こんにちは!キャスターマミです!
みなさんは、大台町に広がる大杉谷、大台ケ原と聞いてどんな山の風景を思い浮かべますか?
ユネスコエコパークのエリアで美しい自然が保たれている、緑豊かな癒しの場所。
パンフレットに使われているこんな写真のイメージ。
林業に無知な私は、山全体の景色がこのように緑で溢れていると思い込んでいました。
でも実際は・・・?
大自然に憧れ山に移住し、全く知らなかった林業に興味を持った私が、宮川森林組合 林業振興課 岡本課長に話を聞きに行ってきました。
森には自然林と人工林がある
森には、自然林と人工林があります。
自然林とは人の手が入っていないそのままの森。
人工林は、人が建築資材に使うことを目的に植えたスギやヒノキの森。
人工林として戦後に人の手で植えられ、間伐や枝打ち等手入れされ育った木が生長し約50年経ちました。まさに今、資材として使われるために伐採する時期なんです。
しかし森の現状は、ある2つの要因で大変なことになっています。というオハナシ。
自然林の被害状況
まずは自然林の写真を見てください。
岡本さん「この写真を見てどう思いますか?」
私「思っていたより緑が少ないです・・・。」
1.5mのところで線を引きます。
ここを境に緑がないのが分かりますか?
これは、鹿が毒性のない部分は全て食べてしまうためです。犯人は、鹿なんです。
笹も食べられてしまって、育っていません。
こちらは鹿が背の届く範囲の木の表面が食べられたので、腐敗して弱くなり、倒れてしまっています。
人工林の被害状況
次に人工林の写真。
芽が出た小さな木も、葉が食べられてしまっていてありません。上から見た写真では、5年、10年と育った木は順調そうに見えますが・・・
鹿の身長と同じ高さだけ、樹皮は剥がれてしまっている。
50年経ち、やっと市場に出せるまでになるはずだった木はこのように弱り、倒れてしまいます。
切ってみると分かるように、部分的にでも食べられてしまうと、腐ってしまって使えなくなります。
また、建築資材として使うためには、もうひとつの敵がいます。それが虫。カミキリムシの一種、アカネトラカミキリムシです。
この楕円系になっている部分がこの虫が食べたところ。
縦に切ると穴が開いてしまっているのが目立ちます。建物の材料に使用するなら、虫食いの穴あきは売れませんよね・・・。
これでは林業が成り立ちません。実際に今、林業を生業としている人はかなり少なくなっています。ほとんどが兼業林家となっていて、このままでは次の世代の林業の担い手が減少し続けてしまいます。
鹿に関しては目で見えますが、目視では分かりにくい虫の被害はどう防げるかを我々は研究しました。
虫の被害が出る場所、出ない場所がある
人工林の中でも、虫の被害が出ない場所があります。虫の被害がある森とない森では、場所にどんな違いがあるのか?
ここで問題!大杉谷、大台ケ原には、何種類の木があるでしょう?
私「・・・30!」
岡本課長「ブー!!500種類!」
500もの木があるから、それぞれの木が適した場所がそれぞれにある。そこに、人工林を作ってしまった。大台町森のうち約50%の面積が人工林です。本来育っていた、何千年、何万年かけて生きてきた森に、人がスギやヒノキを植えてしまった。
生きるため、私たちのことを考え人工林を作ってくれた先人たちには感謝し、尊重していきたい。建築資材として使えなかった木は、燃料として薪にするなどの他にも、出来るだけ高く売る方法を考えていきます。
研究の結果分かったことは、虫の被害のあった場所はスギやヒノキには適した場所ではなかったということでした。そんな場所には、生長したスギやヒノキを伐採した後、そこに適する木を植えていく。
転換期である今、伐採した後にまたスギやヒノキを植える選択ではなく、元の多種多様な広葉樹が入り混じる、自然の森に戻していこうとしています。
地域性苗木とは
地域性苗木を知っていますか?
例えばイロハモミジ。三重県のように太平洋側の地域は、温暖ではあるけれど台風が多い。日本海側の地域は、台風の被害は少ないけれど冬に雪が多い。同じイロハモミジであってもDNAレベルで見ると、違うように進化してきているそうです。
氷河期時代に多くの植物が死滅していく中、一部にまとまって生き残った地域が日本中に点在し、それぞれの場所に適合し進化したと研究されています。もしも日本海側のイロハモミジの苗木を太平洋側に植えてしまったとしたら、20年に1度の確率でくる大きな台風に耐えられず倒れてしまう。同じように、太平洋側の苗木で育ったイロハモミジは、大雪には耐えられない。
植樹する際どこの苗木であるかは、非常に重要なことです。
大台町では種から苗木を作っている
大杉谷の森林では、自生している木の種子を採り、種子から苗木作りをしています。
採種場所や採種月日など履歴(トレーサビリティー)が確かな苗木が、地域性苗木。
その地域に適合した苗木を地域で育て、再び山へ返す。大台町にある障がい者施設でも、苗木作りを行っていて、買い取っています。
地域に住むたくさんの人と自然の持つ本来の力で、かつてあった森に戻していく。約3年かけて育てた苗木が、1本1本確実に育つように。
アロマ商品を開発した経緯
今までの林業は、建築のためだけでした。建築資材に使うためには、お金を生み出すのに50年かかってしまいます。大台町は高齢化しているので、3~5年で結果の出せるような産業をと考え、枝を切って作れる商品を開発しました。枝は切ってもまた伸びてくるので、繰り返せます。
そして生まれたのがこの商品。
アロマオイルを中心としたこのシリーズは既に販売がスタートしましたが、2017年春にネーミング・パッケージ共にリニューアルしリリースします。商品を使っていただくことで、林業を知ってもらいたいと考えています。
新しい林業
Aの木だけの森は、Aの木しかない。
A~Zまで様々な木が入り混じった多種多様な森は、AとBの関係性、AとCとDの関係性・・・と、可能性は無限大に広がる。
私たちはその可能性のひとつとして、アロマ商品を作りました。
そしてこれから他の可能性を考え、探していくのは若い世代のみなさん。これが私の考える新しい林業です。
あとがき
林業といえば危険な仕事。男性の仕事だったでしょう。今は、女性の感性も林業に行かせる時代。
私は今の森を少しだけ知ることができて、今後何が出来るだろう?と、常に見える緑の山々を眺めながら考えるキッカケをもらいました。
遠くから見る山と、実際に足を運んでみて見る山は違う。実際の山を知るために、その地に行ってみることがアイデアの浮かぶ第一歩になるのだと思います。
・・・山、登ってきます!!
最後まで読んでいただき、ありがとうございます♪
キャスターマミ。OTONAMIE記者。松阪市出身。生まれ育った三重が大好きで、三重を盛り上げたくて地元タレントに。テレビ・ラジオ出演、祭りやイベント、ブライダルMCとして活躍中。この記者が登場する記事