土曜日の昼下がり、とある建物に入った高校生たちは口を揃えて「おおぉー」と声を響かせました。
ガラス張りでとても開放感のある空間には、研究室やオフィス、打ち合わせや寛ぎスペースなどなど。棚には、普段よく目にしているお馴染みな商品から、色鮮やかな製品が展示されています。
ここは三重県松阪市大口町にある「ミエラボ」。多様な人材が集うコ・クリエーションの場として、保冷剤や作業用手袋の製造を営む三重化学工業株式会社(以下、三重化学工業)が新たに立ち上げた部門、それが「ミエラボ」です。
今回、「ミエラボ」を訪れたのは宇治山田商業高校の高校生たち。ビジネスプランコンテストで三重化学工業とのコラボをきっかけに、2022年2月に完成した「ミエラボ」を初訪問することに。本記事では、そんな高校生たちのミエラボ訪問の様子をご紹介します。
こんなところで働いてみたい。ミエラボを見学。
三重化学工業の水谷さんにご案内をいただき、ミエラボ内をまずは見学。
ー水谷さん「ここは、実験室です。例えば打ち合わせの際にちょっとサンプルを作れる、そんな空間になっています。」
ー水谷さん「ここが、事務所になります。モニターに映っているのは製造現場です。」
保冷剤や作業用手袋などの製造現場をリアルタイムで映るモニターにはマイクも内蔵されていて、いつでも会話ができます。
そして、靴を脱いでくつろげるスペースも完備されています。
「うわぁ、おしゃれ!」、「すごすぎる。」と高校生たち。普段、なかなか訪れることのない企業訪問、しかもミエラボという新しい取り組みの場に目を輝かせました。
限られた時間でやり抜く力。ビジネスプランを振り返る。
高校生たちは三重化学工業と連携して、高校生や、デスク作業が多い大学生や社会人に対して、目や手足のケアなどの用途で使える保冷剤を開発するビジネスプラン「パズルジェル~温めることもできるカスタム保冷剤~」をまとめました。
ミエラボのミーティングデスクに専務取締役の山川輝さん(以下、山川さん)も合流して、ビジネスプランの振り返りと感想を共有し合いました。
ー高校生「経験が大切だと感じました。今回、実際に保冷剤を作らせてもらった経験があったからこそ、ビジネスプラン発表会で受け答えができて。実体験はすごい根拠になり、説得力のあることを学びました。」
ー山川さん「実際に形に出来たのは良かったよね。空想上で終わってしまうとそれこそ、寂しい。形まで持っていけただけでも、とても良かったと思います。」
限られた時間の中でやり抜いたこと。最近、山川さんは従業員に「GRIT(グリット)やり抜く力 」の話をされるそうです。
普段仕事をされる中で、自分の中で絶対にやり抜くという気持ちがあれば、技術は後からついてくるかもしれません。ただ、それはとても難しいことで、誰もができることではないと山川さんは話します。
ー高校生「一番びっくりしたのは、知らないだけで身近にはすごい場所がいっぱいあるなっていうことです。目に見えない高い技術力を持っていたり、企業名を知らなくても商品名は知っていたり。教えていただいて、すごく勉強になりました。」
ー山川さん「今回の経験で皆さんの同年代、もっと言えば社会人でも知らないようなことが頭にいっぱい入っていると思います。それを、今度は自分の言葉でアウトプット+実行して、自分のものにする。そこまで、落とし込んでいけると良いと思います。」
ビジネスプランプランの取り組みでの学びや経験は、漠然と思い描いていた将来を描けるようになったと話す高校生も。山川さんや水谷さんも、色んな気付きや刺激をもらったと話しながら、終始、和やかな雰囲気がミエラボ内に広がっていました。
カードゲームで楽しく。アイデアや働く信念を見える化。
ビジネスプランの振り返りを終えた後、せっかくなのでこれをやりましょう、と水谷さんが取り出したのは・・・「ブレストカード」。
「ブレストカード」は、ビジネスや様々なシーンでの発想力を鍛えられて、チームワークの向上や頭の体操にもなるカードゲームです。
ざっくりとしたルールは、お題を決めた上で、1人2枚ずつを引いたカードの絵柄にあったアイデアを話します。そして、良いと思うアイデアにチップをかけて、チップを取り合うもの。
「むずかしー」と頭をひねりながら、アイデアを出し合う高校生たち。おおぉとうなるアイデアが飛び出たり、それってどういうこと!?と突っ込みを受けるアイデアが出たりと、白熱したアイデア発表合戦が繰り広げられました。
続いて、付添いの株式会社Dream3.0の黄山さんが取り出したのは「わがままカード」。
働くことに対して、自分が何を重視するかを語り合うゲームです。手持ちのカードは5枚で、カードを1枚引くごとに自分が重視するカードを残し、そうでないものを捨てます。最終的に残ったカードで、自分が最も重視する働く価値が見える化されます。
先ほどのブレストカード同様に、うーんと頭をひねりながらカードを取捨選択する高校生たち。
手札から除外したカードは、その理由を説明することで、共感や自分とは違う価値観を知るきっかけに。最後はそれぞれ残したカード5枚を発表!
競争、合理性、完璧、人、影響力、創造性、協調などなど。働く上で大切にしている価値観も、5年後、10年後には変わっているかもしれません。高校生目線、社会人目線でそんな話も語り合いながら、価値観を楽しく共有し合いました。
学びや経験を得て、それぞれのターニングポイントへ。
●ミエラボ訪問後の高校生の感想抜粋
- 「人それぞれ言葉の捉え方が違って 納得することだったり、驚くようなことがありました。人と話し合うことで、新たな考えが生まれるとはこのような事なのだと感じました。 」
- 「ミエラボがとても綺麗な場所で驚きました。1つの建物に様々な空間があって、仕切りがなく、アットホームな感じでとても良かったです。」
- 「1番印象に残ったのは、三重化学工業株式会社の仲の良さです。上下関係の使い分けが凄く上手くて、本音を先輩に言えるからこそ、あんなに良い商品を作れるんだなと感じました。」
- 「(わがままカードに関して)私は全体的に内心が安心するような価値観を残していたので、将来仕事に就く時にこの価値観を重視するんだなと思いました。けれど、これは今の価値観なので、仕事に就いて色んな経験をしたら価値観も変わっていって、今とどのくらい変わったのかが気になりました。」
参加した高校生たちは新年度から3年生となります。就職や進学、それぞれが自分の道を選択する年。今回のビジネスプランでの取り組みやミエラボへの訪問で得た学びや経験が未来へのステップに繋がっていく、そんな印象を受けました。
人と人の繋がりが広がったり、新しいアイデアが生まれたり…成長した高校生たちがミエラボを再訪した時、想像もしていなかった化学反応が起こるかもしれません。
濱地雄一朗。南伊勢生まれの伊勢育ち。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごす。探求を続けると生まれた疑問、それが「何で◯◯が知られていないんだ」ということ。それなら、自分でも伝えていくことだと記者活動を開始。専門は物産と観光、アクティビティ体験系も好物。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。