ホーム 01【食べに行く】 大田食堂の焼きそばは、硬いココロを柔らかくほぐす。

大田食堂の焼きそばは、硬いココロを柔らかくほぐす。

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おとなり愛知県の名古屋名物みそ煮込みうどんは、生麺を味噌で煮込むことで味を麺に染み込ませ、麺は噛み砕くように食すほど固め。

海女の国・鳥羽市相差には、それとは真逆の世界がある。大田食堂の焼きそばだ。

 

 

無性に食べたくなる!独特な大田食堂の焼きそば。

良く晴れた春の昼下がり、相差出身・伊勢市在住のカメラマンと仕事で鳥羽市にいた。私は以前から、知り合いのSNSで見た大田食堂の焼きそばが気になっていて、カメラマンに聞くと「あー、大田食堂のあれねー。久しぶりに行ってみますか?」ということになり到着。

店は、夏に海水浴で賑わう、千鳥ヶ浜海岸の崖の上にそびえるように建つ。

店内からの眺めがとてもきれい。

焼きそばを注文するとカメラマンは「ライスは要らんの?」といい、迷わず焼きそば+ライスを頼んでいた。焼きそばとライス、炭水化物まつりになってしまうのでは・・。「ここの焼きそばは、ライスがないと何か足りやんのさ」とカメラマン。

手際よく調理をしている店主に聞けば、地元のお客さんは入店して席に着く前に「おれは大」「おれは小」といった具合に、メニューに目を向けることなく焼きそばを注文するという。相差のソウルフードなのですか?とカメラマンに聞くと「そうかも知れんねー。小さいときから食べとるから、あんまり考えたことなかったわ」。そう!それそれ。本当のソウルフードとは地元の人にとって、当たり前すぎる存在であって欲しいと思う。

できあがった焼きそばは白かったが、塩焼きそばではない。この上にソースをかけてからいただく、後がけスタイル(そんなスタイルの焼きそば、他にあるのでしょうか!?)。

しかも、ドバドバかけた方が美味しいという。麺は柔らかいというか、とても柔らかい不思議な食感。食べたことがないのに懐かしさを感じるのもこれまた不思議だ。そしてごはんに合うというのも納得できる。

お好み焼きやたこ焼きは、ドロっとした食感があってこそ美味しい。大田食堂の焼きそばもドロっとしているという表現が近いのかも知れない。だからごはんの粒食感と、ソースに絡んだドロっとした麺、豚肉、キャベツが合う。加えるならビールにも合うと思う。

食べ終わり、はじめて食べたこの味に感動したことを店主に伝えると「ありがとうございます。自分は物心ついたときから、焼きそばはこの味なんで」と話してくれた。そう!そう!ソウルフードとはそうあって欲しい。

 

 

めかぶガッカリあるあるに、ほっこり。

大田食堂の焼きそばの麺は自家製麺で、通常より短い。約10分、たっぷりと時間をかけて茹で上げ、油を絡めた後、さっと炒める。なのでドロっとした食感でも短めの麺なので、口の中に残りにくい。

このやり方は先代から引き継いだと店主はいう。先代とは現在の店主の親戚筋にあたるおじいさんとおばあさん。

そして倉庫には、割り箸がたくさんあった。

店主:これは海女さんの海女小屋で薪に使うんです。海からあがってすぐに温まりたいときに、割り箸だと火が付くのが早いので。

さすが海女の国・相差。実はこの日、私とカメラマンはワカメ漁の取材をしていて、話はワカメの根の部分であり、伊勢志摩の春を告げる「めかぶ」の話題に。

カメラマン:取材でいっぱいワカメもらってきたけど、いる?
店主:うちにもいっぱいあるわー。

そんな会話を、つい笑いながら聞いていた。

店主:小さいときから、この時期になると獲れたままの姿でもらうんですが、めかぶが付いてないとガッカリするんです。
カメラマン:そうそう、めかぶないとガッカリ。

こいのぼりの時期には「ひじき」など、海藻を通じ食で季節を感じる暮らしに、私は少しうらやましさを感じた。ごちそうさまをすませ、店を出た。

カメラマン:ぼろぼろやなー、暖簾。
店主:たいがい替えなあかんなー。

風光明媚な伊勢志摩に流れる時間はゆったりとして柔らかいと思う。
腰のない伊勢うどんも、食材が豊かな地域の朗らかな人柄もそうだろうか。
そんな柔らかい時間と焼きそば、そして美しい海に癒されたのでした。

写真:y_imura

 


 

大田食堂
鳥羽市相差町1457-2
0599-33-6675

 

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