「サザエ」と聞くとどのような姿を想像するでしょう。
渦巻きで、なんかとげとげしている貝、恐らく多くの人が上記の写真のような姿を想像すると思う。
これは殻に籠っている状態、大型スーパーの鮮魚コーナーなどで売られている時は大体この姿。
あまり食べたことがない人でも、サザエと聞いてこの姿を思い浮かべる人がいるほどサザエは有名な貝で人気の高い食材である。
そんなサザエ、ただ有名なだけではなく、生きてる時は他の貝とは結構違う生態をしている。私たち人間と同じような所も…
歩くサザエ
サザエは主に海藻を餌として食べている。しかし、その海藻もいずれは減ってしまうので餌を求める都度移動を行う。
貝類の多くは「腹足」と呼ばれる足を持つ。
お腹全体を地面に付け、ズルズル引きずるように歩くのだ。
アワビや陸の貝類のカタツムリも同じ腹足の仲間である。
サザエも同じ腹足を持つので、引きずりながら移動するが、他の貝とはかなり違う。私達と同じ様に「歩く」のだ。
腹足が左右に分かれており、これが右足、左足となって片足ずつ前に動かしながら移動する。
右足を移動させている時は左足は止まっている。私たちと同じように。貝とは思えない移動の仕方である。
サザエのとげ
サザエの殻にも違いがある。とげとげしてるタイプと特に何もないタイプだ。
サザエと聞き、真っ先にとげのない方を思い浮かべる人もいれば、長いとげが殻全体に生えているタイプを思う人もいる。
南伊勢町阿曾浦にある友栄水産に売っているサザエを見せていただいた。
つぼ焼きにしやすい小ぶりなサザエでも、やはりとげ有りと無しが混ざっている。
よく見ると、とげがまだ短いのもいる。
生まれつきとげの有り無しがあるのではなく、必要に応じて生えてきているのだ。
とげが必要な状況、それは転がった時。
サザエは万一転がってしまった場合、何処かに止まらないと起き上がることができない。
その時殻にとげが生えていると止まりやすくなるのだ。
潮の流れが強いところにいるサザエは転がるリスクも高いので、とげが生えやすい傾向にある。
逆に穏やかなところに生息しているサザエは転がるリスクも少ないので、とげ無しの状態で成長していく。
周囲の状態を確認しながら身体を変化させているのだ。
サザエだけでなく、名前はよく知っていても、どのようなものかは知らない水産物は多い。
生態や特徴を少しでも知ることで、次回食べる際に特別に感じるはず。
日々食材に感謝を込めて頂きたいですね。
南伊勢町地域おこし協力隊 漁村インストラクター 神奈川県横浜市出身。東京の専門学校で幾つかの漁業を経験した後、インターンシップで訪れた三重県南伊勢町の漁場の豊かさやリアス海岸に魅力され移住。 生物全般が好き過ぎて、マダイ養殖のエサやりをしながら様々な生き物を観察。生態をもとに生き方の過程などを想像して、毎日楽しんでいる(noteにその様子を綴っています)。特に気になった生き物は、飼育や標本作製もする。