ホーム 04【知る】 「時間は止められる」志摩の海賊物語。水産加工で繋げる地域づくり。

「時間は止められる」志摩の海賊物語。水産加工で繋げる地域づくり。

海賊と聞くと野蛮で危ない。しかし、自由に生き何事も楽しそうにしているイメージもある。そんな海賊と呼ばれる人が三重県の志摩市にいる。その海賊の正体は石川隆将さん。有限会社伊勢志摩冷凍及び株式会社T&Tの代表取締役をされている。

石川さんは6年前から水産加工を始められ、今では三重県では数少ないHACCP対応の加工場を持つほどにまでに大きくされた。石川さんが水産加工を始められたきっかけは、生産者の苦悩を聞いた事。自然や生き物を相手にする生産者には様々な課題がある。例えば、手塩にかけて育てたものも形や大きさなどの見た目の悪いものはB品として安く取引されることや、売値の関係や市場の動きに合わせることで生産者が本当に美味しいと思う時期をずらしての出荷。漁で獲った魚の中でも、サイズの不揃いやその地域に馴染みがないなどの理由で廃棄や低い価格でしか取引されない未利用魚問題などがある。

楽しく解決!何事もポジティブに

そんな課題も、石川さんはなんでもポジティブに考え、面白おかしく解決に向かって行動し続けている。

市場に出回りにくいB品として扱われるものも加工すれば、見た目も関係なく美味しく消費者の元へ届けることが出来る。

捌いた鯛を加工している様子
綺麗な切り身に加工された鯛。

消費者の食べたい需要と生産者の本当に食べてもらいたい時期が違うことから、出荷する時期の問題。
例えば、牡蠣は冬が旬のイメージがあり、市場にもよく出回り、消費者の方も食べたくなる。そのため売値も冬が高くなる。なので地元の牡蠣漁師も冬に1番出荷する。しかし、牡蠣養殖漁師に一番美味しい時期はいつなのかと聞くと、3〜4月の春先だと言う。その時期になると冬に比べシーズン終わりなので、販売価格が落ちてしまう。生産者が本当に美味しく食べてもらいたい時期に消費者に食べてもらえないのが現状がある。そこで漁師さんがこの時期この瞬間が一番美味しい!みんなに食べてもらいたい!と言う状態の時に、加工し冷凍すればいつでも本当に美味しいものが消費者の元に届けられて、1番美味しいものを食べてもらえる。本当に美味しい時に急速冷凍をし加工したら、時を止め1番美味しいものを消費者の元へ届けることができるのだ。生産者にとっても消費者にとってもいいことしかない。

低価格での取引や廃棄などが問題の未利用魚は美味しく食べられるように加工して、みんなに美味しいと知ってもらう。美味しいと知ってもらえれば自然と需要ができ、捨てられることもなくなる。丘漁師組合などとの取り組みは見ているだけでも本当に楽しそう。

普段は海には関係ない仕事をしている人達が、海の課題に一緒に取り組む丘漁師組合。

モノではなく人で繋がる確かな絆

石川さん:「何事においても大事にしているのは人との繋がり。」

全国には加工業者でも、加工するための食材を作っている生産者のことを全く知らないことがほとんどのこと。石川さんのように実際に現地に出向いたり、自分が漁師として食材を取ってくるなんてことは、他にはなかなかないことだ。自分の強みは冷凍と加工技術だから、いろんな人と手を組みそれぞれの強みを生かして行けば、自分だけじゃできなかったことでも色んなことが出来るようになる。魚を育てるのが得意な養殖業者、加工したものや素材を調理して売ることが得意な飲食店など、たくさんの人と手を組めば組むだけ可能性は広がり、面白いことが自然と湧き出てくる。

 

加工が巻き起こす地域の活性化

石川さんは、もっと地域を盛り上げたい思いから加工を中心とした地域デザインを考える。加工は色んな産業の中立になる立場。そこからいろんな産業や人が手を組み合い地域が活性化していけばいい。伊勢志摩、鳥羽、南伊勢町の周辺は本当に美味しいものがいっぱいある。だからこそ、その強みで地域が活性化すればもっとよくなるはず。かといって、発展ばかりを目指す大量消費のための大量生産ではなく、海の限りある資源を守りつつ環境にも気を使っていく。石川さんのベースにある考え方の「自然と調和する」というのを常に大切にされている。
今石川さんが目指すのは生産者1人1人の加工品を作ること。
例えば、カレーでも牡蠣漁師の牡蠣カレーや鯛漁師の鯛カレー、ワカメ漁師のワカメカレーなど生産者1人1人の思いや物語や感動を消費者に伝えて、買い手はその人に惹かれて商品を購入する。こんなのが、お土産売り場に売っていたら買いたくなる。しかも、その人がどんな人なのかもっと知りたくなる。そして、色々な生産者の食材を集め、アクアパッツァなどの1つの料理にするなど面白そうな企みも。ここに地域の美味しいものが集まり、それを美味しく加工して消費者に届けていければ。この加工場がこの地域のセントラルキッチン的な立場になっていけばいいなと。

僕も生産者であり、加工業も営む親を見て育ってきたから分かるが、生産者の並ならぬ苦悩と加工から始まる可能性の広がり。石川さんがやっていることは、生産者や地域の可能性をどんどん広げていっていると感じる。何にも囚われることなく、どんなことも面白おかしく楽しむ姿はまるで海賊。

巨大なニベ!

これからも志摩の海賊物語が楽しみです。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で