ホーム 04【知る】 三重県明和町の商品開発はまるで実験場。事業者が主役のブランディングとは?

三重県明和町の商品開発はまるで実験場。事業者が主役のブランディングとは?

場所は明和町商工会2階会議室。

明和町では今、明和観光商社(以下、明和DMO)が主体となって、斎宮をひとつのシンボルとした商品開発が進んでいます。

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うなぎのまつもとの”うなぎしぐれ煮”

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明和DMO商品開発担当の髙村さん
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伊勢亀鈴会 鈴木さん

伊勢ひじきのうどんや豆ごはん、うなぎやきゅうりの佃煮など。それら商品を取り囲んで試食をする人たち。試食を終えると、今度は意見や感想を伝え合います。

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商品パッケージや内容量のちがいを説明(松幸農産の堀口さん)
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三重大生も率直な意見や感想を共有
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笑いも起こるそんな雰囲気(松幸農産の寺谷さん)
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商品の課題も見えてきたり
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そんな時は、先生が少し助け舟

進行役の先生が出揃った意見や課題を取りまとめて、再び問いを投げかけます。

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また会話のキャッチボールが生まれました

幅広い世代の参加者から出る意見は様々。中にはそんな視点もあるのかと感心する場面も。その様子は、まるで何かの実験をしているラボのよう。

地域の資源を活用して、ネーミングやパッケージを考えて商品を開発していくことを従来のブランディングとすると、明和町での取り組みは少し様子が違うようです。一体何が違うのでしょう。

専門家や参加者への取材を通して見えてきた、まだカタチがないモノ。明確に表現ができなくても何かワクワクしてくるような、そんな商品開発の場をリポートしていきます。

まずは明和ブランド商品開発の参加者で、漁師の若者に話を伺いました。

募る危機感が背中を押す 商品開発は挑戦の場

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燻製の良い香りが鼻をくすぐります

山中 謙志郎さん(以下、山中さん)が商品開発の場に持ち込んだのは、明和町産の牡蠣を使った燻製です。

山中さん「すごく刺激的ですね。」

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明和町の漁師 山中さん

山中さん「参加者同士のアイデアを出し合っていく、積極的な気持ちが伝わってきます。仲間がいることで自分も頑張れます。」

山中さんは明和ブランド商品開発の場を刺激的と表現します。

明和DMOの前身であるDMO研究会で意気投合した燻製職人と知り合い、タッグを組んで生まれたのが今回の商品です。

明和ブランド商品開発は明和DMOが取りまとめをしています。明和DMOに関しての詳細は過去の記事をご参照ください。

関連リンク 三重県明和町にできた観光商社(DMO)。地域の扉を開く次世代体験型観光が楽しい。

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試食した参加者の「おいしー!」の声に、山中さんは手応えを感じていました

明和町で生まれ、漁師の家庭で育った山中さん。実は現在、牡蠣養殖の許可を目指している最中です。普段は牡蠣の試験養殖に加え、漁の手伝いや介護の仕事もされています。そんな中で、明和ブランド商品開発にも携わることはとても大変なことのように思います。

山中さん「良い牡蠣を作れたとしても、売れなかったらどうするか。常に危機感を持っています。」

牡蠣養殖を志すきっかけとなったのが、鳥羽市浦村のアサリ養殖研究をしている漁師グループ。祖父の代から続く漁でアサリが獲れなくなり、巡り会った漁師さんたちは牡蠣養殖を営んでいました。

出会ってから数カ月後、山中さんは漁師さんの誘いを受けて牡蠣養殖の現場で働いていました。そこで牡蠣養殖への関心が深まりながら、漁師さんが繰り返し話してくれていたのが、6次産業化の必要性でした。

山中さん「昔は支所へ行ったら、いつもおばちゃんがおったんですけどね。」

今は高齢化も進み、地元漁協の支所も閉まってしまいました。地元の変化を肌で感じ、募っていく危機感。それが山中さんの背中を強く押していました。

山中さん「明和ブランド商品開発では、パッケージや分量、加工技術と課題も山積みで、もちろん不安もあります。でもやっていくしかないですよ。」

そう話す山中さん。しかし笑顔で話を続けました。

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山中さん「自分もそんな強い人間じゃないんで、そこに誰かがいてくれるから頑張れます。みんなで肩を組んでやっていきたいです。」

大都市圏をマーケットとして、事業者とバイヤー、そして消費者をつなぐ

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明和ブランド商品開発講師 金子 和夫さん
金子和夫事務所株式会社 代表取締役。
専門は官公庁・地方自治体:小売商業政策、中心市街地活性化、商店街活性化、まちづくり、地域マーケティング、地域ブランド、特産品開発など。また、小売の視点によるマーケティング戦略、関係者参加型ワークショップの企画と運営を得意としている。

