ISE LOCAL LOCATION
大阪の都会で、ある女子サーファーの撮影をしている。「子供の頃からこの辺りはよく来ていました。」という街並みに、サーフボードを持った姿がしっくり馴染む。そんな彼女は、当たり前のように波が上がると志摩の国府の浜でサーフィンをする。
他県に生まれ育ちながら地元以上に三重の海を愛し、サーフィンのために伊勢志摩に移住をしようと考える人は少なくない。そんな中でも、若い女子は特に目立つ存在であり、また、モデルの仕事もしているという彼女が、なぜ日焼けしてまでサーフィンをするのか興味を持った。
彼女の名は山本マナさん(25歳)。大阪の中心部に住んでいる。大阪での撮影後、彼女の友人でJPBA(日本プロボディボード連盟)佐藤友香プロと共に四国に向かい、現地でJPSA(日本プロサーフィン連盟)に所属する武知実波プロと合流し、サーフィンを楽しむ事にする。
そもそも、10代の頃から女子が一人で大阪から海に通っている姿を見て、親はどう思っているのだろう。そんな疑問もあって、私は実際に会いに行ってみたのだ。すると判明したのは、彼女の両親もサーファーであったこと、その影響で幼少時から伊勢志摩の海に親しんでいたこと、そして今でもライフワークのようにサーフィンをしているということだった。三重、大阪といった地域の概念が薄く、海外も含めグローバルな視野があるようだ。そしてsurftripの打ち合わせをする。
そんな環境で育った彼女だが、サーフィンに目覚めるのに少し時間がかかったと言う。
「生きていても何をしていても、幸せを感じない感謝のない“ガキ”でした。何のために朝起きてから夜寝るまで、楽しくもないのに行動しないとだめなのか?心がNOと叫んでいるのにYESのフリをして過ごしていたんです。」と、彼女は言った。
自分を投げ出してしまいたいと思う気持ちを抱え、何か支えが必要だと感じていたという思春期の頃、女子プロサーファーのベサニー・ハミルトンが13歳の時、サメに襲われ片腕を失くしたという話を知った。多くの人がそんな彼女の活躍に励まされているが、山本さんもその一人となったと言う。
一枚の写真を渡される
そこには、幼い山本さんと伝説のサーファー記事のワハさんが写っていた。幼少の頃、サーフィンを教えてもらっていたのだ。後にサーフィンに目覚めた時、その写真を見て、両親のありがたさに改めて気付かされたと、山本さんは言った。
雨の国府の浜でサーフィンをする
国府の浜で少し波に乗ったあと、集合場所の昼川駐車場で佐藤友香プロと話が弾む。彼女は京都から志摩に移り住んだプロボディーボーダーだ。仕事をしながらプロ活動の夢を掴み取っている。彼女に「なぜサーフィンなんだろう。」と問いかけると、間髪を置かず「海が好きだから!」と返してくる。
そしてサーフボードを乗せ四国に向かう車の中で、自分が海でサーファーとして活動出来る幸せと感謝の気持ちを話してくれた。
車内ではサーフィンの話が尽きる事なく車は進んでいく。例えば海の近くで育った私が当たり前の環境にいた時、自分の原点を僻眼(ひがらめ)した過去の話にもなった。
それは本当に大切な人や、また場所、サーフィン自体への感謝が薄くなるという話だ。
誰でも自分が産まれた時や幼少の時を覚えていないように、人は、自分自身が過ごした時間と記憶を知らず知らずの内に忘れてしまう生き物だ。ある意味、大切な事ほど盲目になるのかもしれない。
AM4:00 徳島阿南市
武知実波プロの自宅であるサーフショップに到着し合流した。彼女はJPSAの女子選手会長を務め、サーフィンを通じて地域貢献できる事は無いかと考え続ける有望な大学生だ。そして海に向かうと太陽が昇り出した。
四国の空の予報は雨だったが、どうやら歓迎されているようだ。爽やかな陽射しと一緒にいくつかのポイントをチェックする。海部そして生見。
今回、内妻の干潮時を狙う事にした。
海に入る前に三人にお願いしたサーフィンテクニックがある。それは波に力のある場所から離れてしまった後、戻ってさらにライディングを続けるための必須テクニックで、方向転換のひとつ「カットバック」だ。
Cut Back
サーフィンへの思いを胸を張って語る彼女たちの大切な原点。その波に乗る力のある場所がどこなのかを知りたかったからだ。
海の上でも自分と人を比べたり、また時には誰かを傷つけてしまったりする。そんな躓きで海から距離を置きたいと思う時がある。だが、サーフィンのない世界は狭くて小さな所だという事を実感すると、やはり海に戻ってくる。そしてサーフィンなんだと。
サーフィンでは、波に乗り続けるために方向転換も必要となる。それはまた生きる事にも通じる。
サメに襲われたベサニー・ハミルトンの話には、彼女を支え続ける家族や、周りの人の愛が込められている。今の状況だけで自分の全てを決断してはいけないと語っているようだ。人の力の源に戻ること、その繰り返しによって人は生きて行くという事を教えているようだ。もう少し深く掘り下げよう。
