恋。
その甘酸っぱい言葉からは、
すっかり疎遠になってしまった年頃だが、
時々思うのだ。
いくつになってもキュンは欲しい。
そう、ときめきたいのだ。
大人だってときめきたい。
忘れかけたトキメキを探しに、
やってきたのはここ。
少女まんが館 TAKI 1735。
店内には1万冊以上の少女漫画!
やばい。
どれもこれも超絶懐かしい。
好きだった漫画を読み直そうかな。
それともお気に入りの作家の新作いっちゃおうかな。
あ、これ最近ドラマ化されて気になっていたやつだetc…
整列する桃色の背表紙に、
テンションは上がりまくる。
プラトニックも知らなかったあの頃
足りない”キュン”を埋めるべく、
最初に選んだのはこれ。
のっぽでハンサムなサリーと、
ちっちゃくておっちょこちょいなチッチが織りなす、
『小さな恋のものがたり』
1962年から連載されている4コマ漫画。
私事だが、
我が家では子供の頃、
漫画禁止の風潮があったのだけど、
この物語だけは母の本棚に並んでおり、
唯一、堂々と読める漫画だった。
セリフに出てくる、
”プラトニックラブ”の意味もわからず、
母に聞こうか迷ったという、
大人の世界にちょっと触れた作品。
次に手を伸ばしたのは、
一番好きな少女漫画。
NANAでも知られる、
矢沢あいの『天使なんかじゃない』
王道の学園もので、
丁寧に描かれた登場人物がとにかく魅力的。
特に主人公の翠ちゃんの明るさには、
憧れる部分が目一杯あった。
焦れる恋心と、
思春期らしい人間味溢れる葛藤、
学生だった私も自分を重ねてドはまりした作品。
仮に実写化する場合の俳優の配役については、
友人と何度議論したかわからない。
続いて、
未だ心に残り、影響を受けている作品。
小花美穂の『こどものおもちゃ』
芸能活動をする小学生の紗南ちゃんと、
クールで影を持つ羽山くんとの物語。
最初はその設定に抵抗があったのだけど、
読み進めていくうちに、
紗南ちゃんの底抜けの明るさと強さに、
刺激を受けまくった。
そんな紗南ちゃんが落ち込んだ時に、
養母がかけた「逆境こそ楽しみなさい」という言葉。
また、人間不信の羽山くんの歪な心に、
棘が増えて一回り大きな丸になったエピソードなど、
今でも心の糧になっている。
あー、なんだろう、
このついつい熱くなる高揚感!
胸キュンチャージ120%!!
漫画喫茶ではなく、自宅ミュージアム
少女まんが館 TAKI 1735を運営しているのは、
5年ほど前に東京から移住されたしむらさくらさん。
興味深いのは、
この場所が漫画喫茶ではなく、
ミュージアムであるところ。
きっかけは、
1997年から東京・あきる野市で、
少女まんが館を運営されているご夫婦とのご縁。
想いに共鳴し、
ノウハウと少女漫画の寄贈を受け、
約3年前にこの場をOPENした。
自宅の一角を開放し、
半公共的な場を作ることで人の出入りを生む、
少女まんが館という自宅ミュージアム。
お客さんからの漫画の寄贈も増え、
どんどんと育てられているという。
更に人が寄りやすいよう、
カフェが併設されており、
お茶やランチ、おしゃべりができるのも素敵。
入館料は無料で誰でも利用可。
当初、入場は中学生以上にしていたそうだが、
小学生の女児たちが窓越しに羨む姿を見て、
1階にはリボンやなかよし、マーガレットなどを並べ、
ちょっぴり大人向けのものは2階に集約。
2階のみを中学生以上入館可
というスタイルに変更した。
今では夕方になると小学生も訪れ、
宿題を仕上げた後に、
漫画を読んで帰るのだそう。
また小学校高学年くらいになると、
2階フロアへ上がるお姉さんたちを眺め、
”いーないーな”と憧れる女児も多いのだとか。
大人の階段!!
男性にもおすすめな少女漫画は??
店名の意味深な数字”1735”
これはここの住所の番地。
少女漫画というフェミニンなコンテンツに対し、
店名はニュートラルな数字で、
内装もすっきりスタイリッシュ。
なので男性がいても全く違和感はない。
―—男性でも読みやすい少女漫画はありますか?
さくらさん:『BANANAFISH、秘密、土星マンションあたりは男性にも人気ですね』
さくらさん:『あと私も大好きなのですが、三重県津市出身の作家 板羽 皆さんのサムライカアサンもとってもおススメです』
サムライカアサンは、
母と反抗期の息子との愛情物語で、
男性でも笑って泣いちゃう漫画なのだ。
女心に寄り添うという意味では、
”少女漫画好きな男性=モテる説”も浮上…。
その時間はまるでバカンス。
少女漫画とは、
私たちにとってなんだろう。
甘美なものであるのは間違いないが、
日常に絶対必要なものでもない。
だからなのか、
この店の存在を知ったお客さんは、
お茶目的の場合はすぐにいらっしゃるが、
漫画目的の方は半年~1年程経ってから、
『やっと来れました!!』
と来館するケースが多いのだそう。
それだけ少女漫画だけに割く時間は、
贅沢なのであろう。
さくらさん:『また少女漫画は、ファッションや社会情勢がとても反映するツールでもあると思います。例えばこちらの”イシュタルの娘〜小野於通伝〜”は、安土桃山時代から江戸時代にかけて実在した女性・小野於通の生涯を描いた歴史漫画作品です。激動の時代を書家という立場で、迷いながらも強くしなやかに生きた女性の視点で描かれていますので、これから何かを始めようという今の女性にエールを送る作品だと思います』
美味しいコーヒーを飲みながら、
どっぷりと浸る甘美な時間。
夢中になっていたあの頃が蘇るような、
純粋な恋愛にハッとさせられるような、
大人になったからこそ気付く感情があるような…
世界観に入り込み、
リアルと非リアル、感性感覚を行き来する、
そう、まさにショートトリップ。
忘れかけていたトキメキに触れ、
擦れた心が浄化される共に、
思考までもが冴えわたった気がした。
Photo by y_imura
少女まんが館 TAKI 1735
住所:三重県多気郡多気町丹生1735
電話: 0598-67-4968
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事