『2歳で1度読んでもらった絵本を丸暗記、4歳で中国語の新聞を読んでいた』
驚きのエピソードを持つハリウッド女優が今、三重県にいる。
10/2公開のアメリカ映画「フェアウェル」ご出演の水原碧衣(みずはらあおい)さんである。
ゴールデングローブ賞に受賞している映画「フェアウェル」
物語はアメリカで暮らす主人公と家族が、末期がんを患った中国の祖母に病状を悟られないよう、ウソの結婚式を口実に帰郷するというヒューマンドラマ。
監督のルル・ワン氏が経験した実話に基づくお話で、4館限定公開後に人気を博し、全米891館まで規模が拡大。興行収入20億円を突破した話題作。オバマ前米大統領もツイッターで、2019年のお気に入り映画として紹介している。
本作品の中で水原さんは「言葉がまったく通じない日本人花嫁」をコミカルに演じ、話題となった。
そんな水原さんが三重にいる理由は?
水原:幼い頃から色んなところを転々としているのですが、高校を卒業した後、親が仕事の関係で桑名に移住しました。なので世界中どこで仕事をしても帰ってくる場所は桑名なんです。
幼い頃から女優になる夢を抱き、俳優としてのキャリアを積まれている水原さん。
京都大学法学部卒業後に早稲田大学法科大学院へ進学。世界有数の映画関係専門大学である北京電影学院の演劇科に留学後、史上初留学生でありながら首席卒業という快挙を果たした異色な経歴の持ち主でもある。
水原:小さい頃から映画が大好きで、同じを映画を何回も何回も観ては、表情や台詞を数え切れないくらい真似をしていました。自分も憧れのあの世界に入れたらどんなにいいだろうと、夢を抱いていました。ただ厳格な家だったので、京都大学へ進学する道を選びました。大学に進んでからも諦め切れず、劇団に入ったり、映画鑑賞や映画製作、社交ダンスやテコンドーなどのサークルを10個ほど掛け持ちしていました。
大学院に進んでからは東京で芸能事務所を探したが、高学歴タレントとしての依頼が多く、思い切って休学した上、超名門である中国の北京電影学院 演劇科の留学を決めた。
水原:中国へ渡った時はけじめをつける気持ちでした。全力で演技と向き合って、悔いを残すことなく次に進もうって。朝は誰よりも早く教室へ行って発声や発音の練習、夜は誰よりも遅くまでいて演技の研究に没頭していました。とにかく半年間は大学の門を一度も出たことないくらいに演技のことしか頭になかったです。
その甲斐あって、演劇科に所属する100名のうち留学生は4名という環境下、首席で卒業。その後、中国のテレビドラマやCMに出演し、2016年公開の映画「海を越えた愛」では主役に抜擢された。ネイティブ中国人よりも正しい中国語を使える稀有な存在として、中国語吹き替えのオファーも多い。
実は水原さんは、世界人口の上位2%のIQを持つ人だけが加入できる国際組織「メンサ」の会員でもある。冒頭のエピソードに加え、小学4年生の頃に友人たちと雪だるまを作っていて、なぜか彼女だけがロダンの考える人を造形していたという非凡な資質を感じさせる逸話も飛び出すから面白い。
――ところで、今回の映画フェアウェルに出演することになった経緯は?
水原:北京に滞在していた時、エージェントを始めたばかりという男性から連絡があったんです。『26歳・日本人』この条件に合う役のオーディションがあるから来てくれと。怪し過ぎるし、帰国する日だったので断ったのですが、もう最寄り駅にいるからと押し切られてしまって、訳も分からずにオーディション会場へと連れていかれ、結婚式のスピーチをさせられました。そうしたら、キャスティングディレクターが「見たか!これが演技だ!」と飛び上がって絶賛してくれました。正直私はその反応に唖然としていました。なぜならば今までのオーディションの中で一番、ただ素の自分を出しただけなんです(笑)結局何の作品かわからずに、そのまま日本へ帰国しました。
――怪しすぎる…そのエージェントは何が目的だったのでしょうね
水原:単純に”日本人というものを見てみたかった”という理由だったみたいです。「生まれてこの方日本人というものを見たことないから一目見たかった」と仰っていました(笑)
――その後の展開は?
水原:はい。後日新宿で友人と食事をしている時、エージェントから「今から監督がfacetimeで最終オーディションをしたいと言っている」と連絡が入りました。急すぎて今は無理と伝えたのですが、「無理な理由を映像で撮って送ってくれ」と言われました。仕方ないのでお手洗いに籠り、自撮り棒で映像を撮って送りました。それでなぜか合格をもらいました。どんな作品なのか知ったのはずっと先でした。
――すごい。それがハリウッド映画とは(笑)
因みにだが、世界を拠点に活動している水原さんが、桑名で唯一長くお付き合いがあるのは歯医者。実はその繋がりで存在が市長へと伝わり、三重テレビの出演が決まった。そして番組をきっかけにイオンシネマ桑名でのフェアウェル公開も決まった。
水原:いつも丁寧に対処してくださるのに、虫歯作って申し訳ないという気持ちがあって、治療の時にパンフレットを持って行ったんです。先生に治してもらった歯で出ましたって(笑)
メンサ・高学歴・ハリウッド女優と面食らってしまうキャリアが並ぶ水原さんだが、とてもチャーミングで、なんというか、いつの間にかペースにハマってしまう魅力のある不思議な女性なのだ。
10月2日から全国公開されるフェアウェル。そして水原碧衣さんの今後の活躍が楽しみで仕方ない。
取材日 2020.8.14
◆映画「フェアウェル」公式サイト
hp http://farewell-movie.com/
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事