終戦直後の昭和20年。
その日の食べ物ですら
ままならなかった食糧難時代に、
三重県桑名市の地で開業した
ホルモン焼き「本家はり本」
「何とかみんなに栄養価の高い物を食べてもらい、元気を取り戻して欲しい」
そんな想いで、初代店主は、
どこよりも先駆けて、
屠場で廃棄されていた内臓系の肉に目を付けた。
当時の日本に、
内臓系の肉を食べる習慣はなく、
「放るもん」とも言われていた部位。
これが、放るもん=ホルモンのはじまりらしい。
無添加の生味噌と天然調味料にて
開発した特製味噌ダレをつけ、
直火で網焼きにする。
安くて美味しくて栄養価が高い。
見事ごちそうに生まれ変わったホルモンの評判は桑名で知れ渡り、連日大繁盛となった。
―――愛され続けたはり本。その恩情と温情。
一方、ホルモン焼きの匂いに惹かれ、
職もなく、お金もなく、食べるものもない人たちも、店の前に集まった。
慈悲深い初代は見るに見かね、
賄い飯だったどて煮を施しふるまっていたのだそう。
当時を知る人たちは言う。
”忘れられぬ想い出の味”だと。
恩情と温情。
助け合いで生き延びた激動の時代。
その後も本家はり本は、
桑名から隣町の四日市にも展開し、
地元の人々に愛され続けてきた。
―――新たな展開。そのギャップがすごい。
2017年2月。
その本家はり本が、
三重県の若手寿司職人とイタリアンシェフを率いて、名古屋の錦に登場することとなった。
松阪牛などの和牛をはじめとする、
美し国 三重の食材を新しいスタイルで楽しめる高級和食店。
厨房を任されたのは、
地元三重県出身の若手料理人。
ホルモン焼きで民衆に愛されていたはり本が、
ネオンきらきらの錦で高級店?!
このギャップ、いかすでしょ。
それもはり本の温情を受け継ぐオーナーが、
若手料理人に、
食通を唸らすフィールドを与えたいという情愛からきたもの。
そして、食の宝庫といわれる三重県の食を、
もっとたくさんの人に知ってもらいたいという
地元への愛と恩。
現に、肉は三重の和牛にこだわり、
魚介類は、県内の漁業関係者とのリレーションを構築(漁村リーグ等)。
食を通じた地方創生の一助となれる展開を考慮しているのだ。
―――新進気鋭の若手料理人コンビはジャンルを越える。
挑戦する料理人のひとりは、
地元四日市の老舗寿司店の新進気鋭寿司・和食職人、泉氏。
寿司職人である父の背中をみて育ち、
京都の鞍馬口『割烹 寿星』、桑名の老舗『江戸川』での修行も積んだ実力派。
料理長として、
北から南まで豊富な魚種が揃う三重の魚介を中心に、技を駆使して提供する。
——泉さん、名古屋 錦での出店について意気込みをお聞かせください。
泉: 誘惑が渦巻く街なので、仕事どころじゃないです。
もうおひとりは、イタリアン出身の鈴木氏。
最高の肉質と三重産素材に腕を振るう。
寿司・和食・イタリアン。
ジャンルを越えた斬新なスタイルだが、
どれも旬を大切にし、素材の持ち味を最大限に引き出すという点は共通している。
―――はり本といえば肉!!こだわり続けた国産黒毛和牛がここにある。
提供される肉は
目利きや仕入れルートなどの
ノウハウを存分に活かし、
創業当時からこだわり続けている
最高級の松阪牛や国産黒毛和牛。
口に入れた瞬間・・・・
とろける柔らかさと、広がる肉汁の甘いうまみ。
「甘い!!」
驚くことなかれ、肉汁が甘いのだ。
噛めば噛むほど染み出るうまみ。
手の込んだステーキソースなんてもういらない。
―――ホルモンまでお洒落に生まれ変わっちゃったよ。
ホルモンも華奢に登場。
伝統の味噌ダレをまとった串刺スタイル。
熱された萬古焼の瓦の上で、
チリチリチリ・・・と微かな音をたて、おどる。
こ、この音・・・なんて繊細なの。。
耳を澄ませてうっとりとしていると、
「温かいお料理は温かいうちにお召し上がりくださいね」
と軽くご指摘。
すみません、つい。
じゅわぁ。。
とろけました。
コラーゲン・・・?
ぷるぷるな弾力を噛みしめると、
口の中の体温で
さらっとした脂になってとろける。
その後、程よく残るコリコリな歯ごたえ。
輸入肉のホルモンとは全く違う味の深み。
―――上質な国産黒毛和牛ってば、イイこと尽くし。
オーナー曰く、
上質な黒毛和牛のホルモンは、
ビタミン豊富でカルビと比べても低カロリー。
また黒毛和牛の脂身は、
オリーブオイルの主要成分であるオレイン酸と、
青魚に含まれるステアリン酸が含有されているのだとか。
なんと、いいこと尽くし。
ありがとう、黒毛和牛。
―――ふと思った。当時の日本人はホルモンの美味しさをどう表現していたのかしら。
このプリプリ感、
昭和20年の日本人には衝撃的だっただろうな。
見たことも食べたこともないホルモン。
きっと、おっかなびっくり口に含んだのだろう。
食べられるものがあるだけで幸せな環境下、
この美味しさと食感。
一体どのように表現したのだろうか。
”ぷるぷるぷりぷり”という表現が
あったかも不明。
シンプルに、
「なんやこれ!!こんな旨いもん食べたことない!!」
かな。
―――初代の味を守り続けるこころ。
因みにはり本では、
仕入れたホルモンを最高の状態にするべく、
灰汁抜きなどの工程も含め、約50%も除去し、
脂身とのバランスを整えている。
希少な黒毛和牛は仕入れが高い。
ましてや除去部分が多いというのは、店としては大変なことである。
それでも初代の味を頑なに守り進化させるため、ゆずれない。
本物の黒毛和牛の味を知ってしてもらいたい。
美味しく身体に良い三重の食材を堪能してもらい、明日への活力にしてもらいたい。
先代のお客様を想う心は
今もこのはり本に受け継がれている。
Photo by 井村義次
~2017年2月7日(火)OPEN~
桒名 本家はり本
住所:愛知県名古屋市中区錦三丁目18-21
(東京第一ホテル錦2F)
電話:052-253-6039
時間: PM5:00〜
定休:日曜・祭日
現在、ホールスタッフを募集しております。
ご応募・お問合せはお電話にてご連絡下さい(担当:泉)
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事