例えば波よりサーフボードが進み過ぎたら揚力を失う。すると方向転換すらできなくなり、波が追いついて来るのを待っていなければいけない。逆に波の力ある場所で方向転換ができれば、サーフボードが深く入り、綺麗な水しぶきを描きターンして行く。サーフィンは綺麗なターンの繰り返しによる美しさが評価されるのだ。
波を捕まえ乗りこなす事も、また投げ出してしまうのも自分次第だが、同じように人も繋ぎながら生きて行く。それは卑しさでなく、また弱さでもない。サーフィンのカットバックは、乗り続ける強さのしるしである。波の力が途切れないうちに戻ってくる事で、サーファーは波に乗り続けているのだ。
台風1号のうねりが届く
ちょうどこの記事を書いている時、南のうねりが届きだした。待っていたかのように彼女たちから連絡が入る。私は浜島町の南張海岸にカメラを持って向かった。
これだけ台風が少ない年は珍しく、久しぶりの波を待っていたかのように浜島の海には多くのローカルサーファー達が来ていた。
そして今回の記事に台風の1号の波を付け足そうと撮影していた。すると私の後ろにある気配を感じた。振り返ると伝説のサーファー記事のあの人が海に入ろうとしていたのだ。何かの巡り合わせだろうか。この日、山本マナ、佐藤友香、そして予定していなかったワハさんと、同じ海に入りサーフセッションとなった。
サーファー女子に聞く
3人にサーフィンを続ける力の源を教えてもらった。すると佐藤友香プロは「リーバサーフとファミリーの皆さん」,そして「師匠との出会い、シェイパーとの出会いなど全てが自分の力です。そして尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。」と話す。
武知実波プロは「家族、そしてこの阿南です。」と話し、自分が満足する全ては、サーフショップを経営する両親のおかげだといつも感謝していると話してくれた。
そして山本マナさんは「家族、そして大好きな昼川駐車場とそのみんな! 昼川の唐揚げ定食が私の一番のごちそうです!」と嬉しそうに話した。
世界中、波さえあればサーフィンは共通の言語のように、人に感動や勇気、夢を与えてくれる。そして伝説を受け継ぐ若者が次々と現れる。
サーフィンはよく人生に例えられますが、波に乗り続ける限り、やがて彼女達もソウルサーファーと呼ばれる日が来るのです。
Special thanks
VW鈴鹿
さて四国内妻でのサーフィンが終わってから武知実波プロのオススメのレストランに向かう事にした。まるで廃墟の映画セットのようなロケーション。今回お借りしたVW(フォルクスワーゲン)のパサートヴァリアントと記念撮影してみた。HP http://www.automall
実際二日間、彼女達は「四国がこんなに近く感じれるってすごい!」と言いながらドライブを楽しんでいた。フォルクスワーゲン鈴鹿様、車の提供ありがとうございます!
ところで車のトランクはご覧の通り。
サーフボード2枚とボディーボード、カメラ機材にギター!ギターは山本マナさん所有の物で本来海で弾いてもらう予定が雨で流れたので、LESサーフショップで弾いてもらった。
LESサーフショップ
武知実波プロの徳島大学サーフィン部の話や、ご家族の方とサーフィン談義、そしてギターを弾いたりと楽しい時間だった。オーナーの和一さんが話すサーフィン文化からオリンピック競技として一歩進んだスポーツとしての捉え方、それを実践する実行力、ともに尊敬できるサーファーだ。LESサーフショップ http://www.lessurf.com/home.html
リーバサーフとファミリーの皆さん
佐藤友香プロのサーフィンの原点であり力の源!またの機会に掘り下げた取材をしたいと思っていますので、その際は何卒よろしくお願いいたします。リーバサーフ http://www.le-ba-surf.jp
昼川駐車場
そして国府の浜の昼川のみなさん、ありがとうございました。ここに訪れると先代のおじいちゃんのウエストポーチから出してくれる釣り銭の姿が思い浮かびます。これからも変わることなく続いていってほしい場所です。
最後にここの「唐揚げ定食!」は、グルメとして食べにくる価値があるんですよ!
【profile】
今回、車両提供や取材旅費などをご協賛いただいたフォルクワーゲン鈴鹿店では、ご来店時にサーファーと証明できる写真、またはvwsuzukaのInstagramをフォロー、またはLINEをフォローで、サーファーにも嬉しいVWオリジナルのタオルや、キーホルダー、ボールペンなどのVWグッズが必ずもらえるキャンペーンを開催中です。
また、アンケート(すべての方が対象)にお答えいただくと、グルメギフト券が毎月抽選5名の方に当たるキャンペーンも開催しています。
お店ではOTONAMIEプチ展示会も併催しています。
詳しくは、フォルクスワーゲン鈴鹿(tel059-370-5588・HP) まで。
おまけの動画
yoshitugu imura。Otona記者。サーファーからフォトグラファーに、海に持っていったギターでミュージシャン活動もする(波音&Ustreet )ドブロギター奏者。 伊勢市在住。この記者が登場する映像