昭和、平成、そして令和。
僕たちは歳を重ね、時代の変化を感じながら、そして今を過ごしています。
「おばけ屋敷みたい!」
「トトロの世界に出てきそうだよね!」
小学校の頃から前を通るたびに胸を高まらせて友達と笑い合った思い出の場所「旧倭村役場」。津市白山町に暮らす倉田麻里さん(以下、倉田さん)の記憶に刻まれている歴石的建造物は、今も当時と同じ場所に在り続けていました。
迷いと決断 競売にかけられた旧倭村役場
倭村(やまとむら)は、三重県一志郡にあった村。現在の津市白山町の北部にあたります。山々に囲まれた土地には、見渡す限りの田園が広がります。そこにひときわ目立つ木造2階建てのレトロな建物、それが旧倭村役場です。
戦前の昭和11年、村人たちが力を合わせて建てられたという建物は、昭和平成の市町村合併によって役場としての機能も失い、時の流れとともに老朽化が進み続けました。そして、2020年4月にYahoo!オークションで売り出されることに。
公売期間中には続々と県外ナンバーの車が建物を訪れ、その様子を眺め続けた倉田さん。約3ヶ月間の迷い続け・・・そして、決断します。
「この素敵な建物は、地域住民の宝物。地域の力で何とか守っていきたい。」
出資協力者も得て自らオークションに参加し、運良く旧倭村役場を落札します。倉田さんを筆頭にした地元住民の思いによって、旧倭村役場は地域に残りました。
ひとまず安堵したものの、これから購入費用を数年かけて返済をしながら、修繕や運営体制をどうするのかなど、課題は山積み。
令和の時代、昭和から引き継がれた建物はこれから一体どのように活用されていくのか、倉田さんにお聞きしました。
「全世代に学びと交流の場」旧倭村役場の未来の姿を思い描く
旧倭村役場活用プロジェクト発起人 倉田麻里(くらたまり)さん
NPO法人イカオ・アコ理事
ゲストハウスイロンゴ代表
Landing in HAKUSAN代表
津市白山町(倭地区)で生まれ育ち、大学院を卒業後、2008年から環境NGOイカオ・アコの現地駐在員として、フィリピンのネグロス島に9年間駐在。現地の住民と共に、みんなの生活と環境を守るマングローブの植林活動に取り組む。2017年に地元津市白山町に家族と共にUターンし、2019年にゲストハウスイロンゴをオープン。同年Landing in HAKUSANを立ち上げ、代表として活動。Think Global, Act Localの精神で、国際的な視点を持ちながら、地域で人と環境が調和する持続的社会の実現ために活動している。
「少子高齢化する地域を何とか守っていきたい。そのためには、都会に住む若者や都会に出ていこうとする地元の子供たちに、この地域の素晴らしさを発信するための拠点が必要です。」
建物からは老若男女の幅広い世代の笑い声が漏れ聞こえてくる、倉田さんはそんな旧倭村役場を思い描きます。
倉田さんご夫妻が運営するゲストハウスイロンゴでは、草木染や干し芋づくり、堆肥づくりなど様々なワークショップを開催してきました。もともと、アイデアマンな倉田さん。環境NGOイカオ・アコでも奇抜なアイデアで国内外の地域社会に関わる問題を解決するプロジェクトを率先してきました。
木造二階建てのレトロな建物は、さまざまな作家さんの創作意欲を掻き立てる素敵な空間。作家さんのシェアアトリエ設置を予定されています。
他にも
- おすすめの本をシェアできる図書館
- 村の歴史を伝える展示スペース
- ご近所さんが自然に集まるセルフカフェ
などなど。旧倭村役場の活用のアイデアは溢れています。来年(令和3年)の4月の開設を目指しています。
クラファン支援受付中。旧倭村役場の取り組みを自分ごとにする。
ここからは筆者の言葉として、書かせていただきます。僕は三重県鳥羽市の鳥羽なかまちのクボクリを拠点に活動しています。
明治や大正といった建物が残る町。レンタルオフィスをお借りして約1年半を過ごす中だけでも、そんな時代を越えて現存する建造物が解体され更地となった光景に出会いました。とても複雑で様々な事情も絡み合う空家の問題。そんな町の変化に触れた時、驚きと一抹の寂しさやもどかしさを感じてしまうのは僕だけではないはずです。
もし、倉田さんが落札されていなかったら旧倭村役場はどうなっていたのでしょう?
今回の旧倭村役場の購入のお話を知った際、身近に目の当たりにしてきた町の変化と重なる部分が僕の中にありました。
地域に根づき、暮らし、思いの元に旧倭村役場を購入する決断をされた倉田さん。そして、NPOでの活動やゲストハウス運営、そして小学校へこれから通う2児の母でもある倉田さんを応援したい。少額ではありますが僕も支援をさせていただきました。
鳥羽なかまちからは車で約1時間30分の場所で今まさに進んでいるプロジェクトに少しでも関わり、自分ごとのように思えること。それはとても光栄なことであり、それがクラウドファンディングの良さだと思っています。
旧倭村役場のこれからの未来が気になる方は、9月27日まで実施されているクラウドファンディングページもチェックしてみてください。そして、ぜひご支援を。
支援ページは下記の画像をクリック👇
倉田さんからのメッセージ「フィリピンからUターン、二児のママが旧村役場を買った本当の理由」動画
濱地雄一朗。南伊勢生まれの伊勢育ち。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごす。探求を続けると生まれた疑問、それが「何で◯◯が知られていないんだ」ということ。それなら、自分でも伝えていくことだと記者活動を開始。専門は物産と観光、アクティビティ体験系も好物。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。