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金子先生「地域のブランディングが今、見直される時期にきています。」

これまで多くの自治体が取り組んできた商品開発。いわば事業者の思いを専門家がサポートして作り上げることに注力してきました。商品の売り先がない、あったとしても地域の中でとどまってしまっているとも話します。

金子先生「例えば、良い商品を作ったとしても、販路を広げたい場合は適切な価格設定ができていないといけません。」

販売先の卸業者や小売業者のマージンが含まれた価格設定ができていないことで、販路が広げられないという事例も多いそうです。明和ブランド商品開発では、金子先生が具体的な出口を示しています。

それは、明確な売り先です。その方法として、金子先生は流通業のバイヤーに注目しています。

金子先生「今度は東京のオイシックスのバイヤーさんに明和町へ来てもらいます。」

都市部のバイヤーを呼び、研修会の実施や事業者の元を訪れて商品の改善に取り組む。そうして開発した商品をお店でテストマーケティングを実施していきますと、具体的な道筋を先生は示します。

日本が人口減少社会を迎え、明和町に限らずローカルなマーケットはこれから縮小していきます。その一方で、成長していくマーケットが大都市圏か海外。明和ブランド開発では、大都市圏をマーケットと捉えています。

金子先生「大都市圏では商品に求められる品質がより高くなります。そのため、事業者がまとまり、商品の質を高めるとともに、品質管理や検査体制を整えてブランドの信頼感を高める必要があります。」

金子先生は地域の事業者とバイヤー、そして消費者を繋いでいくプロセスのサポートをしています。そうして、大都市圏の基準を満たす商品が出来上がっていくと話します。

事業者同士で生まれるモノ 福井県大野市での成功事例

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場面は冒頭の試食風景に戻ります。

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香りを確認する 旭酒造 西山さん
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味を確認する iBroom 濱口さん

参加者が試食をしているのは酒粕を使ったジャム。実はこのジャム、参加者の声で出来上がった試作品。

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明和町の酒蔵 旭酒造の酒粕を使い、ジャム製造の伊勢亀鈴会が加工
ROASTER&CAFE ペンギン堂 新田さん

参加者からは美味しい、ヘルシーととても好評です。その一方でどうやって使ったらいいのかな?という課題も出てきました。

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酒粕を提供する旭酒造 西川さん。

金子先生は明和町だけでなく、全国各地の商品ブランディングに携わっています。福井県大野市で開発した「未知のパン」と「農家の三年漬け 奈良漬生ふりかけ」も事業者同士のコラボで生まれた商品としてこんな話を教えてくれました。

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金子先生「売れましたよ。」

 

大野市ブランド商品開発の場には、奈良漬けを持ってきた農家のおばちゃんがいたそうです。そこに、パン屋で何かしたいと話すオヤジさんも参加します。そんなお二人を見て、金子先生がアイデアをひらめきます。

金子先生は以前、成田市にも関わりました。成田市といえば成田空港があって、鉄砲漬けのあんぱんが開発されていました。そんな話を農家のおばちゃんとパン屋のオヤジさんに伝えると、やってみるかとなり、出来上がった商品が奈良漬けの入った「未知のパン」でした。

話はここで終わりません。

その様子を見た醤油屋さんが俺も!と名乗りをあげます。その結果、奈良漬けと鰹節の出汁殻を刻んだ「農家の三年漬け 奈良漬生ふりかけ」が出来上がりました。

金子先生「このように参加者同士が素材やアイデアを出し合い、新しい商品を開発することで素晴らしいチームが出来上がっていきます。」

事業者たちがゼロからイチを作り出している

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左から松幸農産 寺谷さん、辻丈蔵商店 辻さん、明和DMO事務局長 安藤さん

試食や意見交換が終わり、参加者の帰りを見送りながら、目尻を緩ませている人物がいました。

明和DMO事務局長の安藤さんです。

安藤さん「試食を通じて場の雰囲気や参加者の表情が変わったように感じました。また、たまたま居合わせた事業者さんが顔を出してくれたり。嬉しかったなぁ。」

 

売り先は明確。これからバイヤーとの共同開発もはじまっていきます。

事業者さんたちが協力し合い、ゼロからイチを創り出していくというブランディングは、地方創生時代に地域の価値を高めていくと感じました。

小さな町の一室は、みんなで地域を研究するラボのようで、そこには人と人との想いが交差するあたたかい空気が流れていました。

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photo / y_imura


【タイアップ】

明和DMOは新たな繋がりを歓迎しています。
ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。

一般社団法人 明和町観光商社(DMO)
三重県多気郡明和町大堀川新田9番地
tel 0596-67-6850
hp https://dmo.hana-meiwa.jp
fb https://www.facebook.com/一般社団法人明和観光商社-875539542792788/

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