かつお節屋が巡る三重県のかつお節屋さん。
シリーズになるかどうか定かではないですが、勝手に取材を始めました。
かつお節屋に嫁いで9年目の私が、取材を通して三重のかつお節屋さんを繋ぐことができたら嬉しいと思ってます。
ちなみに私は三重県伊勢市にあるかつお節屋、小久保商店の嫁。
伊勢の飲食店にかつお節を配達したり、かつお節の削り体験やお出汁を使った料理教室などをしています。
小久保商店のことは、旦那が過去記事にしてますので気になった方は、こちらをご覧ください。
創業150年を超えるかつお節屋
さて、第1回目は松阪市にあるかつお節屋、創業150年を超える魚斎(うおさい)商店さん。
店頭で爽やかな笑顔で接客されていたのは24歳の御堂恭介(みどうきょうすけ)さん。
現在は82歳の祖父・森禎二さんと祖母・慶子さんと一緒に店を切り盛りしている。
魚斎商店の創業は明治のはじめ頃。
「もう、正確な日付は残ってないからわからんのよ」という、慶子さん。
かつては結納品を取り扱うお店で、そのうちに鰹節も取り扱いはじめたという。

ところで、なぜかつお節が縁起物と言われるかはご存知ですか?
かつお節は“勝男武士”という当て字が使われ(すごい当て字)勝利や成功を連想させる縁起の良い食べ物とされています。
また、長期保存ができることから長寿や繁栄の象徴ともされてきました。
更にかつおを切り分けていく過程で、背側の“雄節(おぶし)”と腹側の“雌節(めぶし)” 一尾から対で取れることから、夫婦円満や良縁を願う意味も込められている。
こうした理由から、かつお節は古くからお祝いごとに欠かせない存在として親しまれていた。
結納を扱う魚斎商店で戦後から取り扱いが始まったとのも自然な流れだったに違いない。
店内には結納商品を扱っていた名残ともいうべき豪華な飾りが棚のあちこちに納められている。
これも、以前はひとつひとつ手作りでつくっていたそうで、大安の日などは婚礼が何件も重なり、その前は作るスピードがおいつかないほど。かつお節も削ってはいくつも式場をはしごして配達し、婚礼のない日は近くのお店に配達し、多忙を極める日々が続いたそう。

魚斎商店の主な取り扱い商品は、かつお節を含む魚の節や昆布・煮干しなど。
魚の節はかつお節以外にも宗田節や鯖節、むろ鯵の節など。
昆布は日高昆布と利尻昆布を主に取り扱っているが、どちらも一等浜で採れたものを入れるようにしているそう。煮干しは瀬戸内海でとれるものが主で、取材させてもらった日は山口県産や広島県産のものが販売されてました。
ピカピカの煮干しは古くなっていない証。
かつお節はほぼ毎日削っているそうで、魚斎商店ではかつお節も煮干しも量り売りで販売しています。
ガラスケースの中から白い紙袋に入れて測ってくれる、そのスタイルも昔ながらで素敵。少量から購入できるのも、嬉しいですよね!

「当事者でいたい」と感じ、と飛び込んだ。
父親は教師で、自分も公務員を目指して法学部に在籍していたという恭介さん。就職という文字が現実になりはじめた時期に、小さい頃から当たり前にあったこの店が、このままだとなくってしまうかもしれない。という危機感を感じた。
「このことの当事者でいたかったんです。」
そこからの行動は早く大学卒業と同時にお店に飛び込んだのだ。
80歳を超え身体が悪いと布団から起き上がれない時もある禎二さんから、直接学べる時は今しかないと、決断した勇気がすごい。
両親からの反対はなかった?と質問すると
「母は、はじめあまり賛成ではなかったように思います。母からしたら、私が勢いに任せて突然言い出したように感じたと思います。『現状を踏まえて、冷静に考えてみたら?』というようなことを言われた記憶があります。
実家であり事情を知っていて、心配してくれてのことだと思います。実際、えい!と飛び込んだところはあるので、ブレーキをかけようとしてくれたのはありがたいことでした。今では、私の考えを尊重してくれています。
父は、色んな思いがあったと思いますが、『実際やってみやなわからんこともあるやろう』と、後押ししてくれました。息子の気持ちを、納得していなくても、理解はしてくれていたのかもしれません。」
真っ直ぐにな思いに、両親の理解も深まっていっているに違いない。
今は朝からかつお節を削り、飲食店へ配達するのが主な仕事。
仕事の中で楽しいことは?と聞いたら、やっぱりかつお節を削る工程だそうで、実際にその場で削りの瞬間を見せていただきました。


