防団であったりまちのイベントであったり、住民としてまちづくりに関わることは何でも構いません。
「できないかもしれない」ことを「やれる」ことに変える方法を考えて、小さなステップを積み重ねていく。
できないと思い込んで、役所の中に閉じこもってしまうのはもったいないです。
外に出て、別の専門分野を持った方と繋がった「H型人材」が一人でも増えること。
そうして公務員の志や能力が1%上がれば、世の中は無茶苦茶良くなるはず。
公務員はもっと外の世界へ出てみて、どんどん挑戦してみるといいとなと改めて思いました。
サウナでととのえて、全国各地へ
晝田さんのこの屈託のない笑顔は、全国の数多くの人を虜にさせている。
――晝田さんは全国各地に講師として呼ばれて、晝田ファンを増やしていますよね。笑
晝田さん:お声がけいただくと基本は受けていますね、ノーと言えないので。笑
イエスと言うのが楽なのもありますが、ある所での成功体験に囚われて、100本ノックを全て打ち返しているみたいです。
旅行以外で地方に行くのは、地元民しかわからないことを体験できるので面白いですね。ただ、どこかで休みたいなと思う時があります。
――晝田さんのリフレッシュをする方法は?
晝田さん:最近、サウナにハマっているんですよ。東京にもあえて夜行バスで行って、早朝サウナに行くんです。
――”サウナー”というサウナ愛好家が流行ってますもんね
晝田さん:「サウナ=人生」なんですよ。
サウナ→水風呂→休憩の20分を3セットするんですが、サウナって最初は熱いんですよ、100度近くありますからつらいです。
その後15度くらいの水風呂に入った瞬間は「冷たい!」となるんですけど、だんだんと慣れてくる。あんなに冷たかった水風呂が心地よくなってきて「ずっとおれるんじゃない?」っていう感覚になります。
けど、入り続けると凍えるので、ここで休憩をとります。
――それがどう、人生に繋がるのですか?
晝田さん:2セット目にサウナに入ると、あんなにも熱かったサウナが「なんか、無敵…!あんなに熱かったのに!」って心地よく感じるのですが、やっぱり入りすぎると熱いくなってくるので、また水風呂へ……。
人生も一緒で、ずっと同じ場所にいるとつらくなってくる。
そこで環境を変えてみると、最初はつらい(冷たい!)って感じるけど、だんだんと心地よくなってくる。
でも、またそこだけに居続けるとつらくなってくる。
だからこそ休憩をとりつつ、「サウナ」と「水風呂」を交互に楽しむように、違う世界や異なる世界をいったりきたりすることが大事なんだ、そして休憩をとるってことも大事なんです。
そう言った意味で「サウナは人生を体感させてくれる場」なのです。
――なるほど!私もサウナ3セットを挑戦して人生を体感してみようかな。笑
では、さんまる会のイベント会場に向かいますか!
密着取材を終えて
お話を伺っていく中で、岡崎市や愛知県でのご活躍が多い晝田さんですが、地元三重県志摩市の活性化にも携わっていることを知りました。
志摩市の若者が、元気で明るい志摩市になるように活動する「おおきんな」に参加して、ブログ「SHIMAZINE(シマジン)」のライターをしています。
また三重県志摩市での活動として「おおきんな」と協力し、2018年の「志摩市三十路式」をプロデュースしました。
「志摩市三十路式」とは30歳という節目を迎え、10年前の成人式の時とは違う社会経験や自分が過ごしてきた環境を踏まえ、故郷を想いこれからの人生や未来を考えるイベントで、今年5回目が行われる予定です。
おおきんな |志摩市を面白く!楽しく! – 志摩市を「もっと面白く!」「もっと楽しく!」する若者グループ
http://ookinna.net
志摩市の魅力を伝えるブログ「SHIMAZINE」
https://ookinna.net/shimazine/?s=ヒルタ
そして、このOTONAMIEでも晝田さんが執筆した記事があるのです↓
一見遠い存在に思える晝田さんですが、晝田さんが特別なのではなく、時期はその人によってまちまちですが、「外に出て、言葉にし、仲間を見つける」ことは本当は誰にでも出来ることなのです。
これは公務員に限ったことではありません。
動機は何でもよくて、行動していくうちに分かってきますし、「同種の集まり」ではなく「外」の世界に出ることで人は成長します。
結果は同じだとしても、成果はオリジナルです。
外に出てみる。
でも困難なことや壁にぶち当たることもあるでしょう。
そんな時に晝田さんから伺った、困った時に使う魔法の言葉で締めくくりたいと思います。
魔法の言葉
「助けてください!」
きっと助けは現れますし、仲間は必ず見つかります。
桑名生まれ桑名育ち。大学で県外に出て改めて地元の良さを知りました。桑名の良いところを発信します!
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