ホーム 00世界の三重になるために!やってみた 鈴鹿市 人とまちが育むコーヒーイベント「KAMBE COFFEE STREET」(カンベ コーヒー ストリート)の挑戦 

鈴鹿市 人とまちが育むコーヒーイベント「KAMBE COFFEE STREET」(カンベ コーヒー ストリート)の挑戦 

旧丸川菓子舗をリノベした「喫茶ケセラセラ」の店内でお話を伺いました。

まちの風景は、誰かの想いで変わっていく

毎年3月、三重県鈴鹿市かんべで開催される「伊勢路に春を呼ぶまつり」といわれている龍光寺の「かんべの寝釈迦まつり」。昨年、この賑わいに新たな彩りを加えたのが「KAMBE COFFEE STREET」(カンベ コーヒー ストリート)だった。
「コーヒーを片手に、かんべのまち歩き」をコンセプトに、市内外のカフェやコーヒースタンドやお菓子屋、商店などが協力し、9つのエリアに分かれ、まち全体を舞台とするイベントとしてスタート。今年は3月8(土)・9日(日)に第二回が開催される。


企画を立ち上げたのは、このまちで2022年から「喫茶ケセラセラ」を営む、森由起さん。
当初はの仲間だけの小さな集まりとして構想していたが、それがまち全体を巻き込むイベントへと発展した。

この記事では、「喫茶ケセラセラ」オープンの経緯から、「KAMBE COFFEE STREET」誕生までの軌跡、地域との関わり、そして森さんが見据えるこれからの展開までを紹介する。

「かんべのまちを歩いてもらいたい」という想いが、どのように形になり、どこへ向かおうとしているのか。その物語をたどる。

店の中で森さん
旧丸川菓子舗をリノベした「喫茶ケセラセラ」の店内でインタビューは行われた

 

 


 

カフェ開業までの経緯

2021年2月 コロナ禍で外出もままならない日々が続く中で、森さんは自分の人生を見つめ直していた。結婚を機に鈴鹿に住むようになり、気づけば人生の半分をこのまちで過ごしている。子どもたちが成長し、「この子たちの故郷は鈴鹿なんだ」と実感したとき、「このまちで自分にできることは何か?」と考え始めた。

ちょうどそのころ、三重県の「警戒宣言」が解除された。飲食店を応援したくて、ひとりで食事に出かけるようになった。その時間が心地よく、「ひとりでゆっくりできる場所をつくりたい」という思いが生まれる。

それは、これまで何度も思い描いてきた「自分の店を持つ」という夢とつながった。そんなとき、鈴鹿市かんべで江戸末期より続く和菓子屋「丸川菓子舗」の旧店舗と出会うことになる。

「喫茶 ケセラセラ」の誕生

2022年2月22日 かんべの町に「喫茶ケセラセラ」が誕生した。

店舗の前で開店記念撮影
2022年2月22日 開店の日には子供たちも手伝いに駆けつけた

 

「かんべ女子会」から広がるつながり

イベントを通じて深まるまちとのつながり

開業から1年。日々の営業の中で、お客さんとの会話を通じて「かんべのまちの魅力」に気づいたという。そこで、お茶の勉強会やワイン会、JAZZライブなど、さまざまなイベントを企画し、少しずつまちとのつながりを深めていった。

加藤みきおさんの大道芸パフォーマンス
女性トランペッターの中村好江さんらを招いてのJAZZライブ
お茶の勉強会


「来年の寝釈迦まつりで何かをしたい」

そして翌年2023年3月11日、寝釈迦まつりではコロナ禍から屋台が復活。まちに活気が戻る様子に驚き、森さんは「来年の寝釈迦で何かしたい」と強く思ったという。もっとまちのことを知りたい——。そう考え、地元に住む女性客たちに声をかけ「かんべ女子会」を開いた。営業時間が終わった店内で各自が飲み物を持参。ひたすら語り合う時間を設け、かんべのまちの魅力や、寝釈迦まつりの魅力について、じっくりと耳を傾けた。

 

