いつも元気なわんわんです、とはなれない8月後半の夏バテ気味な日々。
娘が毎朝観ているいないいないばあっ!を眺め終え、汽車で南に向かった。
仕事で訪れた港町・尾鷲は蒸し暑く、なんとなく食欲もない。
シェアスペース土井見世で行われるイベントのリハーサルを終えてからの昼食。
地元の人に近くで美味しい料理のお店はないかと尋ねると、歩いてすぐのところにある来々軒がよいと言う。
そしてその方は、子どものころから来々軒のカタヤキソバが好きでよく通ったそうだ。
尾鷲の町はどこか独特。
漁業だけでなく林業の町でもあり、建材が立派な古民家が残っている。
ここ土井見世もそうだ。
そして古民家だけでなく、どことなく懐かしいノスタルジックな町並みが残る。
来々軒という、いかにもマンガやドラマに出てきそうな屋号のお店もそのひとつ。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」。
少しくすんだ赤いテーブル。
カレンダーには豪快に表現された休業日。
店員さんが冷えたおしぼりと麦茶を持ってきてくれた。
迷わずカタヤキソバを頼む。
暑さを和らげるためノンアルコールビールも、一人前の餃子でスタミナも・・と。
町中華の豊富なメニューを見ると、欲張ってしまいたくなる。
よく冷えた店内。
湯気をもくもくと出しながらカタヤキソバがやってきた。
焦り気味で急いでひとくち。
熱っ!
私はひとくち目のカタヤキソバを、スマートに食べる方法をまだ知らない。
運ばれてきた餃子も具がむぎゅっと詰まっていて美味しい。
いつまでも冷めないカタヤキソバの5口目くらいで思った。
量多め、攻略しきれるのだろうか?
カタヤキソバ、餃子、ノンアルビール。
最初は完食できるか不安だったカタヤキソバも、気が付けばあと少し。
ボリュームもあるのだが、野菜の優しい味わいと旨味、ほどよい塩加減とエビやイカなどシーフードの食感がアクセントになったスタンダードな味わいはもうひとくち、もうひとくちと食べ進みたくなる。
箸を運ぶペースが上がってくると、腹の底からチカラが湧いてくるのを感じる。
完食後、数十分前まで夏バテ気味だったことなど忘れるほどに流れる汗と満腹感。
人は栄養をカラダに入れると元気になる。
そんな当たり前のことを、久しぶりに思い出した真夏の午後。
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夕方にはイベントも無事に終了し、久々にあった尾鷲の仲間とあーだこーだと楽しい会話。
夕飯に向かうも話は尽きない。
最後にむかったのはお好み焼きの奈々。
お好み焼きとあるが、惣菜も豊富な店だ。
店を切り盛りする女将さんは、和歌山の山間部の出身。
女将さん:和歌山からでてきて、こんな大都会でよう住むかいなと思った。地元は信号はないし、警察が走りよることはまあないし。
このお店は夜遅くまで営業していることでも有名。
女将さん:最初は午前11時に店を開けていたけど、だれもこんかった。時間まちごうとるんかなと。次は午後の3時に開けて8時・9時までしていた。それでもちょろちょろとしか客が来ない。
知り合いに話すと、ハシゴ酒文化のある港町だからと教えてくれた。それからは徐々に開店と閉店の時間を遅くしていった。
女将さん:午後8時に開けて午前3時に閉店。お客さんがいたら朝5時まで開けるときもある。夏はもう明るい時間。やっと自分の商売ができるようになった。ごはんがあると人が来る。お母ちゃん、刺身も置かなあかんで。そうやってお客さんに育ててもらった。
港町の暮らしに馴染んでいったお好み焼き屋・奈々。女将さんは80歳近くになる。尾鷲の好きなところは?
女将さん:魚は釣れるし。それがいちばんええ。はよ起きて釣りに行って、味噌汁の出汁をして。
美味しいものをたらふく食す。カロリーオフな現代に少し疲れを感じていたカラダとココロに、港町は元気を与えてくれるのでした。
来々軒
尾鷲市中村町1−6
0597-22-1272
お好み焼き奈々
尾鷲市野地町12−46
0597-22-9538
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事