真珠を食べるドレッシーな豚?!
パールポーク。
そんな高貴な名を持つ豚が三重県にいるらしい。その豚が本当に真珠を食べているなら、はっきり言って羨ましいではないか!!豚に真珠というけれど、一体どんな味の特徴があるのだろう。
調べていくと、メインディッシュにパールポークを起用しているフレンチの名店に行き着いた。しかも噂ではその豚で、まかないのかつ丼まで作っているとか。
真珠を食べているパールポーク。パールポークのメインディッシュ。フレンチシェフによるまかないのかつ丼。きっとひねられたかつ丼に違いない。もう色々と気になる!!
早速レストランに連絡し、シェフとコンタクトをとった。
「シェフ、パールポークのメインディッシュとまかないのかつ丼を食べさせてください」
文通のようなまかないコミュニケーション
訪れたのは、伊勢神宮の天照大御神の食事を司る神様が祀られた外宮の近くに佇む、言わずと知れたフレンチの名店「Bon vivant(ボンヴィヴァン)」
食材の宝庫として歴史を育んできた伊勢で、愛され続けるレストランだ。
今回の願いを快諾くださったのが、オーナーシェフの河瀬 毅さん。
ボンヴィヴァンには、毎朝河瀬さんがまかないを振る舞いスタッフと食事を囲む習慣がある。その時間を通して、料理の味付けや食材への向き合い方などの基礎をみせている。
河瀬さん:出来る子は僕の行動をよく見ています。塩加減から片付けの手順まで見て覚えていますね。本質は言葉ではなく、自らの姿勢を見せるしかないと思っています。
スタッフ:朝はシェフがまかないを作って下さいます。味や基本を教えてもらって、夕方にはスタッフが交代でまかないを作るんです。
まるで文通のようなまかないによって、スタッフが育まれているボンヴィヴァン。
(まかないをいただけるのが益々楽しみになってきた)
河瀬さん:それでね、リクエストもらっていたかつ丼なのだけどね、今日はかつ丼ではなく、カツカレーにしました。
(わぉ、どういうことだろう)
河瀬さん:僕も考えたんです。今回ひねったかつ丼を期待されているなと。でもね、僕はまかないで創作はやらないんです。まかないは従業員への指導も兼ねています。つまりはひねらずに、かつ丼ならかつ丼の、オムライスならオムライスのちゃんとした美味しさをまず伝えたいんです。
(なるほど)
河瀬さん:今だったらシャリシャリの新玉ねぎと揚げたてのカツ。ほうれん草も今、葉が厚いから、綺麗な緑のピュレにして、真緑のカツカレーなんてどうかなと。普段のまかないでよくやるんです。
(え、真緑?!おもしろい)
河瀬さん:カレーは当然寝かさないといけないから二日前から仕込んでいます。まかないといえども手は抜きません。僕も師匠から学びました。
(シェフの見えないところへのこだわりが視えてきた)
真緑カツカレーはのちの楽しみとして、シェフ、なぜパールポークを選んだのか俄然気になってきました!!
料理に地元食材を使う哲学
伊勢志摩の真珠を育てたアコヤ貝。その微粉末(貝殻と真珠の成分はほぼ同じ)を加えた飼料にて育てられているパールポークは、適度なさしが入っており、柔らかく、ほのかな甘みがあるのが特徴のようだ。
ボンヴィヴァンでは、ランチ・ディナーともにメインディッシュに取り入れている。シェフにパールポークを選んだ理由を尋ねた。
河瀬さん:噛み締めるうまみがパールポークはずば抜けています。少し弾力があって噛み締めると筋の部分から肉汁が出て、旨みと甘みが味わえるんです。筋が入り混じるビジュアルもきれいです。霜降り感というよりはもっちりした感じですね。
河瀬さん:美味しい店は溢れているので、どこで抜きに出るかといったら食材なんです。例えば、回り道してでも地元の野菜を買いに行く。このひと手間をするかしないかです。
河瀬さん:基本を大事にする。スタッフにまかないを食べてもらうスタンスにも通じています。それが生産者から信頼を得て強い支えになる。自分自身にどれだけ正直に生きるか。
視えてきた、料理人と生産者相互のリスペクト。生産者たちの頑張りのおかげで、地元の食材を使い、地産地消にこだわる料理人が増え、繋がりが強固になりつつあるという。
なるほど、この信頼の循環が伊勢志摩地域の食のブランドを築いてきたのか。そんなシェフが目指しているのはどんな料理なのか尋ねた。
河瀬さん:身体中に染み渡る滋味深い料理、つまり大事に作られたんだなと思ってもらえる料理を目指しています。
こちらがメインディッシュとなっているパールポーク。
シェフは肩ロースしか使わない。なぜなら肩ロースは赤身と脂肪が混じり合い、様々な味や食感を楽しめる特徴があるからだ。
ナイフを入れてひと口。
噛み締める。
口の中に旨みが溢れる。
ほんのり甘みのある脂ときめが細かな赤身が、真珠の似合う上品な様子を想像させる。筋の周りの味わいが特にいい。噛み締めながら、部位によって変わる複雑な食感。喉を過ぎた後も旨みがちゃんと口の中に残るのだ。
この料理とゆっくり時間を過ごしたくなる。
マジで緑のカツカレー!!
