胸の奥を優しく掴み、まるで恋のような気持ちにさせる音と出会ったのは初めてだ。そのバイオリンを持って私の前に現れた男、彼の名は鳥谷たつし、「カンラン」という北欧音楽グループでの演奏活動で全国に赴いている。
彼の音楽工房は、松阪の繁華街42号から和田金通りに入ったすぐに「サハラブルー」と言う雑貨店がある。そこがカンランの基地だ。私は2日間彼と音楽談義をしてきた。
ストラディバリウス
冒頭のバイオリンの話から始まった。楽器を輸入している知り合いの倉庫で、処分のために置かれていたと話す。音は出るが致命的なダメージがあった。だが少し出る音を聞いた時、「これだ!」と直感したと言う。
譲り受け修理に予算をかけてみると、予想通りいい音だった。「本物のストラディバリウスではないですよ」とはっきり言うが、私は本物の音も聴いた事があるが、この音が好きだ。
そして彼と「いい音には何が必要か」と話がはずんでいく。
渡欧で本物と出会う
北欧音楽の演者になったのは、本物と言える音と出会ったからだと言う。彼はヨーロッパの田舎を定期的に旅し、人との出会や音楽文化を体感する。そして旅の経験を日本に持ち帰り、演奏するための糧とする。楽器との出会いも多く、国内では手に入らない希少な楽器にも出会う。こうして年に一度は本場を訪れ、ヨーロッパのミュージィシャンとの繋がりも生まれていった。この姿勢が彼の基本となっている。
カンランのボーカルアヤコさんは、2001年にスウェーデンのある北欧音楽グループと出会った。「かなりの衝撃でした!一目惚れですね!」と話す。彼女は以降、北欧音楽だけを聴くと言う徹底ぶりだ。
一目惚れの一途から始まり、やがて自身でバンド活動をはじめ音楽を感じ、北欧音楽の繋がりで、夫となる鳥谷さんと出会う事になった。
楽器の話題へ
少し話は変わるが、中世のヨーロッパと言えばルネッサンス、リュートもそれより以前のものを復興させた楽器であった。
調べるとリュートの原型はペルシャ時代までさかのぼる事ができるようだ。つまり西暦前に、今のギターの原型が存在した。鳥谷さんが持つリュートは、現代版に復興された稀有な一本だ。「手に入れる事が出来たのは、幸運としか言えない」と話す。世界に2本のプトロタイプと聞くと、見る目も聴く耳も変わってくる。
他に、まるでかき氷を作るハンドルが付いた「ハーディ・ガーディ」、自分にはワニの顔に見えてしまう、鍵盤バイオリンの「ニッケルハルパ」。
カンランで使われる楽器の音は、ノスタルジックな世界へ聴く人を引き込むのだ。
では、動画でお楽しみください!
さて、場所を「モンドカフェ」に変え音楽談義はつづく。
音楽に対する愛が、バンドアンサンブルとどう関わるのか話し込んだ。「バンドを組む時は男女の関係に似ているかもしれない」と鳥谷さんが話す。
恋愛の初期の頃は頻繁によくデートするもので、バンドも同様に、最初は一緒によく音を出すと言う話になった。まさにアンサンブルとは「恋ですね」と彼は言い切った。
うまく続ける秘訣
「たまたま私たちは夫婦になった事で、活動しやすい。」と話す。そんな彼が奥様に対する言葉に敬意の気持ちがあるのをみつけた。
また妻のアヤコさんもそうだ。北欧音楽を教えてもらった頃の鳥谷さんへの感謝、そして尊敬を持ってバンドメンバーとしての話をしてくれる。
所でおしゃれカフェで楽器を手に、「バンドの繋がりは愛なのか恋なのか」と真剣に話しているを二人、店内にちょうどお客様がいない時間帯だった。
「カンラン」とは
北欧音楽に対する一途な好奇心と、熱い気持ちが途切れないバンドである事が見えてきた。音楽活動に必要となる栄養つまり熱量を、旅する事で蓄えていたのだ。
それと繋がりの関係に「敬意」が隠れていて、そこに「音楽への愛」が足されている。そして恋愛が情愛に変わっていった姿だ。
カンランは、窓の向こうから聞こえる鳥のさえずり、愛と敬意の歌だった。
私に見えてきたもの、それは一目惚れは見る事からはじまり、恋は感じること、そして、愛はおもいやる事だという事だ。
最後にこの記事を書いた自分の胸に、手を当てて聞いてみた。恥ずかしながら足りない自分の音が聞こえてきました。
あぁ、・・とても大切な事、
音を感じる胸の奥で
響いています。
お互いのCDを交換し今回の取材を終えた。毎年9月に鳥羽マリンターミナルで行われるアコースティックイベント(アコースティッカル)で彼らとの再会が楽しみだ。
Special thanks
カンランのCDはサハラブルー店内かHPより購入できる。
kanran
http://www.harmony-fields.com/a-kanran/members.html
北欧音楽のワークショップも開催している。
取材協力「モンドカフェ」
http://www.mondcafe.net/mc/topics.html
おまけの動画
おまけのおまけ動画
【Acoustcal 】毎年9月第一土曜、鳥羽で開催される参加型音楽LIVE!プロ・初心者・ジャンルに関係なく人もアコースティック楽器である事を証明するミュージシャンの集い!イベントFBをご覧ください!
yoshitugu imura。Otona記者。サーファーからフォトグラファーに、海に持っていったギターでミュージシャン活動もする(波音&Ustreet )ドブロギター奏者。 伊勢市在住。この記者が登場する映像