中々開かない袋…
開かない…
中々開かないよ、このパンの袋。
どれどれ、貸して。
あれ、えっ、うそでしょ、マジで剥がれない。
あー、ここのパンはね、中々開かないのよ。
ほら貸して。
というある日の一コマ。
これはサラッと流してはいけない気がする。
ということで、お店へ聞きに行ってきた
近鉄富田駅にて、
100年以上続くパン屋『リスドール』
三重県立四日市高校のご近所で、
「四高生のソウルフード」
とも呼ばれているパン屋だ。
常連だった四高生が、
今や同校の教員になって、
パンを買いに来る光景も見られる老舗。
ご近所さんのファンも多く、
とにかく客層が幅広い。
四日市中央工業高校や、
某大手企業の売店や自販機、市内の病院にも、
リスドールのパンが配達されているので、
知らずに食べている人もいるかもしれない。
そんなリスドールの四代目に、
まず聞きたかったこと。
―—中々開かないパンの袋にじらされるという声が挙がっていますが…
四代目:言われてみれば、私も引きちぎりますね。
―—ということは、理由は…??
四代目:ないです。なんですかね。普通のテープのはずなのですが。
そんなリスドールさんは、
種類の豊富さでも有名で、
毎日焼いているパンは110種以上。
季節限定商品も入れると、
約140種はあるのだそう。
具材も手作りにこだわっており、
中にはブルーベリーや野菜など、
ご自身で栽培しているものまで。
四代目:素材の美味しさをいかすために必要以上の味付けをしないようにしています。だからこそ飽きがこない。愛情ってそういうことなのじゃないかなと思っています。
飽きがこない上、
行く度に新作や限定パンに出会えるリスドール。
これは通ってしまうわ。
ネーミングにもご注目
オリジナリティ溢れるパン。
ネーミングも秀逸で、
モチモチ感を追求した食パン「モチパーネ」や、
もっちり内麦ブール、キャラッキー、ミルティ、
おはようデニッシュなど、ついクスッとを誘われる。
食感の特徴など、
説明しなくても想像できる名前を、
意識しているとのこと。
四代目:フランス語とかかっこいい横文字は無視されるんですよ。わかりやすいのがいいですね。
―—こういう名前や新作のアイディアはどのように生まれるのですか?
四代目:降ってくるんです。その後に値段と味のバランスを考えます。パンはアレンジの自由度が高いから色々膨らみますよね。
40年以上お勤めの工場長にも、
アイディアがどう生まれるのか聞いてみた。
工場長:湧いてくるんです。
工場長:まぁ、お客さんが喜んでくれたら何でもいいよね。
四代目:ところで僕気付いたんですけど、ここに会社のロゴマーク入っているの知ってました?
工場長:え、なに?ホントだ、知らなかったわ。
そんなふんわりトークが、
スタッフの皆さんで終始交わされている工房。
さすがパン屋、ふっくら優しい。
こういう空気感だからこそ、
アイディアがどんどん生まれてくるのだろう。
ほっこり癒される傍らで、
何度も耳に入り、めちゃ気になっていたやりとり。
『パッションお願いします!』
『パッションなくなりました』
パッション…??
パッション!それが根強い人気NO.1
リスドールのパンで、
気になるのがレトロパッケージシリーズ。
ブラジル人がマスコットになった、
コーヒーロールパンや、
イタリヤンという一見イタリア風だけど、
中身はクリーム&小倉のパンという
じゎじゎくるレトロシリーズ。
そして長い歴史で、
愛され続けているのがパッション。
どれほど情熱的な中身かと思いきや、
シンプルにマーガリンオンリー。
果たしてその名の由来は??
四代目:わからないんです。昔アメリカに住んでいた知り合いに『これ意味わかってる?どういうこと?』って聞かれたことあります。
―—一番人気はパッションという噂を聞いたのですが。
四代目:そうですね。好きなお客さん多いです。パッションは永久におすすめですね。
工場長にも名前の由来を聞いてみた。
工場長:わからないんですよ。ただ市内に1店舗だけパッションを売っているパン屋を知っています。中身が一緒かどうかはわかりませんが、袋ありきでパンが生まれた可能性が強いですね。袋メーカーがパッション講習会とかやったんと違うかなぁ。
―—因みに袋に書かれている「パイウォーター仕込み」というのは?
四代目:それはうちのオリジナルです。
三代目:生体水に近い特殊な水で、イースト菌が生き生きするんですよ。イースト菌も生き物だからね。
―—そっか。イースト菌が元気だとパンもふっくら美味しくなる。だから美味しいパンを食べると幸せな気持ちになるのかな。
四代目:確かにパンの面白さは発酵。菌が生み出す旨味です。その奥深さがあるからこそ感性に訴えられるのかもしれませんね。
今回、パンの袋問題の真相を聞きに行ったら、
解決するどころか、パッションの由来という謎も増えた。
でも帰り道にパッション食べたら、
なんだか元気出たから、
そういう事なんだろうなと思うことにした。
そして後日、四代目から突如きたメール。
また謎が増えた!!
取材日 2019.2.23
一部値段の変更あり
リスドール
住所:三重県四日市市富田4-2-3
電話:059-365-0945
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事