三重県のおダシは関東風?関西風?
国内外で起きていている「出汁(ダシ)」ブーム。
日本の伝統文化”和食”の基本であり、
素材を引き立て、味を支える「ダシ」。
最近では、
ダシの自動販売機や
ダシをそのまま飲むBarもできているほど。
原料には地域性があり
関東と関西では異なるというのはよく聞く話。
では、
日本列島の真ん中で
味や文化の境界線となる三重県のダシは、
関東風と関西風どちらなのだろう。
気になったので、
三重県桑名市から
国内外に50数店舗展開している
老舗うどん屋「歌行燈」へ
OTONAMIE広報のともーこさんと共に行ってきた。
小説の舞台となった老舗 歌行燈
今年で創業140年を迎える歌行燈。
紫陽花でむぎゅむぎゅな入口が
とても風流である。
歌行燈のダシは評判で、
”だしパック”を自宅用に購入している人も多い。
ダシの真相を伺う前に、
五代目が店内を案内してくれた。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.17.02DSC_098.jpg)
壁に書かれているのは、
幻想文学の先駆者とされる
泉鏡花の小説「歌行燈」の一節。
物語に登場するうどん屋のモデルは
こちらの歌行燈(当時の屋号は志満や)といわれている。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.17.07DSC_0340.jpg)
店頭に飾られている桑名盆は
小説となった記念に作られたもの。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.17.11DSC_0963-1024x676.jpg)
「名物 歌行燈」とあるが、
実は「名作 歌行燈」と彫る予定だったという。
出来上がった盆をみて、
「え?”名物”ってなんだ?」
ということで考案したのが、
釜あげうどんと天麩羅、しぐれ茶漬けをセットにした”歌行燈”。
まさかの後付け。
ところが、
うどんのセットメニューというのは珍しかったようで、
棚ぼた大ヒット。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.17.19DSC_0974-1024x676.jpg)
花街のお客様中心に
重宝されたのだそう。
五代目:「うどんも打っていますが、歌行燈の命はダシなのです」
全国展開するうどん屋。関東と関西でダシは変わるの??
—―歌行燈のおうどんのダシは関東関西で違うのですか??
板さん:「うちは関東も関西も一緒です」
―—なんと!海外店も同じお味ですか??
板さん:「はい。同じダシ一本です」
―—ダシの素材は何ですか。
板さん:「歌行燈は昔から100%ソウダカツオの削り節で、伝統の味を守り続けています。」
ダシを取るところを一部見せて頂いた。
水・気候・素材の状態に合わせ調整が必要な為、
全店にて毎日ダシを取っているのだそう。
うーん、いい香り。
味に雑味が出ないよう、
ダシは静かに優しく扱うという板さん。
美しい黄金色のダシを
口に含むと広がる芳醇な香り。
魚の旨味とコクが凝縮され、
濃厚だけど優しいおダシの味。
もはや「お」を付けないと
失礼な気持ちになるおダシ。
人気のメニューは??ぷっくりとした地物はまぐりも食べ頃
改めて、
5月に代表に就任した五代目 横井健祐さんに、
人気のメニューを伺った。
上位に挙がったのは、
明治時代から愛されてきた
釜あげうどんの歌行燈セット(例の名物ですね!)
