朝が寒くて困る。
お布団から出たくないし、永遠にお布団を抱きしめていたい。
冬の朝6時半なんて、まだ暗くていっそほとんど夜だし、床も壁も冷たいから起きられる気がてんでしない。
アラームを止めて心の中で8回くらい号泣して、ようやくお布団にお別れを告げる。
週の半分は朝からそんなふうにぐずぐず言っているので、起きてからの時間が慌ただしくてしょうがない。
子どもを起こして、着替えている間に朝食の用意をして、食べている間に髪を結ってやって、水筒の用意。目が覚めない長女に何かしらのはっぱをかけて、ごはんを食べさせる。
行ってらっしゃいと見送って、お残しされた朝食を見れば、しっとりと罪悪感が寄り添ってくる。
もっと早く起こさないといけないよねぇ、とか、そもそも私がもっと早く起きないとねぇ、とか、お腹いっぱいたべられなかったかもねぇ、とか、食器を片付けながら後味の悪い朝になってしまう。
*
週の半分はそんな調子で自分にげんなりするばかりなんだけど、そんな私にもスーパーカードが1枚だけある。
そうそれは、泣く子も黙る井村屋の肉まん。肉まんである。
冷蔵庫から出す、3秒。
さっと水にくぐらせる、2秒。
食品ラップをふんわりかける、4秒。
電子レンジで30秒。
やけどに気を付けてお皿に乗せて、食卓へ、4秒。
ここまで、43秒。
これ以上短い朝食への最短ルートを私は知らない。
あとは長女がハフハフしている間に、昨日のお味噌汁を温めて、みかんを渡せばよいのだ。完璧。
肉まんっていうのは、糖質もたんぱく質も、なんなら野菜だって摂れる完全栄養食なので、親心という側面においても安寧。
長女は卵かけごはんすら朝はなかなか喉を通らず、朝食に時間がかかるのだけど、肉まんに関してはその限りではない。
初めて朝食に肉まんを出した日、ぺろりとひとつ平らげた長女を見て、驚いた。肉まん、できる子だった。
そんなわけで、「朝の冷え込みが云々」と天気予報が騒ぎ出したら、とりあえず肉まんを買う。肉まんを買っておきさえすれば大概はなんとかなるのだ。だって肉まんはあったかくておいしい。
今日の朝ごはんは肉まんだよ、と言って喜ばない子はうちにはいない。
*
もちろん一も二もなく肉まんと言えば井村屋の肉まんを買うわけだけれど、井村屋について話すとき、避けて通れない商品があるのでここでついでに書かせてほしい。
井村屋と言えば、あずきバー。はもちろんなんだけど、今日お話ししたいのは「やわもち」。
あれは数年前、出先で初めてやわもちを食べた夫が興奮した様子でその味について話した。
餅が、おいしい。とにかく餅が、黒蜜が、きな粉が。
つまり、やわもちとは、おいしいアイスの上にきな粉とかお餅とかが乗っている、とっても楽しいアイスらしい。聞いた話をまとめれば、和風パッフェのような趣。
そして、しばらくの後、私は三重県総合博物館、通称「みえむ」で、その「やわもち」と出会う。
当時、スーパーではどういうわけかあまり流通していなかったから、夫の話からただ憧れが募るばかりで、期待はどこまでも膨らんでいた。
ショーケースを開けて「これは!」と一同歓声をあげて、いざ、サンショウウオのさんちゃんの水槽の前で実食。
確かにそれは、「餅が!黒蜜が!きな粉が!」という代物だった。
アイスの上にまあるいお餅が5つも(5つも!)乗っている。
へぇ、と簡単に考えないでほしい。餅を凍らせたらどうなるか、カチコチに固まるに決まっている。のだけど、やわ餅に関しては最初こそ少し硬さを感じるものの、次第に柔らかくなって、けれどふにゃふにゃにならず、ちゃんともっちりしているんだった。
そして、黒蜜やきな粉をまぶしながら、もちろんアイスを絡めながら無限の変化を愉しみながら食べられる。すごくない?つまりやっぱり和風パッフェ。
以来、我が家はみえむに行けばアイスを食べるのが通例となって、それはだいたい「やわもち」だ。子どもたちはメロンボール(井村屋)を頂いたりもする。
因みに、メロンボールシリーズにはモモボールとスイカボールもあるというのはあまり知られていない。私もこちらに越してくるまで知らなかった。
*
そして、今年の冬、私はすごいものを知ってしまう。
やわもちファミリーパック。売り場で光を放っていた。
これは……一年頑張った私へのご褒美???冬のお部屋で食べるアイスにぴったりすぎない???最高???だって、ファミリーパックよ???
魂の半分を東海県の片隅に預けてしまったものだから、肉まんと言えば井村屋のものを買ってしまうし、おいしいアイスが井村屋のものであれば、流石ですねと膝を打つ。
一年通してもちろんお世話になるんだけれど、特に今年の冬はことさら、恩恵を受けているので、しみじみと井村屋の三文字をみつめている。
8歳、6歳、4歳の3児の母です。ライターをしています。