少子高齢化による深刻な人手不足が懸念されるなか、
急速に進む外国人労働者の受け入れ。
厚生労働省の発表によると、
外国人労働者の数はここ10年間で約3倍にも増加したという。
2019年4月には改正出入国管理法が施行され、
今後は更なる増加が見込まれる。
外国人との共生を問われる今、
決して忘れてはならないのは、
彼らは単なる”数”や”戦力”ではなく生活者であるということ。
今回訪れたのは、
早くから外国人実習生の受入体制を整えている株式会社やまぜんホームズさん。
暮らしを追求し続けているハウスメーカーだ。
そこで出会えたのは、
夢に向かってまっすぐ努力するミャンマーの青年だった。
社員による社員のための場所を一緒に
本社を訪れると、
ちょうど社屋の真横でなにかの工事が行われていた。
聞くと、社員による社員のための食堂をつくっているとのこと。
「完成は5月末の予定です。とても楽しみですよ。普段あまり接点がない社員同士も交流ができる。挨拶ひとつするだけで和やかさって全く変わるものですからね」
嬉しそうに教えてくださったのが、
社員食堂プロジェクトの現場を取り仕切っている西棟梁。
そして西棟梁の背中を見て学んでいるのは、
昨年11月にミャンマーから来日したウィンさん(22歳)
ウィン:故郷に戻ったら自分の家と店を建てたいです。妻と一緒にお菓子屋をやりたいんです。
ウィンさんの奥様は学校の先生。
今は勤務先の村まで約8時間かけて通っている。
2人の夢を叶えるべく、
ウィンさんは日本へ3年間働きに行くことを決めた。
日本の貨幣価値はミャンマーの20倍。
毎月の給与の2/3は家族へ仕送りをしているのだそう。
ウィン:韓国もすすめられました。でも私は、日本に行きたいと言いました。
単にお金を稼ぎたいのであれば、
他の国へ行く選択肢もあったが、
流れ作業の荷下ろしの要員ではなく、
世界に誇れる建築技術を持つ日本の職人につき、
スキルを身に付けたいと思ったのが日本を選んだ理由。
西棟梁:ウィンは飲み込みが早くとても優秀。自分で考えて動ける子だね。真面目でいつも一生懸命だから一緒に働いていて気持ちが良いよ。
二人のやりとりは基本日本語。
ウィンさんは日本語をミャンマーにて5ヶ月間学んで来たが、来日当初はほとんど話せなかった。
それが今ではしっかりとコミュニケーションを取れている。
ウィン:日本語は休日に本で勉強しています。漢字が難しいですね。
わからない言葉もまだまだあるが、
ウィンさんの真摯な姿勢に西さんも精いっぱい応える。
現在、やまぜんホームズさんでは、
5名のミャンマー技能実習生を受け入れている。
今回の社員による社員のための食堂プロジェクトにおいて、彼らが現場の中心メンバーでもあるというのも興味深い。
技術の修得と社内交流を図ることが狙いらしい。
実習生各々が、
母国に戻ってからの夢やビジョンを明確に持っているため、
皆仕事にストイックで懸命な姿が印象的であった。
母国にいる妻へ伝えたいこと
3年という期間で日本に来ている実習生。
家族と離れて寂しくないのだろうか。
ウィンさんも技能実習期間中、
ミャンマーへ帰る予定はないという。
ウィン:寂しいかもしれないですが、妻には毎日夜に連絡しているから大丈夫です。
と、ちょっぴり照れながら教えてくれた。
どうやらミャンマーの男性はシャイな方が多く、
ストレートな愛情
そして実はウィンさん、
日本に来てから奥様が妊娠していることがわかり、
今夏には父親になる。
ウィン:とても嬉しくて楽しみです。
今は離れているけれども、
気持ちはしっかりと繋がっている。
現場はほっこりと温かな空気に包まれた。
そんななか、やまぜんホームズさんのはからいで、
ミャンマーにいる奥様へメッセージを送ることに。
ウィン:できました。
――どういう意味ですか??
ウィン:健康に気を付けて。
愛情が滲み出る素敵なメッセージ。
ごちそうさまでした!
