昨年、惜しまれつつも閉店した【カフェ・コブ】をご存知でしょうか。
近鉄湯の山線の終点、湯の山温泉駅すぐそば。
ここ菰野町は鈴鹿山脈にいだかれた田園風景と住宅街が広がっています。
県内の方から「なんかかんか、いろいろある」の印象でお馴染み(?)の北勢地域の三重郡菰野町。美術館あり、温泉あり、ロープウェイあり。最近は高速のインターもできて、アクセスも抜群に向上しました。
菰野町について、僕が個人的にお伝えしたい一番の魅力はかっこいいカフェが複数ある、という点。なかでも冒頭のカフェコブさんの存在は「キラリ」と際立っていました。
なぜか。
湯の山温泉街で開催される二つのビッグイベント。
・カモシカ音泉蚤の市
・御縁日
県内に住む方なら、名前を聞いたことがあるかもしれません。行ったことがあるよ、という方も中には見えるかもしれませんね。
地域の名店や作家さんの出店があり、音楽活動をしているみんなのかっこいいお兄さんやお姉さまがたが、一同に集まってライブをします。
湯の山温泉街は年に二回、パーっと華やかな空間に様変わりするのです!
こういった文化の発電所とも呼べるような取り組みを主催し、牽引してきたのがカフェコブさんでした。
「昭和の景観が残る温泉街に、浴衣をきた現代の若者がひしめいとる姿がみてみたい」
その初期衝動をそのまま形にしてしまう、パワフルな活動力。だから三重県カフェ界隈に衝撃が走るビッグカフェの閉店だったのです。
そんなパワフルなスポットが、単に閉店したのか?
いえ、僕はずっと知っていました。湯の山温泉街に移転することを。
改めてご紹介いたします。
淵ト瀬です、読みはフチトセ。
みてください、この店構え。ずっと前からあったっていう顔をしていますね。
中に入るとこの通り、もはや老舗カフェの風格すら漂っています。どうしてこうなるのでしょう。
昭和からここにありつづけてきた建物が雄弁だからでしょうか。
長年カフェを経営してきたノウハウが詰まっているからでしょうか。
とにかくオープンしたてにも関わらず、どこかずっと前からここにあったという印象もあり、不思議な魅力のある空間に出会えます。
玄関を入ってすぐのカウンターで、まず注文しましょう。会計先払いのスッキリシステム。
開店日にお店に行き、カレーを食べて、ケーキを食べて、コーヒーを飲んで改めて思い出しました。
素敵なイベントをしているから、カフェコブが好きだったのか?
「ちがう、胃袋をつかまれたから好きだった!!」
みてください。カレーです。
皆さんも僕も美味しいものが好きです。イベントより、食い物です。花よりだんごです。
ご夫婦のお二人の作る食べ物の一つひとつが、美味しい。それで僕の世界の平和が保たれるのです。この日はカツオ出汁かおるカレー(ひだりがわ)とベジカレー(みぎがわ)のあいがけ。
カツオ出汁とカレーの出会いは、感動的な美味しさでした。今朝思いついたというこのカレーは「本格スパイスカレーなんて恐れ多いから、和に逃げたん」などと可愛く謙遜していますが、魚ゆえ南インドのカレーを彷彿とさせます。しかも、和も感じる。
センスがいい人は、何をしても許されます。だって美味しいから。
…… 興奮のあまり、文章から偏差値の低さが露呈してきましたが、続けます。
みてください、はちみつチーズトーストです。
素材の良さ。パン、モッツァレラチーズ、はちみつの単純な組み合わせが生み出すハーモニーは、素材の選定力を抜きには語れません。
話に花が咲き、ひとしきり語り終えたその時、みなさん思いますよね。
なんかもうちょっと食べていきたいな……
そんな時に丁度良いんです。
ぜひ、再度カウンターに行って、頼んでください。おしゃべりにカロリーを使いましたよね、だから安心してください。プラスマイナスで実質はゼロキロカロリーです。(※実測値ではございません、あしからず。)
かつてカフェ・コブは「菜食」という試みでもありました。その縛りから解き放たれ、淵ト瀬で再スタートを切った訳です。
バターとチーズと砂糖の魔術に、うっとりときます。なんならジワリとこみ上げるものさえも…… 。
もっとたくさん、さらにヘルシーに楽しみたいという欲張りさんにはこちら。オープンサンド。カフェ・コブ時代の手腕は健在、ベジマヨと濃厚なトマトソースのハーモニーはあなたの三つの欲求を同時に満たすこと間違いありません。
・ヘルシー欲
・食欲
・見た目が良い
走攻守、三拍子が揃ったいい選手でっせ、旦那!
みてください、シフォンケーキにカラメルソースがかかっています。生クリームはほぼ、もしくはまったく砂糖を加えられていないとみえて、非常に風味がクリアです。そこに香ばしいカラメルソースがかかり、シフォンケーキに品良く添えられているのです。
淵ト瀬は、スペシャリティコーヒーを取り扱っています。
今回頼んだのはエチオピア。名前に恥じない華々しい特徴がとらえられるフルーティで品の良い一杯でした。
渓流を眺めては、「淵ト瀬」という店名に思いを馳せ(川の流れに由来した名前です)、美味しいものに舌鼓を打った今日の満足を、コーヒーにて終幕とする。こんなに贅沢なことってあるでしょうか。
そう、もはや味のセレクトショップです。
もうあとは温泉にでも入って帰ればいいじゃない。
みなさん。完全に湯の山温泉に拠点を移したお二人が、新たな風を呼ぶ直前です。これは僕の個人的な天気予報です。金土日祝の営業だそうです。
美味しいものを食べに、そして嵐の前の静けさを感じに、今、湯の山へぜひ。
関東出身。十歳で三重に越してくる。
十代でコーヒーにはまり、器具にこだわったり産地の飲み比べなどする。
紆余曲折を経て現在は茶業界で働き、やっぱり器具にこだわったり産地の飲みくらべなどしている。
人生におけるリソースを食にふりがち。得意ジャンル:グルメ