久々に出会った、味の想像ができないもの。
それは、伊勢海老尽くしの向こう側。
とにかくその伊勢海老尽くしが、マジですごかったので振り返ってみます。
「最初から最後まで思う存分」が始まった
明治8年からの歴史を紡ぐ、和洋折衷な料亭で結婚式場のザフナツヤ。
雨のしとしとが、厳かさを際立たてる。
迎えてくれた仲居さん?ギャルソン?に案内され個室へ。
この日のお目当ては、伊勢海老づくしのNEWコース「ISEEBI」。なんと3万円(個室利用料2時間分を含む)。
高っと思ったけれど、帰り際には安っと感じた伊勢海老エンタメ。
さて、一皿目。
「ISEEBIの始まり」という洋和が組み合わさった5種の前菜。
とにかくひたすら海老と向き合う2時間が始まった。
伊勢海老の沼へ
前菜から笑えてきたのが、5種全てが伊勢海老で、部位による味や食感の違いを比較できること。
―—え、脚肉食べられるの?!
――なんすか、この食感。飲み込みたくないんですけど。
――牛乳と生クリームの代わりに伊勢海老の味噌?!
海老三昧な前菜の次は、お造りとカルパッチョ。もちろん全て伊勢海老だ。
続いてはしゃぶしゃぶ。言うまでもない伊勢海老である。
火の入り具合で、食感も甘みも変わる。こんなに変わるの?!ってくらい変わる。
――きゃはっ!なんだろう、いろいろ楽しいぞ!
いちいちリアクションしたくなるエンタメ性。
海老エキスを含んだ出汁は一滴残らず完飲。日本の出汁文化というのは本当にすごい。
と、お部屋にシェフ登場。
シェフ:「しゃぶしゃぶの残り出汁を使った和ビスクスープを作りますね」
器は空っぽ。一瞬の間。
シェフ:「大丈夫です。今はコロナ対策で、出汁はこちらでご用意していますので」
昆布とかつおの出汁に、伊勢海老の頭をひたすら潰してトマトと煮込んだ凝縮ビスク。
香りは和。飲んだら洋。フナツヤらしさを活かした融合スープだ。
伊勢海老深すぎるだろ。
まだ尽くす。でも飽きない。
次から次へと色んな伊勢海老が現れる流れで、自家製生麺を使用したパスタが登場。
伊勢海老の味噌と出汁のソース。
柚子胡椒と青さのりで、少し味変を意識されているとのこと。
――いやぁ、づくしますねぇ…
シェフ:「づくすんですよ」
続いて、お口直しのグラニテ。
ここにもいた、伊勢海老。マイヤーレモンとノンアルのスパークリングワインが合わせてある。なんてシャレオツな伊勢の海老だ。
――いますねぇ…
シェフ:「いるんですよ必ず」
そして驚くことなかれ、メインはなんと、伊勢海老です(もうお気付きですね)
柚香焼きとグラタンという和洋のアベック!フナツヤの得意技である。
もう尽くしオブ尽く尽く。でもね、飽きないの。
ひとりだけど、テンション上がるの。
ここでまた目の前での演出。
土鍋で炊かれた伊勢海老ご飯。バターで焼いた伊勢海老が蒸らされている。
ほぐして混ぜている時の香りがマジでやばい。
伊勢海老の頭はそのまま味噌汁へIN。
日本人なら垂涎間違いなし御膳。
香りは洋。食べると和。
ふぁぁ―――!!
こんなのはじめて♡なスイーツ
コースはいよいよシメへ。
実はデザートはホームページ上、シークレット。コース紹介にも「???」と表示されている。
さて何が出てくるのか。ここまで来たら、最初から最後までの期待が膨らむ。
よし来いっ海老!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!
最後まで伊勢海老!!
期待を裏切らないどころか、むしろ想像を超えてきた伊勢海老パフェ!!
いわゆる「●●尽くしコース」といっても、シメにバニラアイスとか普通のデザート出てくるよねっ。
聞くと、それを払拭すべく、本コースは伊勢海老デザート開発ありきで進んだそう。
伊勢海老ダシのパンナコッタ。マスカルポーネクリームには、殻で作った自家製伊勢海老パウダー入り。更に殻はせんべいとなり、ホワイトチョコレートでコーティングされている。
パティシエール:「伊勢海老とベリーが絶妙に合うんです」
想像できない。ちょっと味想像できない。
そして思わず出た。
――こんなのはじめて♡
パティシエール:「伊勢海老らしさを活かすパフェを考えました。そんなこと手掛けた経験のある人いないんじゃないですかね(笑)。正解がないから難しかったです」
”私、伊勢海老のパフェを食べたことあるの”
そう言えるだけでも価値ありだけど、ここまでひたすら海老と向き合った流れで食べるからこそわかる美味しさがあると思った。
ここまで2時間。独りだったけどめちゃ楽しかった。
「海老食ったなー」という満足感がすごい。
思わず拍手!これは伊勢海老のエンタメだわ。
売ることをやめない。仕入れ続ける。
シェフ:「本日のコースで、伊勢海老6尾お召し上がりいただきました。しかも余すことなく」
3万円、高くない。
この価格でこのクオリティで提供できるのは、フナツヤが三重県南伊勢町の外湾漁協に買参権を持っているから。
毎週2日は魚介類を買い付けに海へ。
水産を取り巻く実情を目で視て、海と飲食の現場を把握する。気象変動、魚離れ、コロナ禍による飲食店休業などにより、生産者の厳しさをリアルに感じる。
もちろん飲食店も大変。しかし飲食店だけでは業界は回らない。フナツヤは常に生産者と共存する方法を考えている。
良いモノをちゃんとした金額で買い、浜値を上げる努力。営業時間が短くなっても、自分たちは売ることをやめない努力。生産地で仕入れる量をなるべく減らさない努力。コロナ禍では、お客様に提供する価格を下げ、販売量でカバーする取り組みを行っている。
シェフ:「生産者さんがいてこその飲食です」
――生産地の状況にあわせて仕入れる魚種が変わるというのは、現場としては大変ではないですか?特に婚礼料理など。
シェフ:「大変なところはありますがストレスはないですね。生産地に寄り添ってメニューをアレンジする。料理人として当たり前のようですが、業界的にはそうなっていないのが実情です」
――食材との出会いが楽しみになりますね。
シェフ:「楽しんでもらえたら嬉しいです。地域丸ごとというか、フナツヤは広い意味でのレストランだなと感じています」
伊勢海老をあらゆる角度から攻めてきた伊勢海老コース。
伊勢海老の可能性を見せられた。なんなら2時間前の私ったらなんて無知だったんだろうと反省するレベル。
これを味わった人は恐らく「記念日にフナツヤに行ったね」ではなく、「記念日にめっちゃ伊勢海老食べたね」という記憶に書き換わり、生涯忘れられない想い出になるだろう。
いやー海老食ったわー。もっかい拍手!!
(近々伊勢海老かき氷が始まるらしいよ)
ザ フナツヤ
住所:三重県桑名市船馬町30
電話:0594-22-2728
URL:https://www.thefunatsuya.com/
※伊勢海老づくしのNEWコース「ISEEBI」は3日前迄に要予約(2名様より)
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事