社員食堂をつくろう。その経緯は…
誰かの健康と幸せを願う心。それは愛情。
やまぜんホームズさんの食堂プロジェクトも、
きっかけは社員の健康への気遣いだった。
「昼にコンビニ弁当やカップ麺を食べている社員が多いのが現状です。大切なのは健康な食事を継続していくこと。健康だからこそ良い仕事が出来るという社長の想いに共感しました」
語ってくださったのは、
社員食堂のシェフを担当される森さん。
特徴は、
食材の中心がピロール農作物であること。
ピロール農法とは、
土壌を生き生きとさせるラン藻(シアノバクテリア)を活用し、弱アルカリ性でミネラル豊富な作物を育てる農法。
本農法で作られた大豆を使い、
まずは納豆や醤油、味噌汁から始めていくそうだ。
ハウスメーカーであるやまぜんホームズだが、
暮らしのなかで、食と健康を重要視しており、
飲食事業にも注力されている。
「お客様の健康をサポートすべく取り組んできましたが、身近な社員の健康について考えられていませんでした。その反省から社員食堂に至りました」
そう登場したのが、前野一馬社長。
期待通りの立ち姿は、もはや名物!!
前野社長は以前のOTONAMIE取材にて、
「一晩では語れない」という壮大な10年計画を、
10分で語ってくださった社長である。
【参考】東京証券取引所に上場した三重の会社社長と対談したら、予想以上の少年感だった。
社長:最高のごちそうとは、身体に良い食事を、会話をしながら一緒に食べる事だと思います。賑やかな場所になるといいなと考えています。
人と人として
創業41年を迎えるやまぜんホームズ。
原点は前野社長が少年時代に体験した2つの出来事。
ひとつは伊勢湾台風。
幸い崩れることなく前野家を守ってくれた家と、台風が去った後、次々と建った新しい家が人々に笑顔を戻していったこと。
ふたつめは、父親が采配を振り自分の家を建て、上棟式には沢山の人が集まり笑顔が溢れたこと。
その体験から、
多くの人を笑顔にしたいという想いで創業に至った。
家づくりとは、家族の幸せをデザインすること。
”暮らし”のなかで長年お付き合いできる会社として、
現在は戸建住宅事業を筆頭に、
介護、セレモニー、飲食事業を手掛けている。
これまでもインドネシアやマレーシアの海外インターン生、
フィリピンの実習生を積極的に迎え入れてきた。
社長:面談は現地で行います。行くと宗教や文化がわかりますね。
前野社長は、現地で国民性を理解すると同時に、
日本にあって現地にないものの市場調査も行い、
提供できる暮らしのサービスを考えるとのこと。
仲間入りする外国人メンバーは、
事業展開の架け橋でもあるようだ。
社長:ミャンマーの面接では30名程が来てくれました。決め手は笑顔や質問に対して前向きさですね。遠慮がちな国民性があるなかで、皆さんやりたいことを話してくれました。実際一緒に働いてみて感じたのは、ミャンマー人の実直さと勤勉さ。かつての日本のような潜在的なパワーを感じました。
ミャンマーにも支店があるやまぜんホームズ。
将来的には日本でトレーニングをした後、
現地で働ける展開も視野に入れ考えているのだそう。
また社長も完成を楽しみにしているのが社員食堂。
場所が本社の真横というのもあり、
建設中の現時点でもミャンマーメンバー含め、
行き交う社員同士が挨拶を交わしていた。
仕事に大切なチームワーク。
日本人・外国人・役職も部署も関係なく、
コミュニケーションがとりやすい環境が整えば、
人と人としての交流も一層進むであろう。
photo / y_imura
取材日/2019.5.8
【後日談】
社員の健康と英気を養う場所として、
2019年5月31日やまぜんホームズ社員食堂「食う.寝る食堂」完成。
ゆくゆくはお客様にも開放する展開も考えているそうだ。
株式会社やまぜんホームズ
フリーダイヤル:0120-852-103
メール:info@yamazen-k.co.jp
本社:〒511-0117 三重県桑名市多度町下野代900
⼾建住宅事業︓http://www.yamazen-k.co.jp/
飲⾷事業︓https://inspire-japan.jp/
介護事業︓http://www.mamy-house.com/
企業ホームページ︓https://www.yamazen-homes.com/
株式会社やまぜんホームズに関するOTONAMIEの過去記事
◆Stay hungry. Stay foolish. 世界を変えた、IT企業家に憧れて。
◆ホワイトデーだから旦那達がお洒落パンケーキを作ったら、理想の暮らし方はモノじゃなく心にあると気づいた話。
◆東京証券取引所に上場した三重の会社社長と対談したら、予想以上の少年感だった。
◆惜しまれて3月に閉店したオートレストラン。実は営業再開していた。
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事