ホーム 01【食べに行く】 かつお節屋が本気で伊勢うどんのつゆを手作りしてみた。

かつお節屋が本気で伊勢うどんのつゆを手作りしてみた。

キッカケはある日の朝ごはんに伊勢うどんを食べようと麺を茹で始めた時。

あれ・・?

冷蔵庫にアレあったっけ?
そうアレとは伊勢うどんのつゆのこと。
あると思って麺を茹で始めたのに、伊勢うどんのつゆがなかったのです。

これは困った。

だって朝だし。

もう時間がないし。

1回も作ったことないけど、なんとなく舌に残る記憶を頼りに顆粒のかつお出汁と自家製の「かえし」を使い、なんちゃって伊勢うどんのつゆを作りました。
初めて作ったつゆは色も薄いし、味もなんか物足りないな〜。おしい。笑
でも急いで作った割には、方向性は間違っていない!と、密かな手応えを感じたのでした。


 

かつお節屋に嫁に来てからというもの、家で食べるものだった伊勢うどんを外で食べる機会が増えました。
小久保商店のかつお節やサバ節は伊勢うどんを提供している多くのお店で使っていただいてます。

勉強も兼ねてお得意先さんで伊勢うどんを食べると、それはそれは色んな味に出逢えます。
麺の太さ、つゆの濃さ、出汁の風味に、トッピングのバリエーション。正に組み合わせは無限大。

器も味がある駒鳥食堂さんや・・
麺の太さが特徴的な山口屋さんや・・
伊勢うどんの命名のきっかけのお店、ちとせさんなど・・

 

 

小久保商店のかつお節の取り扱い商品の中に「かつお厚削り」という
通常の花かつおよりも分厚く削られた削り節があります。
厚みの境界線は0.2mmと言われており、厚さ0.2mm以下を薄削り、0.2mm以上を厚削りと定義されています。

厚削りは伊勢うどんの出汁に使われる事が多く、この厚削りでしっかりと出汁をひいて伊勢うどんのつゆを作りたい!と密かに思っていたのです。

そして、ひょんな事からチャンスはやってきた。

 

ご近所さんでもあり、和食のことにめっぽう詳しい私たちのお出汁の先生藤原さんと、以前から勉強も兼ねてお出汁の飲み比べをしようと話していました。
やっと実現し、その流れでついに伊勢うどんのつゆを作ってみることに!

到着するなり、鞄から大量の昆布を取り出し
「これは羅臼、これは利尻、これは真昆布、これは根こんb・・」と、説明を始めます。
昆布だけで1時間は話せそうw

話はおいおい聞くとして、水につけてあった昆布出汁と厚削りをぐつぐつ火にかけて、お出汁をとる所からスタートです。

 

出汁の色と厚削りの大きさの違い、わかりますか?

 

5分ほど煮込んだところでお出汁の色がだんだんと変化してきました。
まだまだ煮込むので、その間に、そもそも伊勢うどんとは?というお話をさせていただきますね。

伊勢うどんの麺は太くてやわやわ・もちもちの食感。
他県の方からは「茹ですぎやん!」と思われるくらい柔らかい麺を、お出汁と醤油が香る少し甘めの濃いつゆをかけて頂きます。
もともとは、お伊勢参りの為に長旅をしてきた人がさっと食べられるように、また消化に良いように柔らかく作られたんだとか。
江戸時代のファストフードとも呼べる伊勢うどん。

以下、農林水産省のHP内にある「うちの郷土料理」より抜粋。

【昭和40年代初め頃、「伊勢うどん」を食べた有名な作詞家がラジオで話した『伊勢の珍しいうどんなので伊勢うどんというのがよいのでは』という趣旨の発言を受けて、昭和47年(1972年)に伊勢市麺類飲食業組合が統一名を決め、組合員向け献立表に記載してから以降とされている。
このように食べ方は古いものであるが、名前は新しい郷土料理という典型である。
太くて柔らかい麺と出汁の効いた黒いたれ(つゆ)が特徴的な「伊勢うどん」は、伊勢市民のソウルフードであり、スーパーマーケットなどでも売られ1年中食べられる。

昭和43年(1968年)にゆで麺の小袋化、たれの小袋化が開発されて、それまでは店で食べるものであった「伊勢うどん」が家庭で手軽に食べられるようになり、一気に家庭に広まった。】

私は昭和から平成になる直前に産まれたので、物心ついた時には「伊勢うどん」という呼び名でした。
もっと古くから呼ばれているものと思っていたので意外な発見。

伊勢周辺に住む人は、きっとお店で伊勢うどんを食べるより、スーパーで麺とつゆを買ってきて作る方が多いのです。
だからこそ、つゆ、手作りしてみたくなりました。

(ちなみに農林水産省のHP内に伊勢うどんのつゆのレシピが掲載されていましたが、つゆは20人分の分量になっていたので、作る際気を付けてね。笑)


 

厚削りを15分くらい煮込んだところで、お出汁にいい色がついてきました。
別の鍋でみりんとたまり醤油・・がなかったので、普通のお醤油と砂糖を合わせて、3分の2程度の量になるまで煮詰めていきます。

 

これを先ほどのじっくり煮出した出汁と合わせて完成です!

 

上記の通り、伊勢うどんの麺は茹で麺なのでお鍋に入れて温まったら食べられます。
でもちょっと長めに茹でて、更にやわやわの状態にしても美味しいのです。

 

自分達で作ったつゆの完成度を計るため、市販のつゆも3種類用意。

アツアツの麺に出来立てのつゆをかけて・・

それをぐるりと全体に絡ませて・・

ネギをのせたら完成!

初めて作った伊勢うどんのつゆは・・・美味しいー!!
はじめに出汁がふわっと香り、口の中に醤油とみりんの風味がしっかりと広がるつゆ。
色がちょっと薄いのはたまり醤油じゃなかったせいか。
少し甘味が強く、後味がさっぱりとして出汁の風味が弱かったので、ここを改善したらもっと美味しくなりそう!
しかし、初めて手作りしたつゆは、大満足の味でした。

他のつゆは、醤油風味が強かったり塩味が強かったり。
使用している出汁の素材がかつお節だけじゃなかったり、醤油の種類にこだわりがあったり・・食べ比べることで、各社の違いがよくわかります。

「伊勢うどん」と聞いて脳内に思い出されるあの味わい。
太くてもちっと柔らかいうどんと、甘辛い出汁香るつゆ。
白黒のコントラストとは裏腹に、食べるとほっとするあの味わい。

市販のつゆもお店の味も色々食べてみると、より好みの「伊勢うどん」に出逢えるかも。

私はとりあえず、もう1回つゆを手作りしてみます!

 

 

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