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.17.58DSC_0076.jpg)
最初におダシを味わった後は、
六色薬味(のり・ごま・大根おろし・しょうが・ねぎ・黒七味)をお好みで。
京都から仕入れているという山椒多めの黒七味が、
またいい演出してくれちゃう。
続いて、
地元の方に根強い人気を誇るのが天丼。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.04DSC_0083.jpg)
「死ぬ前に食べたいのは歌行燈の天丼」
というお客様がいるほど。
そして本店では
名産 地はまぐりが入ったおうどん。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.07DSC_0087.jpg)
歌行燈のおダシに、
地はまぐりのエキスが加わり
風味がより豊かになっている。
もう堪らず、
丼のまま飲み干すともーこさん。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.20DSC_0180.jpg)
はまぐりは、
梅雨の季節が1年で一番、
身がぷっくりとして美味しくなる。
ストレートに味わうのなら、
地はまぐりの蒸し焼き。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.24IMG_34951-1024x676.jpg)
むぎゅっと身を噛んだ瞬間に、
ジュワァ~っと出てくる旨み。
甘みが強く、噛めば噛むほど美味しい。
小説に出てくるはまぐりも蒸し焼き。
蒸すことにより、
身がふっくら柔らかくなるのだそう。
貝柱まで綺麗に取るには、
上下の貝殻を離し、
一方の殻でこするようにすくうと良いと教えて頂いた。
って、関係なしのともーこさん。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.32DSC_0092.jpg)
飲めばわかる。媚びないこだわりのおダシ
人気のおうどんメニューを頂いて、
歌行燈のおダシが、
東西で変わらない理由がわかった。
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.39DSC_012122.jpg)
確かに地域により嗜好性の違いはあるだろうが、
本当に美味しいダシは、
取り寄せてでも味わいたいもの。
こだわり。
自信。
そして関東関西に媚びない歌行燈のおダシ。
その理由・・・飲んで納得。
5月に代替りした五代目。今のお気持ちは・・・
五代目:「色々とやりたいことがありますが、まずは原点回帰ですね」
―—創業140年という歴史をどのようにお考えですか
五代目:「140年というのは大事ですが、もう重みは感じません。伝統を守りながらも、安定ではなく、時代に合わせて成長する企業でいたいと思っています。あと140年は続けたいですね」
―—頼もしいですね
五代目:「それも信頼している人、支えてくれる人が、周りに沢山いるからこそです。一番社歴の長い方で50年更新中。親子2代で入社してくれています。またお子さんからお孫さんへと5代で通って下さるお客様がいたり、本当に”人”ありきなのです」
![](http://otonamie.jp/wp-content/uploads/2017/06/2017.06.12-09.18.54DSC_1080-1024x676.jpg)
―—社内がとてもアットホームですよね
五代目:「お客様と一番近くで接するのは社員ですから、まずは社内のメンバーがいかに気持ち良く楽しく働けるかを優先に考えていますね」
―—そういえば、歌行燈さんのサービス指針変わっていますよね
五代目:「あ、花鳥風月ですね。お食事も接客も、お客様に”風流”な時間を提供できるよう心掛けています」
―—歌行燈のメニューは、普段使いから宴席、晴れの日まで、幅広いシチュエーションに対応できますよ
五代目:「そうなんです。時間帯によって客層が違うんですよ。昼は観光のお客様、夜は地元のお客様が多いですね」
―—そうそう、私も県外から観光に来た人にはまず歌行燈をご案内してます
五代目:「気軽に地はまぐりを味わってもらえますからね」
―—ところで、”うまみ”って海外店で通じますか??
五代目:「日本独特の言葉ですよね。味わいというか。うちのうまみを説明するにはダシを飲んでいただくしかないのですが、素材同士の究極の掛け算なのだと思います」
―—歌行燈のおダシの味が”想い出の味”になっている方も多いでしょうね
五代目:「毎年、結婚記念日に来て下さるご夫婦や、お祝い事の時はこのメニューと決めている親子、”おじいさんが好きだったから”と法要でご来店頂くご家族など、世代通してお顔をみせて頂いているお客様がたくさんいらっしゃいます。お客様の人生の1ページになれたら嬉しいですね」
―—・・・って、ともーこさん聞いてる??
ともーこ:「だ、だって、このおダシまたすぐ飲みたくなるんだもん。うまみが・・」
日本文化である”ダシ”の味を守りながら
三重県から世界へと展開していく歌行燈さん。
関東風でも関西風ではなく”歌行燈のダシ”と共に、
これからまた140年の歴史を紡いでいく。
☆風流うどんそば料理 歌行燈本店☆
住所:三重県桑名市江戸町10番地
電話:0594-22-1118
時間:11:00~21:30(LO21:00)
![福田ミキ](https://otonamie.jp/wp-content/uploads/2015/10/0c6abe6ba47f91287c049ca7f0a65986_2-150x150.jpg)
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事