機械が動き始めると同時に、ぶわっと店内に広がるかつお節の香り。
かつお節は薄く削ると、花びらのようにひらひらと広がることから「花かつお」を呼ばれる。
薄く繊細そうな見た目で、軽やかな舌触りかと思いきや、しっかりと鰹の風味を感じ、口の中にツナのような旨みがじゅわっと溢れます。削りたてを一口食べると、自動的に白いご飯が欲しくなるのは、もはやDNAに刻まれた反応なのかも。と思ってしまう。
最初は削り機の刃の調整もわからず、禎二さんに聞いても「細かいことは説明してもわからんから、見て覚えろ」というスタイル。
それだけでは足りないと、メンテナンスにきてくれるメーカーの方に直接質問し、まだない知識を入れ、それを日々実践し、よりイメージに近い削り方を見つけていった。
かつお節って、実は生の魚の状態がすごく反映されるものなんです。
お刺身は、脂がのっているものが美味しい、って感じると思うのですが、かつお節に向いてるのは、脂の少ない赤身の多い鰹。
その時の海の状態や、船の中で冷凍されるまでの時間、作られる工程によっても仕上がりに影響があるんです。

「美味しいものをおいしく削ることができるのは当たり前で、むしろちょっと難しい節を試行錯誤してきれいに削れた時に、やった!って思います。かつお節を削っている時が一番楽しいし、ワクワクする!」と少年のように笑う恭介さん。
しかしその瞳には、未来を見据える職人の眼差しが宿っていました。
かつお節屋どうしで共感した「どっちか論」
「どっちか論」これは何かというと・・そもそもお出汁を取らない人は、かつお節や素材からとる出汁なんて難しい、面倒くさいと思って手も出ない。
対局にあるのが顆粒出汁やうまみ調味料入りなんてとんでもない!天然出汁こそ身体に良い!と謳う考え方・・とでも言うのでしょうか。
どちらかを選ぶんじゃなくて、ライフスタイルに合わせてどっちも使って欲しい。
私も、手軽にとれる出汁があるからこそ、出汁の文化がこんなに忙しい現代にも続いていると思うんです。けど素材から出汁をとると、本当に感動するレベルでおいしい!
私も自宅で主宰する料理教室で「出汁」をお伝えしているのですが、
「こんなに香りや味が違うと思わなかった!」
「帰ってかつお節のお出汁を使った味噌汁は、子供が飲み干しました!」など、嬉しい声をいただきます。
だから、お出汁をとったことがない人も気軽に店頭に足を運んで欲しいですね。という恭介さんの考えに、うんうんうん・・と共感しかない。

最後にこれからの魚斎商店の舵とりについて伺いました。
「そうですね・・」と言いながら、ぽつりぽつりとビジョンを言葉に変換してくれる恭介さん。
「このお店は150年続いてきてるけど、僕、伝統の為にある伝統は意味がないと思ってて。
伝統ってその時の人々の生活に寄り添って、ひとつの形に括り過ぎなかったからこそ続いてきてると思うんです。
店頭でお客さんの顔を見ながら販売できるって、消費の一番先にいるじゃないですか。それがうちの強みやと思っていて。ハードル高く感じたり、難しいって思う人ほどきて欲しい。
食べてくれる人を増やしたいですね!」
その言葉にも、激しく首を縦に振る私でした。
わざわざ時間を作ってでも、一度訪れてみて欲しい。
見て聞いて漂う香りに触れて、その場でしかできない体験をぜひ!
三重県伊勢市にあるかつお節屋・小久保商店の嫁。かつお節というバトンをたくさんの人に繋ぐため活動中。出汁と発酵の料理教室主宰・夫婦でかつお節の削り体験をおこなったり伊勢うどんのキッチンカーも走らせている。旦那ogurock もOTONAMIE記者。
好きなこと:かつお節・発酵・コーヒー・伊勢の文化・人と人をつなぐこと。












