「コロナに背中を押されました。学校の体育館や公民館も使えない。活動場所がどんどんなくなっていく中で、自らスタジオをつくるしかない!って」
そう話すのは三重県伊賀市でダンス指導などを行っている稲垣智子さん。3児の母であり、夫とともにバーを経営しながら、自身はダンス&ダブルダッチのサークルを主催し、フィットネスのインストラクターや、伊賀市の介護予防運動リーダー養成講座の講師も務めるパワフルウーマンです。
愛知県名古屋市出身。10代のとき「夜のクラブ活動」でダンスに出会い、「24時間踊っていたかった」というほど夢中になり、ほぼ独学でストリートダンスのキャリアを重ね、コンテストでも多数の受賞歴を持つ稲垣さん。25年以上ダンスを続けてきた理由は「好きだから!」と笑顔できっぱり。
夫の実家がある三重県伊賀市に移り住んだのは10年程前のこと。
「私はどこでも生きていける人間なので、いいんじゃない?って感じで」伊賀での暮らしをスタート。夫婦でバーの経営をはじめた一方で、伊賀でもダンス活動を続けてきました。
現在は、主催するサークル「FiveDance&DoubleDutch」の週3回の活動に加え、週5日はフィットネスのインストラクター、その隙間で伊賀市の介護予防運動リーダーの養成を行っています。「下は4才から上は90才くらいの方まで、幅広い年齢の方に関わらせてもらってます」。
稲垣さんはサークル活動をするときに大切にしていることがあります。「ダンスやダブルダッチの技術的なことはもちろん大事ですが、『人として成長できる場所』でありたい。子供たちには心身ともに元気でいて欲しい。だから春は田植え、夏は合宿、秋は稲刈りや芋掘りなど、自然とふれあえる体験や、異年齢交流を積極的に取り入れています」。
挨拶をする、靴を揃える、荷物の整理整頓、思いやりを持って人に接するなど「サークルの仲間とのやりとり、活動のなかで、当たり前のことを当たり前にできる関係を築いて、何かに熱中する楽しさ、好きなものに出会える経験をたくさんして欲しい」そんな想いで活動を続けてきました。
■コロナ禍で環境が激変
しかしそんな活動にもコロナが大きく影を落とします。「長年、学校の体育館や公民館をお借りしてサークル活動を続けてきましたが、コロナの影響でどんどん使えなくなり、この2年間は練習したくてもできない日々が続いています。青空の下で練習することもありましたが、冬は寒いし、夏は暑い・・・。大会に向けて頑張る子たちが練習する場所がなくて・・・」。多いときは50名いたサークルのメンバーも今は30名程に減りました。
「めちゃくちゃ悩みました。いつかは持ちたいと考えていた自分のスタジオがあれば、子供たちの練習場所を確保できる・・・けど、コロナで収入が激減している今、正直、キツイ・・・」
そんな稲垣さんのところには、同じようにコロナの影響を受けている幅広い世代からいろんな声が届きました。運動する機会が減った、サークル活動ができない、仲間と集えない、楽器の練習を思う存分する場所がない・・・などなど。
そんなとき、偶然、イメージに近い物件に出会い、予算交渉の末「なんとかなりそう」な額まで折り合いが付きました。「もうやるしかない!」と腹をくくり、改築のための金策に動き出します。「融資も受けますが、クラウドファンディングにも挑戦中です。あきらめないで、今できることをやってみようと思いました。わがままなお願いだと思いますが、皆様の支援で、私の背中を押して欲しい。伊賀に、いくつになっても自分らしくいられる場所、『好き』『楽しい』に出会い繋がれる場所をつくりたいです」と、熱い思いを語ります。
改築予定の物件は2階建ての倉庫。まずは1階をダンススタジオとして改築し、予算に余裕があれば2階を完全防音の音楽スタジオにする構想です。主催する「FiveDance&DoubleDutch」の活動拠点としてだけでなく、子供から高齢者まで幅広い世代に利用してもらえるような場所であり、さまざまな文化にふれあえる楽しい基地のような拠点にしたいという思いを込めて「Culture Base Five」と名付け、2022年5月のオープンを目指して奮闘しています。
「生きにくい世の中で、なかなか自分らしくいられず小さく目立たなくしようとしている子どもたちにたくさん出会ってきました。ダンスやダブルダッチを通じて自分が解放できたり、自分らしく生きるっていいじゃん!って感じてもらえたら嬉しい。学校や家庭以外での「居場所」となるような環境をつくりたい。「Culture Base Five」がジャンルや目的、年齢層もバラバラな点と点を結ぶ場所になれたらいいなと思っています」
Culture Base Five(ダンススタジオ・音楽スタジオ)
三重県伊賀市緑ヶ丘本町1703-2
2022年5月OPEN予定
\3月末締切/改築のためのクラウドファンディング
Five Dance&DoubleDutch Facebook
kanzaki chiharu。OTONAMIE公式記者。伊賀市在住のフリーライター。出身地、広島のタウン誌→東京の編集プロダクション→フリーランスとして独立して早20年。現在は伊賀に拠点を持ち、伊賀の情報誌の執筆をはじめ、企業広告コピー、イベント企画提案などを手掛ける。日本酒好きが高じて、「伊賀酒DE女子会」の企画運営をはじめ、日本酒関連の執筆、コーディネート、イベント運営も行う酔っぱライター。得意ジャンルは日本酒、伊賀情報。2016年「日本酒女子普及委員会」会長に就任。https://ameblo.jp/iganonihonsyudaisuki/