三重県道31号、宮川添いを上流に向かって車を走ること20分。
大台町の天ケ瀬という地区に、2階建ての小さな工場がある。
ウッドクラフト廣田さん。家具と木工品の工房だ。
建屋の中に入ると、樹木のいい匂いが漂う。
工房の主は廣田利夫さん。御年83歳だ。
元々は、大工として建築関係の仕事をしていたという廣田さんだが、
第一線を若手に任せて、もっと木のモノづくりに携わりたいと、木工の職人になった。
大台町産の樹木を使い、大工の時代に培った技術を活かし、椅子やテーブルといった家具や、
幼児玩具やペンケースなどといった木工製品を、日々この工房で作っている。
そのモノづくりの姿勢はとても丁寧で、「廣田さんの家具じゃなきゃ」と、
遠方からも工房にお客さんが訪ねてくるという。
「最近の家具屋は、木の性質を知らないで(木を)寝かせないで、すぐに製品化してしまうから、買ってから数年で木が反り返ったり歪んだりする家具もある。」
「うちは木をまず何年も寝かせて乾燥させてからじっくりと製品を作るので、家具をすぐに欲しいと思っても、お客さんには待ってもらう時もあるんよ」と廣田さんは語る。
工房の1階には、大工時代から買い付けた木材が所狭しと並ぶ。
20年30年と寝かせ、乾燥させた木材は、杉、檜、高野槇、合歓、欅、松、桜…と多種多様だ。
壁に目を向けると、平成22年に森林フォーラムで「みえの木」ベンチ対象と優秀賞を受賞した時の写真が飾ってあった。
廣田さんの丁寧なモノづくりの姿勢が評価された証だ。
廣田さんに話を伺っている中、訪ねてくる人が。
木工に興味があり、時々廣田さんにアドバイスを受けにくるという。
こういった木工を趣味とする愛好家に、無償で木の使い方や木工道具の使い方を教えているという。
自身の木工の知識を惜しげなく伝えている。
工房には『一意専心』と書かれた木片が飾られていた。廣田さんの座右の銘だと言う。
廣田さんの木工に対する想いがひしひしと伝わってくる。
長年の大工と木工作業で、廣田さんの手はゴツゴツとしていて無骨だが、深い味わいのある手だ。
正月も、お盆も、365日の毎日を、この工房で独り作業するという。
「もう歳だし、家族には『お父さんはこの工房で死ねたら本望だね。』と言われるんさ」と笑う。
仕事場で死ねたら本望だなんて、なんて、うらやましい生き方だろうか。
世の中、そこまで熱愛した仕事に就ける人はそうはいない。
この工房は仕事場でもあるけれど、廣田さんにとっては終の棲家で楽園なのだな。と思った。
工房の1階に保管してある木材は、毎日木工を続けても、あと100年分はありそうだった。
廣田さんは、樹の香りが漂う工房で、これからも様々な作品を作り続けることだろう。
ウッドクラフト廣田さんHP
https://hirota.odai.or.jp/
大台町のふるさと返礼品にもなっています!
https://furunavi.jp/product_detail.aspx?pid=61286

自然が大好きな会社員。ビルが建ち並ぶ大都市から転勤で伊勢に来て早5年。猿が、鹿が、狸が、イタチが、大手を振って道を横切る三重県南部の田舎を、営業車で回る日々を満喫しています。営業の傍らで見つけた三重の田舎の魅力を発信したいなぁ。得意ジャンル:自然、秘境、アウトドア。