幽霊食堂。
そう言われる店があると聞き、行ってみた。
うん、思わず納得の外観。
入るのに必要なのは、
ヒトカケラの勇気。
昼定食は刺身付き
食堂ワコウ。
店内に入ると、
メニューが壁にずらり。
もれなく迷うパターンである。
こんな時にありがたいのは、
本日のランチ的存在。
あったあった。
本日のランチは、
ミックスフライ定食とのことで、
通常850円が700円。
選択肢が多い時、
こういうのは非常に助かる。
ということで、
ミックスフライ定食を。
お得な上、
お刺身まで付いてるという、
充実度120%な定食。
こちらは牡蠣フライ定食(750円)
お刺身…付いてる。
どうやら昼の定食には、
基本お刺身がつくのがこの店のサービスらしい。
それも店主が仕入れたお任せ鮮魚。
トロが付く日もあるという。
そこで、ふと気になった。
―—刺身定食にもお刺身付くのですか??
大将:刺身定食には天麩羅が付くよ。
―—では天麩羅定食には?
大将:刺身が付くよ。
―—ということは刺身定食と天麩羅定食は同じ??
大将:違うよ、割合が違う。
―—ほぅ、割合。
豊富過ぎるメニューがエンターテイメント
食堂ワコウを営むのは、
元魚屋だった大将と、
元踊り子だったフィリピン人のれいちゃん。
創業18年で、
店名は大将の名前”幸和”からもじったのだそう。
店内入ってまず目に入るのが、
壁を埋め尽くす、
バリエーション豊富なメニュー。
―—メニュー多いですよね。
大将:他に裏メニューもなんぼでもあるよ。
―—えっ、これ以上??
大将:あるよ。忙しい時は無理だけど、リクエストにはできる限り応えているね。
――メニューにないけど”酢豚食べたいなー”とか??
大将:あぁ、出来るよ。
他にも、
冷蔵庫から魚介類を選び、
好みの調理法でお願いできるシステムもある。
それがまた、
どれもこれもリーズナブル。
鯛も、
まぐろも、
ぶりも。
今回は、
イカをお刺身でお願いすることにした。
ゲソとエンペラは、
天婦羅にしてくれる神対応付き。
アジのたたきの場合、
残りの骨は、
カラッと揚げた骨せんべいとなって登場。
そういうのがいちいち嬉しい。
冬になると、
ホルモン鍋やすき焼きなどの、
あったかメニューが増えるのも、
食堂ワコウの風物詩。
セルフのおでんも、
ひたひたでスタンバイ。
そうそう、
黒板も要チェックでどうぞ。
なにやら色々と忙しくて楽しいのが、
ワコウの流儀。
幽霊は出るのか否か
”幽霊食堂”
そう呼び出したのは一体誰か。
大将:近所のこどもたちだよ。理由は、想像通り外観だろうね!
昼から夜まで通し営業のワコウには、
15時頃になると、
小腹を空かせたこどもたちが、
駄菓子屋感覚で訪れる。
特に人気なのはポテト。
お供には、
セルフサービスの烏龍茶。
「ただいま―!」「お帰りー」が飛び交う、
昼過ぎのワコウ。
―—一見、こどもには入りにくい店と感じたので意外でした。
大将:近所の小学校で地域の歴史を学ぶ授業があると、この店で語りべになったりもするんだよ。そういうのもあってかな。こどもたちはよく出入りしてくれているね。
―—本当に幽霊は出ないですか?
大将:出ないよ。店は自分で改築したから昭和のままなんだよ。昭和のスタイルでやりたくてね。いつでも誰でも入りやすいよう、本当は常に入り口が開いている店をやりたかったんだけどね。ふらっと覗くと誰かいるみたいな、そういう居場所になる店っていうのかな。以前に床や壁など張り替えようとした事もあったのだけど、常連さんたちから”何しとんのや、綺麗にしたらいかんて、これがええで”と止められてね。この飾らない感じが入りやすくリラックスできるって言われたらそうなんかなと思って、そのままにすることにしたんだわ。
なるほど。
常連さんの気持ち、わかる気がする。
妙に落ち着くこの感じ。
因みに、食堂の奥にある、
大将お手製のスナック風ルームもめっちゃ昭和。
れいちゃんとフィリピン料理
ワコウの楽しみとして欠かせないのが、
れいちゃんとのトークと、
本格的なフィリピン料理。
れいちゃんが日本に来たのは、
20歳そこそこの頃。
知っている日本語は、
おはようございます・おやすみなさい・いただきます、
それぐらいだったのだそう。
店を始めた頃も、
日本語はさほど上手ではなく、
お客さんとのコミュニケーションに苦労は多かった。
更にこの地域の方々は、
方言的がきつい言葉に聞こえがち。
毎日泣いていた時期もあったのだそう。
それでも理解してもらえるよう努力し、
日本の家庭料理も勉強した。
お客さんの顔を覚えるのも、
常連さんたちの嗜好を把握するのも、
れいちゃんの担当。
タイやベトナム等、
日本語・英語が話せない外国人が来ても、
ジェスチャーでコミュニケーションをとるれいちゃん。
言うべきことを、
はっきりと示すスタンスも気持ちが良く、
今ではお客さんやご近所さんなどが訪れ、
「マスター聞いてー/れいちゃん聞いて―!」と
家族にも言えないような相談に展開することもあるのだそう。
れいちゃん:相談に乗っていた少年少女が結婚の報告に来て、その後子供を授かって、そのうち家族で来るようになったりね、嬉しいこと沢山あるよ。夕方に来て一杯飲んで、”んじゃ行ってくるわー”って近所の銭湯へ行って、”ただいまー”って帰ってくるお客さんがいたりね。お客さんがファミリーな感じ。
大将:ここまで地域に密着した外人は中々いないんじゃないかな。外人の嫁さんもらって、こうしてお店やらせてもらえている自分は恵まれとると思うよ。
―—わぁ、色んな意味で、ごちそうさまです。
そんなこんなで、
人の温度感じまくりの温かな食堂ワコウ。
柔軟性半端ないので、
メニューコンプリートへの道はまだまだ長い!
食堂ワコウ
住所:三重県桑名市 大字下深谷部深川町13−5
電話: 0594-29-3444
定休:月曜日
※火金は朝仕入れへ行く為、ランチ営業がちょっと遅め。その代わり美味しい魚介が豊富
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事