続いて出してくださった真緑のカツカレー。丼は四日市の萬古焼。
「本当に緑じゃないですか! しかもどんぶり。」思わず声が出てしまう。
細かなパン粉を纏い、ほわっと優しく揚がるカツの姿を見ていた私は、実は「待て」と言われたワンコの気持ちになっていたのだ。
スタッフも大好きだと言っていた「カツカレー」。まずカレーとライスを食す。ルーの主張が強くない。それは一般的な辛さや香りを感じる味ではなく、手間をかけた時間を、自然に感じさせ落ち着かせる味。
だからこそしっかりカツが引き立つ。ここでも肩ロースの味わいが長く続く。しみじみとかみしめたくなる時間。目に見えない背景が美味しさを引き出してくれる。
食材に対する妥協のない姿勢と目に見えない努力への敬意
食材の宝庫三重県。ここには恵まれた山と海がある。そして食を豊かにする生産者と料理人がいる。この取材で解ったことは、誰しもが簡単に最高の食材を手に入れられるわけではなく、食材に対する姿勢が大切であるということ。
シェフは産地への距離が近いだけではなく、それらを入手するノウハウだと話してくれた。
河瀬さん:生産者と信頼関係を築いているかです。
地域の食の魅力を知り、生産地に足を運ぶ料理人は、その魅力を料理で表現する。つまり生産者と消費者とを繋ぐ中間役。だからこそ料理に黙想が伴うのだ。
本質は目には見えない。
正直さを貫き、見えない闘いを積み重ねて築かれる敬意が、料理を通じて喜びを与えてくれるのであろう。丁寧に作られたその一皿は言葉以上に深く、私に響いた。
~今回河瀬シェフは地元のパールポークという豚肉を使って、その地の魅力を表現していました。三重県各地には18のブランド豚があります。各地の料理人が各地のブランド豚でその地の魅力を表現されていることを想像すると、もっともっと巡ってみたくなる自分がいました~
photo / y_imura
三重のブランド豚
さくらポーク
生産地域:菰野町、いなべ市、四日市市、亀山市、鈴鹿市、津市
こだわりや特徴:飼料は良質な植物性原料を使用し、加熱して給与することで殺菌、消化しやすくしています。また、鈴鹿山麓と養老山麓のおいしい空気と良質な自然水を与えて育てています。
三重クリーンポーク
生産地域:菰野町、亀山市
こだわりや特徴:生産者が同じ三元豚を育て、統一した独自配合飼料を食べさせることによって「三重クリーンポーク」を生産しています。
伊勢うまし豚
生産地域:四日市市、亀山市、津市、松阪市、玉城町、伊勢市
こだわりや特徴:「木酢酸」、「アマニ油」三重県産の柑橘である「新姫」の皮を与えることで、豚肉特有の臭みが抑えられ、豊かなうまみとコク、香りを味わえる肉質となっています。
菰錦豚
生産地域:菰野町
こだわりや特徴:酒粕・おからを加えた自社オリジナル指定配合の飼料を食べさせています。肉質が締まり、味が最もおいしくなるタイミングまで育ててます。
夢美豚
生産地域:四日市市
こだわりや特徴:四日市畜産公社へ出荷する生産者によって構成されている四P会の一員として統一した飼料で育てています。
幻泉山﨑豚
生産地域:鈴鹿市
こだわりや特徴:豚に温泉水を飲ませて育てています。
作豚(ZAKUBUTA)
生産地域:鈴鹿市
こだわりや特徴:幻泉山﨑豚の中でえりすぐりの豚にだけ、日本酒・作の酒粕を食べさせて育てています。
心からありが豚
生産地域:鈴鹿市
こだわりや特徴:鈴鹿山麓の天然水を飲ませ、HACCP・JGAP認証を取得した飼養管理のもと、病気になりにくい健康な豚を育てています。
伊勢美稲豚
生産地域:津市
こだわりや特徴:仕上飼料に三重県産飼料米を15~17%使用しています。
伊勢の国健康豚
生産地域:津市
こだわりや特徴:飼料米・オオバコ・スイカズラ・ベニバナ等の漢方生薬をエサに入れ臭みのない豚肉をつくっています。
はなまるぽーく
生産地域:津市
こだわりや特徴:3つの品種を掛け合わせた三元豚を育て、それぞれの特性を生かし、きめと締まりをよくし更にコクとうまみを生み出しました。
頑固親父の豚
生産地域:津市
こだわりや特徴:家族経営で、環境やエサ、水にこだわり、地域環境へも配慮した中で豚を育てています。
松阪豚・松阪豚プレミアム
生産地域:松阪市
こだわりや特徴:独自の飼料を食べさせ、通常よりも長い間豚を育てています。
忍茶豚
生産地域:伊賀市
こだわりや特徴:飼料として、お茶のエキスを入れて育てています 。
パールポーク
生産地域:志摩市
こだわりや特徴:独自の指定配合飼料にアコヤ貝の粉末を混ぜて食べさせています。 また、徹底した衛生管理に取り組んでいます。
志摩あおさ豚
生産地域:志摩市
こだわりや特徴:飼料にあおさを混ぜて育てています。
玉城豚
生産地域:玉城町
こだわりや特徴:玉城町養豚組合による独自飼料を使用して育てた豚を、「玉城豚」としてアスピア玉城で販売しています。
紀州岩清水豚
生産地域:南牟婁郡御浜町
こだわりや特徴:穀物だけを飼料として使用し、水は山奥で湧き出る岩清水のみを使用しています。
詳しくは「もぐもぐみえ 豚」のホームページをご覧ください。
HP http://mie.lin.gr.jp/mog2/pork.html
【撮影協力】
ボンヴィヴァン
三重県伊勢市本町20-24
hp http://bonvivant1983.com/
【タイアップ】
三重県 農林水産部 畜産課 畜産振興班
三重県津市広明町13番地
tel 059-224-2541
hp https://www.pref.mie.lg.jp/TIKUSAN/index.htm
一般社団法人 三重県畜産協会
三重県津市桜橋1丁目649番地
tel 059-213-7512
hp http://mie.lin.gr.jp
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事