昭和から46年間愛され続けた渋ビル「桑栄メイト」
JR東海・近鉄・養老鉄道が乗り入れる桑名駅舎に直結し、
町の象徴的存在である「桑栄メイト」
現在、東西自由通路と新駅舎の建設が進んでおり、この愛すべきビルも今年7月末に営業を終え、8月末には完全に閉鎖。早ければ今秋から解体工事に入ることになっている。
駅を降りて最初に目にするこのビルの渋さに、心ふれあうどころか、震える人も多かったであろうが、この場所に鎮座する桑栄メイトは地域のシンボルとして親しまれてきた。
趣溢れるメイトがなくなってしまうなんて…
特に二階は、味の街と名乗るほどソウルフードの集合体。
またこれは個人的な思い入れだが、
私自身、桑名に移住した際、
駅を降り立ち一番最初に目にしたのがこのメイト。
想像以上に渋すぎた駅ビルに泣き崩れたわけだけど、
今や桑名を語る上で、
絶対に外せない想い入れ深い場所になっている。
時代と共に忘れ去られていくかもしれないこのシンボルを、
これから記録に遺していきたいと思う。
photo / y_imura
はやく起きた朝は…パーラーはな
今回お邪魔したのは、パーラーはな。
朝7時から営業している喫茶店である。
「1、2年頑張ろうかなと思って始めたんだけど、気付いたら15年経っちゃったわ」
そう話してくれたのはママさん。
元々はテナントさんが、
「パーラー花」という名で約30年程営業。
1997年、向かいにあったパル(ジャスコ)が閉鎖し、
客足が減ったことでやむなく退去。
オーナーであるママは、
共益費との兼ね合い諸々で、
改めて”パーラーはな”として引き継いだ。
ママ:喫茶店に憧れた時期もあったからね。
花からはなとなり、今年でもう15年。
花時代から飾られていた花の絵も現存。
-どこの風景ですかね。
ママ:どうかしらね、オランダかどっかじゃない??
パーラーの語源は談話室
常連さんたちが寛ぐ朝。
この日のモーニングは、
トーストとバナナだった。
添えられるのは日替わりで、
小倉餡だったり、苺ジャムだったり、マーマレードだったり。
そんなお得なモーニングサービスは11時まで。
ティータイムに人気なのは、
マスター特製のコーヒーゼリー。
ほろ苦い大人なコーヒーゼリーと、
バニラアイスクリームのバランスが絶妙なのだ。
因みに、現在のチームはなの構成は??
ママ:私たち夫婦と姉妹と時々その娘よ。
つまり、ママとマスターがご夫婦で、
ご姉妹同士で入られたパートさんがいて、
更に時々パートさんの娘さんが手伝いにみえるとのこと。
なるほど、仲良しなはずだ。
パートさん:もう毎日楽しいわよ。お客さんとたわいない話をしたりしてね。
ママ:なんていうかお客さんも私たちも皆お隣さんみたいなものね。
パートさん:そうそう、いつもみえるお客さんがパタッと来なくなって、どうしたのかな?って思うと現れたりするの。そういう感じ。
パーラーの語源は、フランス語で談話室。
まさに話に花が咲く場だ。
はなさんにとって桑栄メイトとは?そして今後は?
「ただただ懐かしい場所ね。落ち着くの」
チームはなのご姉妹がそう仰り、
ママがうなずいた。
ママ:最初は何もわからなった私たち。教えてもらいながら、色んなお客さんが応援してくれてここまでやってきたの。今後どこかで続けるの?という声を聞くと、他でもやりたいなと思うのだけど住まいが名古屋でしょ。年齢的に無理と思うわ。
不意にインタビューの様子を見守っていた常連さんに、
「あ、知ってた?今月で終わりって。よろしくね」と話しかけるママ。
何も言わず、頷くお客さん。
ママ:まさかこんなに長く続くとは思っていなかったけど、お客さんが応援してくださって、顔を見るのが本当に楽しかったの。友達みたいな感じ。ちょっと顔見ないとどうしたのかしらとかね。いいお客さんばっかりでありがたいわ。
ママ:そうね、これからは時々桑名まで来て、街中ウロウロしていたら誰かに会えるかもしれないわね。そしてこういう場所ができたら、今度はお客さんとして来るかもしれない。やすらぐのよね、みんなの顔見るとホっとしてね。元気の出る場所かな。
戸建て物件ではなく、桑栄メイトのように色んなお店が固まっているから良かったとママは仰る。
朝モーニングして会社へ向かい、お勤め帰りには飲んで帰る。
そんな選べるお店が集まっていたのがこの桑栄メイト。
はなさんは7月末まで営業予定だが、他店舗との兼ね合いをみながら調整されるとのこと。
駅前の談話室であったチームはなの皆様、お疲れさまでした。
パーラーはな
桑名市桑栄町2 桑栄メイト2F
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事