新鮮なひのきのおが粉と地元三重の米ぬかを使った酵素風呂を提供している「酵素浴 やまとや」は多気町波多瀬地区の、車もあまり通らない静かな場所にある。
お店に入ると、森林浴のような爽やかな香り。明るい店長さんと気さくなスタッフさんが出迎えてくれる。

まずはカウンセリングをしてもらいながら水分補給。「私、あついのがめっちゃ苦手なんです、こんなお客さん他にいます?」と恐る恐る尋ねると、「大丈夫ですよ、手足を出すこともできますし、体にかける量を調整しますね」と優しく答えてくれた。ほっ、それなら安心安心。
やまとやはタオルや紙ブラ、紙パンツ、アメニティ類も完備しており、手ぶらで気軽に訪れることができる。

「午前中は熱めですが、午後はそんなに熱くないですよ。触ってみてください」と店長のえりさん。自然発酵の温もりを体感し、不思議だなあと驚かされる。そして自社工場から直送される新鮮なおが粉はとても落ち着く香りで、いつもより呼吸が深くなっていることに気づく。

そんな「酵素浴 やまとや」を切り盛りする店長のえりさん。思いがけないきっかけから店を開くことになり、さらに乳がんを経験した彼女に、これまでの道のりを伺った。
製材業の副産物「おが粉」が導いた出会い
―おが粉から酵素浴へとつながったのは、どんなきっかけだったのでしょうか?
えりさん:もともと家業の製材所で事務をしていたんです。あるとき、ひのきオイルを作りたいという調香師の方と出会って、一緒に奈良でひのきオイルを作っている工場を訪ねました。そこで、おが粉を出荷しているのを見かけたんですね。「これ、どこに使われているんですか?」と尋ねたら「酵素浴やよ」と。それから、酵素浴を体験しに行くなど、興味を持つようになりました。
―おが粉と米ぬかで自然発酵し、70度まで上がる熱を利用する酵素浴。製材業から、そんな健康分野につながるとは意外です!
えりさん:まさかお店を持つとは思っていなくて。弟である社長から「酵素浴やっちゃう?」と声をかけられて「え、私が?」って。そこから本当に話が動いていったんです。
乳がんの発覚と、価値観の転換
―新しい挑戦の準備を進めていた最中に、乳がんが見つかったそうですね。
えりさん:はい。2024年の4月に見つかって、6月には手術を受けました。身に覚えがあったのは…これまでのストレスですね。私は「自分が我慢したらいい」「自分がやらなあかん」って思うタイプで、自分の気持ちにフタをするクセがありました。
えりさんは、診断を受けても大きく落ち込むことはなかったという。それは、きちんと定期検診を受けていたからこそ「やれることはやってきた」と後悔せずに済み、さらに早期発見に繋がったからだ。
えりさん:がんになってやっと気づけました。「時間は有限やし、自分を守れるのは自分しかいない」って。そこからは、ストレスを見ぬふりせず手放す、そんな武器を手に入れたような感じで(笑)。すごく生きやすくなったんです。
―療養中、開業のことは不安になりませんでしたか?
えりさん:正直、気になりました。でも社長から「店は会社としてやるんやから、心配せんでええし、オープンを延期しても大丈夫」と言ってもらえて救われました。スタッフを雇うつもりもなく、一人で細々とやるつもりでしたが…万が一体調不良などで店を閉めて、お客様に迷惑をかけるよりはスタッフに頼ろう、人に助けを求めてもいいんだ、と自然に思えるようになりましたね。
悩める女性の「駆け込み寺」のような存在に
―えりさんの目指す「やまとや」はどんなお店ですか?
えりさん:「話を聞いて、検診を受けるようになりました」って言っていただくことがあります。乳がんを経験した自分だからこそ伝えられることがあると感じています。そんな人たちにとって、ここが“駆け込み寺”のような存在になれたら嬉しいですね。おしゃべりしに遊びにきてくれるだけでもいいんです。

自分の心の声に耳を傾け、ストレスを見ぬふりしないこと。時間は有限であるという現実味を持つこと。なるほど、時間の有限さを意識すると、不思議と優先順位がはっきりして、たいていの心配ごとは取るに足らないものに思えてくる。
病を経て人生が好転したというえりさん。その前向きな人柄と、ひのきの香りに包まれる酵素浴の空間は、訪れる人の体も心も軽くしてくれる。
おまけ「酵素浴後の足圧ボディケアにも感動!もっと踏まれたい♡」
この日は「足圧ホタルカゴ」さんとのコラボデー。酵素浴でゆるめて、足圧でほぐす特別コースを体験してきました!
可愛くも、どこかSM感漂う名刺…
というのは冗談で、足圧ボディケアアカデミー一級踏み師さんの極上ボディケアにただただ感動!足圧は手で行うよりしっかり圧がかかり、面で圧がかかるので鋭い痛みがなく、イタ気持ち良さがクセになる!
ああ、もう踏まれたい。次はいつ踏まれに行こう。
店舗情報
店舗名:酵素浴やまとや
住所:三重県多気郡多気町波多瀬254
電話番号:070-3227-9243
営業時間:9:00〜15:30
定休日:日曜日・月曜日
(ホームページ、公式LINEからの予約制)
店舗名:ホタルカゴ
住所:三重県多気郡多気町丹生1330
営業時間:9:00〜18:00
定休日:不定休
(InstagramのDM、公式LINEからの予約制)
読んで頂き、ありがとうございます。三重県松阪市の山間部、70もの橋が架かる香肌峡在住。地元の写真部としても活動しており、香肌峡を旅するように暮らしています。フォトスポットやクセになるディープなお店をご紹介したいです。










