もしあなたが、世界で唯一の缶詰を作れるとしたら何を作りますか?
三重県の紀伊半島にある紀北町。
紀伊長島はカツオなどの漁が昔から盛んなレトロな港町。
まちを歩けば、生節などの加工場からはカツオを燻すよい香りがする。
道行く漁師のお母ちゃんのスクーターのかごには、バケツにまるごと、近海で獲れた小型のカツオが入っている。
少子高齢化、人口減少の進む地域でもあり空き家や空き店舗も増えている。
そんな紀北町に缶詰工場「Can-Dume Lab.」ができた。
外観はまるでITベンチャーのよう。
それもそのはず。
運営しているのは、紀北町のデザイン会社「dgreen」。
デザインや企画、WEB制作やマーケティングなども手掛けている。
社長は地元出身の東 城(ひがしじょう)さん。
漁師の息子として生まれ、学校に行くのが苦手で、学校に行かないのなら仕事を手伝えと言われ、何万匹もの魚をさばいているうちに魚を見るのもいやになった子ども時代。
その後東京へ、そしてロンドンに留学。そこでWEBの世界に出会う。
当時はインターネット黎明期。
帰国後は津市の広告代理店で働き、紀北町で起業。


dgreenといえば、地元の魚をつかった離乳食「mogcook(モグック)」の製造やオンライン販売も行っていて、地方と都市を地元産品でつなぐ仕組みもデザインしている。
東さんに聞いてみた。
なぜ缶詰なのだろう?
東さん:地元に缶詰工場がひとつもなくなってしまったんです。それもあってなのですが、思い付きは本当になんとなく・・。缶詰が『来る』んじゃないかって、5年くらい前から社内のパートナーにも相談していたんです。mogcockの加工場を新しくする必要も出てきたこともあり、ならば缶詰が作れる工場にしようと。
工場に入るとまるでLabのような雰囲気で専門的な装置がたくさん。
この設備だと極小ロットでも発注できるそう。
例えばノベルティや、地域の料理人が地元食材を使った地域性の高い商品なども生産できる。
東さん:港町なので漁師汁も試作しました。ひとつの缶詰には味噌汁、もうひとつは魚などの具材を入れて両方とも湯煎して、お椀で合わせたら私たちが普段食べているできたての漁師汁ができます。あとスイーツもできるんです。
東さん:何ができるか、いろいろ考えると楽しいですよ。でも身体はひとつしかないから、時間が足りない(笑)。
さらにクラフトビールづくりの勉強にも通っているという東さん。
東紀州は魚だけでなく、柑橘類の生産も盛んな地域。
食材の産地が、新しい時代の価値観に合わせて、またおもしろくなってきそう。
レトルトパウチが多いなか、どこかレトロで温かみのある缶詰。
地域性のある缶詰として、また災害時にも活用できる缶詰は、本当にこれから時代に『来る』のかも知れません。
Can-Dume Lab.
北牟婁郡紀北町長島1189-67
dgreen
北牟婁郡紀北町東長島2399-1
TEL 0597-47-2337
HP https://www.dgreen.jp
FB https://www.facebook.com/dgreen.jp
mogcook
HP https://mogcook.com/
IG https://www.instagram.com/mogcook/
おまけ「カールについて」
昔なつかしのスナック菓子、カール。
歯の間にはさまるけど、美味しいカール。
2017年夏より滋賀県以西の西日本地域のみでの販売となりました。
残念ながら三重県での販売も終了・・。
と思いきや、紀勢自動車道「奥伊勢PA(上り)」にあります!
カール好きの方は、東紀州などにドライブの際は要チェックです。
(私は、うすあじ派)

村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事