「KAMBE COFFEE STREET」が生まれるまで

新たなアイデアの始まり

2023年6月  かんべでカフェをしている仲間たちと、新しいイベントのアイデアを考え始めた。
「寝釈迦まつりに合わせて、コーヒーをテーマにした催しを開けないか?」伝統ある祭りに新たな要素を加えることへの不安もあったが、

「コーヒーだったら昔から並ぶ露店とかぶらないし、共存できるのでは?」

そう考え、かんべ女子会でこの構想を打ち明けた。好評だった。そこで「まち歩きを楽しむように、コーヒー屋を点在させるのはどうか?」というアイデアが浮かんだ。


計画が本格的に動き出す。

2023年10月  かんべの町の中にあるホワイトボックスコーヒー、築古ストック、そして喫茶ケセラセラ。三つの点在するカフェを拠点に、まちを歩きながらコーヒーを楽しむコンセプトが固まった。このイベントは「かんべ珈琲通り(KAMBE COFFEE STREET)」と名付けられた。

1週間後、仲間たちと実際にルートを歩いてみる。ケセラセラから本町商店街、龍光寺、ホワイトボックスコーヒー、築古ストック、市役所へと続く道のり。歩くことで、まちの魅力を再発見する機会にもなった。

仲間たちと実際にまち歩きを楽しんだ

まち歩き


「このルートを地図にできたら、もっと楽しんでもらえるかも」

まち歩きをより魅力的にするためのアイデアが、またひとつ生まれた。

2025年度版KAMBE COFFEE STREETのマップ
2025年度版KAMBE COFFEE STREETのマップ(表面)

森さんはこのマップには強いこだわりをもっている。「SNSの時代にこそ紙の媒体にこだわりたいと思いました。イベント当日だけでなく、手元に残してもらい、かんべに再訪してもらいたいんです。だからデザインにも紙質にもこだわりました」と話す。

ちなみにストリートマップとKAMBE COFFEE STREETのロゴデザインを制作したのは四日市市のギャラリー、「侶居」の日出氏だ。このロゴデザインはその他にもフラッグ、トートバックにも展開され、イベントのイメージに統一感をもたせている。

ロゴデザイン
ストリート感があるロゴデザイン

 

商店会との話し合い、そして広がる可能性

商店会のサポートを得る

2023年11月、森さんは商店街の会長に計画を相談した。

「こんな話、受け入れてもらえるのだろうか?」

伝統ある祭りに新参者が加わるのは簡単ではない。その難しさを理解しつつも、不安を抱えながら話を切り出した。

ところが、意外な展開が待っていた。

商店会側も、かつて寝釈迦まつりで甘酒の振る舞いを行っていたが、高齢化により継続が難しくなっていた。そこで、「KAMBE COFFEE STREET」を商店会としてサポートできないか、という提案が持ち上がる。

さらに、祭り期間中の車両進入禁止の道路を活用し、イベントエリアを設ける案も浮上。商店会が警察への許可申請を一括で行ってくれた。

「話がどんどん大きくなっていく……大丈夫だろうか?」

戸惑いながらも、期待が膨らんでいった。

「KAMBE COFFEE STREET」の構想は、想像以上の広がりを見せ始めていた。

 

KAMBE COFFEE STREET──地域に根ざす新たな挑戦

コーヒーとまちをつなぐ場

その後、仲間たちとの話し合いの中で「KAMBE COFFEE STREET」は、イベントエリアでコーヒーや焼菓子の店舗を並べ、離れた場所にある既存の商店や旅館などでも独自のイベントを開催する形で進められることになった。
まち全体を舞台に、かんべの魅力を感じられるイベントとして企画が進んだ。

 

2024年1月、開催まで2カ月を切ったころ、龍光寺の住職との面談が実現。まつりの歴史や今後の方向性について話しを聞いた。

龍光寺山門外観
かんべの寝釈迦まつりの会場となる龍光寺の山門。龍光寺は600年の歴史を持つ

 

 

広報活動が広がる

2024年2月、 最終的なマップも完成し、協賛店舗へマップを配り始めた途端、森さんは大きな不安に襲われたという。

「もし当日、お客さんが来なかったらどうしよう?」
「とにかく広報しなければ!

