彼女には双子の兄がいる。
彼女の名前は前田梨乃。七宝数秘学の講師をしている。
ある時、運命的に出会った「カバラ数秘術」は生年月日から「運命数」なる数字を導き出し、その人の性格や考え方の傾向、才能、人生のテーマなど様々なことを導き出す古くからある秘術。
ただ、生年月日が一緒の兄と彼女はまるで違う人生を歩んでいる。
そのことに腑に落ちなかった彼女が次に出会ったのが「現代ヌメロロジー」というもの。これは生年月日に加え、生まれた時の氏名から4種の数字を導き出す。
そこで梨乃さんはこの2つを組み合わせ、オリジナルの秘術を作り出した。
それが「七宝数秘学」だ。
「七宝柄」とは古来から伝わる、円満、調和、ご縁などの願いが込められているという縁起の良い柄であり、「その人を輝かせ」「心が丸くなる」そんな彼女の想いを表した名前になっている。
海外から伝わってきた数秘術を日本の伝統や彼女の願いを込めて、また再び世界に伝えていきたい、それが梨乃さんの夢だ。
元々、数字が得意だった。
では、彼女が何故この「七宝数秘学」を作るまでに至ったのか?
それは彼女の幼少の頃に遡る。
彼女は母に愛されていないと感じることが多かった。一方双子の兄はいつも母から褒められ、大切にされてきた。
「梨乃は可愛くない」そう言われ続けた彼女は、一人部屋に引き篭もった。父と母、そして兄が集うリビングから聞こえる3人の笑い声を聞きながら。
そんな中、事件は起こった。梨乃さんが6歳の時だ。
母と買い物に行ったスーパーの駐車場でのことだ。母の車が当て逃げされてしまう。その後、逃げ去った車のナンバーを梨乃さんが覚えていたことで、無事に犯人が捕まったのだ。そこで初めて母に褒められるという体験をする。
「母に褒められた」
これが梨乃さんの数字好きのきっかけとなった。他にも誕生日を覚えていると喜んでくれるから、みんなの誕生日を覚えた。
そして、勉強もスポーツも頑張った。運動神経も成績も高く、成績の悪い兄に勉強を教えたりもした。努力して難関の進学校にも入った。しかし、その学校での成績を見た母が放った一言に、彼女の気持ちはガラガラと崩れ落ちた。
「梨乃ってこのくらいなんや」
それからの彼女は、高校へ行く意味を見失い、中退も考えながら遊んで過ごした。
卒業生のほとんどが大学へ進学していく中、梨乃さんは子供服の会社へ就職した。しかしそこも、豹柄の服装を咎められ、制限されるのは嫌だと、すぐに辞めてしまう。
その後、1ヶ月無職だったが、早く自分で稼いで自由に遊びたい、とYKKAPへ就職。結果7年間、その会社でOLを続けることになるのだが、そこで梨乃さんを苦しめたのが、3回にも及ぶ病気だった。
その経験から、目に見えない身体の不調をケアしたい、という思いが強くなり、退職しアロママッサージやリンパマッサージの仕事を始めることになる。
その施術をする中で、人々が抱える悩みを聞き、いつしか「こころのケアをしたい」と思うようになっていった。
そうして出会ったのが「数秘術」と呼ばれるものだったのだ。
面白い!私はこれをやるために生まれてきたんだ。
そこからの彼女は水を得た魚のように跳ねた。
数秘術を学び、オリジナルの「七宝数秘学」を作った。今では主婦を始め、大企業の会社経営者に至るまで、多くの人のカウンセリングを行なっている。
「占いでしょ?あんまり信じない方なんだよね。」そんな人もいるだろう。
私も実はそう思っていた。今回梨乃さんの話を聞き、そして実際に私のカウンセリングも行ってもらった。
すると、一つ分かったことがある。それは、自分に向き合い、自分の内なる声を聞こうとする時間が持てる、ということだ。自分のことは分かっている。そう思っていた私に、本当の自分、他者にこう見られたいと思う自分、仮面を被った自分の姿を知らされる。もしかして、自分の本当に願う在り方は別の姿なんじゃないか?そう向き合うきっかけを作ってくれた。
梨乃さんは言う。「他者と比べるものではないんです。その人にはなれないんだから。自分の内側を見て、生き方をシフトすると、楽に生きることが出来るんです。唯一無二の自分を認められるようになるんです。」
自分が自分であることはを認められたら、他人も認められるようになる。
そこから調和が生まれ、世界の平和にも繋がる。
梨乃さんはここ三重県で作り上げた「七宝数秘学」を使って、身近なところから、その先には世界中の人々がお互いを認め合う社会を作ろうと挑戦している。
現在、梨乃さんも娘を育てている。
数秘を通して見ることで、娘の行動の意味が理解できるようになったという。そして、梨乃さんの母との関係も数秘によって大きく変わった。
母のことを数秘を通じて見ると、分かったことがあるという。変わった性格の人が多いと言われる「33」という数秘の3人(梨乃さん、父、兄)に囲まれていた、一人だけ違う数秘だった母は、実はとても苦労していたのかもしれない、そういう気づきになったのだ。
数秘を知ることで母に合わせられるようになり、関係性が好転した。
家族とは小さな社会。その一つ一つの小さな社会の調和をサポートしていくことで、この社会全体の調和も保たれていく。そう信じて、毎日多くの人に数秘のシャワーを浴びせている。
いつも明るい笑顔で、彼女が通った後には花が咲いているような温かさを感じる。でもそれだけじゃない。今回取材させてもらった中で、彼女の中にある固く揺るぎない信念と強い優しさを見た。
決してスピリチュアルではなく、地に足をつけた予想より遥かに現実的であった「七宝数秘学」で世界を変えていくと言った、前田梨乃の表情はとても輝いていた。
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