一軒目のこわもて店主のディープな冗談で港町の洗礼を受け、楽しくなってきて二軒目へはしご酒。
ここからはIT系企業経営の知人A(漁師の息子)に加え、知人Bも参加。知人Bは尾鷲に生まれ育ち、職業は漁協職員。間違いなく港町のおいしい魚に出会える期待感。店を予約してくれた。
知人B:もしもし毎度。今日は何の刺身ある?ハゲかぁ。行くわ。3人やけど席は空いとる?
空き席よりも先に、入荷している魚種の確認するのが港町の流儀。
ポツンと灯りがついた店に到着。カウンターにいた客と、知人Bが何やら世間話。
出てきたお通しは、東紀州の郷土食材でもあるマンボウ。
続いて電話で話していたハゲ。こちらではカワハギのことをハゲというらしい。
ハゲの身に肝を乗せて。(旨み+旨み)×旨み=濃厚な旨み。身の旨みを肝の旨みを引き立て、口に広がる。こういった旨みにはやはり日本酒が欲しくなる。
旨い旨いといっている私の横で、漁師の息子である知人Aと漁協職員の知人Bのトークが専門的すぎて不明なのだが聞いていて楽しい。なんでも漁師が使う専門用語は、ロシア語由来と英語由来が混ざっているらしい。
つなぎと呼ばれる小アジが繋がっている郷土料理が出てきた。
知人B:つなぎは見た目のとおり、ひとつずつ繋げるがらつなぎという意味と、漁師が漁の間の繋ぎの時間でやるからつなぎという意味もある。
このつなぎも酒に合うので、手がとまらない。旨い旨いと行ってる私のとなりでは、また魚魚トークに花が咲いていた。
漁師の子どもあるある話。漁業権を持つじいちゃんの名義で魚を売ることを覚える。売ったお金で漁用のカゴ網を買う。そのカゴ網で捕らえた魚を売り、さらにカゴ網を買う。そういった経験を積み、漁師にならずとも経営者になる人が多いという。郷土の営みの話を聞きながら、風土の恵みをいただく幸せな時間。
私:ええ・・、これ何ですか。
大将:スルメイカの肝。
生の肝を一日塩漬けしたこの一品は、良い塩梅で旨みも濃厚。
私:これもカラキッテク?
知人B:これはカラキッテクではない(笑)。
港町の人は魚の旨い食べ方を知っている。なんでも知人Bは、なめろうを一度に5kgも作ったことがあるらしい。
知人A:今度大量になめろうを作ったり、めちゃくちゃ一杯の魚を捌く映像をYoutubeにアップしてチャンネル作らん?
さすがIT系。最近そういう映像が流行っているらしい。
ここにいると冗談のような、本当のような、現実のような、夢のような、そんな時間が流れていきます。酒が進んだ夜でした。
尾鷲のハシゴ酒文化、番外編もご期待ください。
芦の花
尾鷲市中井町8-8
tel 080-1550-1911
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村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事