その不安を払拭するように、地元の高校放送部、FM局、新聞社やWEBメディアなどが次々と取材に訪れ、広報活動が広がっていった。

取材を受けるもりさん
テレビ局も取材に訪れ、当日のニュースにも取り上げられた

 


迎えた本番──熱気に包まれた「KAMBE COFFEE STREET

2024年3月9日、初開催

青空にはためくフラッグ

「伊勢路に春を呼ぶまつり」と称される「かんべの寝釈迦まつり」と「KAMBE COFFEE STREET」の同時開催の初日を迎えた。

例年通りの寒さ。朝の最低気温は氷点下。それでも、そんな冷たい空気をものともせず、人々は次々と神戸のまちへと足を運んだ。

コーヒーカップの写真
市内外からたくさんのコーヒー屋さんが集まった


イベントエリアに広がるコーヒーの香り、手にした温かいカップを頬に当てる来場者たちの安堵の表情。店舗の前には長蛇の列ができ、どのブースも活気に満ちていた。

「完売しました!」

各店舗から続々と報告が舞い込む。どの店も、どの店も、想定を超える反響で、次々と商品が売り切れていった。

「本当にこんなに人が来るなんて……」

出店者たちの顔には、驚きと喜びが入り混じっていた。自分を信じて参加してくれた出店者たちが、この光景を目の当たりにしながら笑顔を見せる。その姿を見た瞬間、森さんはこみ上げる感情を抑えきれなかった。

「やってよかった。」

かんべの町に、新しい風が吹いた瞬間だった。

集合写真
イベントが終わりみんなで撮った集合写真

 


そして、2025年。 続いていく未来

 

「KAMBE COFFEE STREET」は継続的な取り組みへ

第1回の成功を経て、「KAMBE COFFEE STREET」は、地域に根付いた継続的な取り組みへと進化しつつある。そのきっかけの一つとなったのが、今年のメイン会場である慎福寺とのつながりだ。

住職との対話を経て、慎福寺で毎月21日に開かれる御影供法要(お大師さまの日)に合わせて開かれる「わらしべ長者市」への参加が決定した。これにより、「KAMBE COFFEE STREET」の出店者たちは、かんべの寝釈迦まつりが終わった後も、この寺の境内の一角で毎月小さなマルシェを開くことになった。単発のイベントではなく、まちの暮らしに溶け込む形で、KAMBE COFFEE STREETの定期開催が実現する。

小さなマルシェの模様
今年2月21日に開かれた「小さなマルシェin慎福寺」
WHITE CANVAS COFFEEの白川さん

 

さらに、今回のKAMBE COFFEE STREETの運営には「WHITE CANVAS COFFEE」の白川さんをはじめとする20代の若い世代の人たちが自主的に企画・運営のサポートをかってくれた。彼らも加わり、今後さらにイベントを発展させていけることが期待されている。

「でもね、若い人たちにKAMBE COFFEE STREETの運営を押し付けたりはしたくないですよ。若い人には自由に未来を描いてほしいんです。学校の文化祭のように、世代交代しながら継続して続いていく仕組みがあればいいと思っています。」

さらに、森さんは自身が空き店舗を活用し「喫茶ケセラセラ」を開いたように、若い世代と地域とのマッチングも真剣に考えている。

 

インタビュー中のもりさん
これからのKAMBE COFFEE STREETについて語る森さん

 

「かんべのまちを歩いてもらいたい。まちの魅力をもっと知ってほしい

そんな想いを胸に、「KAMBE COFFEE STREET」と森さんはこれからも挑戦を続けていく。

 

 

 


KAMBE COFFEE STREET

詳細は公式SNSをチェック。
■KAMBE COFFEE STREET公式Instagram
https://www.instagram.com/kambecoffeestreet/

■KAMBE COFFEE STREETの会場となる慎福寺はこちら

https://maps.app.goo.gl/HffZnPSs83qEHBSCA

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