かつては陸の孤島といわれる程であったが、
2013年、紀伊自動車道開通によりアクセスが良くなった。
とある日、
県内・県外・海外から
東京の某企業が運営するゲストハウスに、
吸い寄せられたかのように集まった面々。 皆ほぼ初対面。
関係性は謎。
目的はそれぞれ。
朝食は自家製パンが絶品の喫茶「寿」
珈琲を頼むと付いてくる、
自家製無添加パンのモーニング。 焼きたてパンにかぶりつきながら自己紹介。
学生時代にパリで過ごした一人が、
「It’s like a French cafe」とつぶやいた。
生まれて初めてみた桜。
奥熊野を目指すことにした一行。
道中、思わず車を停めた場所があった。 熊野市の山間部に位置する神川町。
人口300人、
高齢化率58%を超える限界集落。
フェンスの向こうに見えるのは、 神上中学校の旧校舎。 薄桃色の木造校舎に、
ピンクの桜がよく映える。 はらはらと舞う桜吹雪。 散り積もる桜の絨毯。 たまらずに、
花びらをかき集めるメンバーがいた。
世界的に活躍するインドネシア人デザイナー
Francis Surjaseputra(フランシス・スルジャセプトラ)だ。
惜しむように花びらを、
集めては舞わす。 生まれて初めて、
桜を見たというフランシス。
「泣きそうになった」
そう言っていた。
儚いからこそ、
その風景を、今この一瞬を、
心に焼き付けておきたいと願う。
荘厳で神秘的。息を飲むほどのコバルドブルー
奈良県・三重県・和歌山県にまたがる大峡谷。 国特別名勝の瀞峡。 古くから知られているというその幽水美。
荘厳な岩に囲まれ、
息をのむほどにコバルトブルー。 断崖絶壁の上に佇む、
食堂・喫茶「瀞ホテル」
築100年以上の歴史ある老舗旅館であったが、
一度閉館。
現在は食堂・喫茶として営業を再開している。
静けさの中で、
ブランコや朽ちた吊り橋を眺めていると、
まるで時が止まっているかのよう。
神様に呼ばれた人だけが行けるという異次元のパワースポット
目指すは、
選ばれし者しか辿り着けないといわれる玉置神社。
霊峰 玉置山の
標高約1000メートルの場所に鎮座する。 「呼ばれる」というのは、
急に気になったり、
何となくの流れで行くことになるような感じらしい。
実際、この日、 体調不良等で
急遽来られなくなったメンバーが数名いた。
彼女たちにとってのタイミングは
きっと「今」ではないのだろう。
玉置神社へ向かう道中は、
曲がりくねった険しい崖際の道。
阻害に合うという噂通り、
通行止めにも遭遇したし、
カーナビも利かなくなった。
到着予定時間を過ぎても、
一向に着かない。
たまに車と行き交うと、
「神様のしもべなのじゃないか」
と思ってしまうほどの山深さ。
修験道の開祖によってひらかれた聖なる道
奈良吉野山と熊野三山を結ぶ、
世界遺産 大峯奥駈道に入った。 修験道の修行場として開かれた道で、
1300年の伝統をもつ
熊野古道の中で最も険阻なルートだそう。
神様?八咫烏?そう思えてしまう不思議な空気。
玉置神社へ続く鳥居に到着。 神武天皇東征の際、
八咫烏の先導にてこの地にみえ、
「十種神宝」の「玉」を鎮め、
武運を祈願されたことから
玉置神社の名が付いたのだそう。
あまりの疲労から邪念が出て、
鳥居脇の売店のおじさんに、近道を聞いた。
「あんたら、参道は人生と同じ。近道なんてないよ。」
そうおじさんは言い、
細く険しめの道の入口を案内してくれた。
その時、私たちの足元に、華奢な蛇が横切った。
神様??
そしておじさんは八咫烏??
山あり谷ありの参道に、感じる人生。
景観や山道の植物を楽しみながら進む。 玉置山の山頂にたどり着いた。 定番ルートと比べて
だいぶ回り道となったがそれが良かった。
本殿よりも先に礼拝すべき、
末社玉石社にも行くことができた。
参道は産道。
熊野には「黄泉の国」の入り口があるとされる。
更に参道脇には、枕状熔岩がみられる。 深さ4000m以上の海底で噴出した
玄武溶質が固まったもので、
地殻変動で陸となり、 玉置山を形成。
もともとはグアムの海底だったという。
日本列島の成り立ちを物語る
貴重な資料になっているとか。
日本のルーツかもしれない。
熊野詣は生まれ変わり
山頂から直下9合目に位置する玉置神社。
御鎮座は約2060年前。 境内にはそびえ立つ樹齢3000年の神代杉。 熊野詣は、
黄泉の国にふれ、生まれ変わり、
現世へ戻っていくという意味があるらしい。
何かが漂っていてもおかしくはない空気感。
「神道と日本人の心に感銘」
フランシスは静かに言った。
壮大な歴史と、
雄大な自然が調和した厳粛さに、
気持ちが浄化され、
エネルギーを得た聖地 熊野から
各々帰路につく。
結局、今日のメンツは何だったのだろう。
不思議さは残るが、
大切なのは、この日、ここに呼ばれた意味。
考えさせられる旅であった。
撮影: y_imura
■喫茶 寿
住所:三重県熊野市井戸町355-1
電話:0597-89-0459
■神川町
住所:三重県熊野市神川町
■瀞峡
住所:三重県熊野市紀和町木津呂
■玉置神社
住所:奈良県吉野郡十津川村玉置川1番地
電話:0746-64-0500
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事