今住んでいる地域や、生まれ育った故郷。あふれんばかりのまちへの思いはあるんだけど、その魅力を人に伝えるのは、なかなか難しい。そんな思いを形にしようと、2020年10月11日に、伊賀市役所で開催されたのは「地域とつながるライティング講座」。伊賀のまちに関わる人たちとともに、書くことを通じてまちの魅力を発信するライティング講座です。3日間にわたり行われる講座の、初日の様子をレポートします。
住んでいるまちの魅力を伝えよう
この日集まってくれた参加者は、7名。ほとんどの方が伊賀出身の方でしたが、中には伊賀に惹かれて移住してきたという方も。最初の自己紹介タイムで「好きなまち」についてたずねたところ、ほとんどの方が「伊賀が好き」と答えてくれました。なんと、参加者のうちの半数の方は「伊賀市若者会議」に参加するメンバー。地域のプロモーションを中心に、伊賀を盛り上げる活動を行っているそう。他の参加者の方も、それぞれに伊賀愛に溢れる面々。
講師の北川由依さんは、お隣の松阪市の出身。大学入学を機に北海道へ移住しましたが、その後京都へ移り、今は京都でライターとして活動されています。北海道でまちづくりに関する企業に所属していたときは、北海道のみならず他地方へ出向いて仕事をすることが多かった北川さん。出産にあたり、なかなか従来の活動ができなくなってしまったときに、文章を発信するライターの仕事をスタートさせたそうです。
現在は所属している京都移住計画の記事執筆・編集・ディレクションなどを行いながら、他媒体でもライターや企業広報として活躍されています。そんな北川さんから3回にわたり、記事の書き方、読者への伝え方を教えていただきます。
書くのが苦手な人は、もっと周りに目を向けてみよう
参加者にたずねると「そもそも書くことが苦手」という方がほとんど。北川さんも「もともと得意ではなかった」と言います。でもなぜ、書けるのか。それは「作家になろうとしていない」からなんだそうです。
書こうとしても、何を書けばいいのかわからないとき。それは、作家のように自分自身からネタを絞り出し、コンテンツにしようとしているから。まずは自分の内側ではなく、外側に目を向けることから始めることが大切だと、北川さんは言います。
自分が働く中や暮らす中で面白いこと、珍しいことを見つけてみる。まずはそこから、スタート。そして自分が発見した「面白いこと」の情報をしっかり集めること。いつ、どのように始まったことなのか。どんな人がどんな風に関わっているのか。情報を丁寧に聞いたり、調べたりした上で、書く要素を集めていきます。
つづいて、インタビューを通じて北川さんがどのように書くことに必要な情報を集めているのか。3分間のインタビューを実践していただきました。相手役は、伊賀市役所の大山さんです。インタビューのお題は「なぜ伊賀市役所に入職したんですか?」という問い。
インタビューの実践が終わり、参加者からは「相手が話し終わるのを待ってから、次の質問を聞いていた」「相手に対する質問が的確だった」などの感想が述べられました。
その他にも、正面ではなく相手の斜め前などに座り相手が話しやすい位置取りをする、「録音しますね」と声をかけてからインタビューを始めるなど、たった3分のインタビューでしたが、多くの学びが得られたようです。
「相手の言葉を聴く」ためのポイント
つづいて、参加者がペアになり、互いにインタビューを実践する時間。問いは「なぜ○○さんはライティング講座に参加したのですか?」。一人につき、7分ずつインタビューを行います。
ここでのポイントは、まず原稿の設計図を書くということ。インタビューで聞いたすべての要素を書こうせず、心に残ったことや、他の人にも伝えたいと感じたことにフォーカスして設計図を描きます。ついつい、あれもこれもとよくばりになってしまいがち。しっかりと書くことを取捨選択する必要があります。
最初は不安そうにしていた参加者の皆さんでしたが、インタビューは真剣そのもの。みなさん、北川さんからのアドバイス通り、しっかり相手の言葉に耳をすませて、「聴く」ことに集中されているようでした。
互いにインタビューした後は、相手の言葉を材料にして文章を書く時間です。7分間のインタビューを、400文字にまとめていきます。はじめは「文章を書くのが苦手」と言っていた方ばかりだったのに、ほとんどの方が30分もかからずに文章をまとめ上げていました。
書いた文章を一人づつ発表してもらいましたが、どれもこれも素晴らしい文章!講座に通おうと思った動機だけでなく、相手の話を聞いてどのように感じたのか、書き手の思いも伝わるあたたかな文章ばかりでした。
私自身も、今回のようなライティング講座に通った経験があるのですが、その時、自分が思ったより「文章を書ける」ことに驚きました。こうやって書くコツを教えていただき、時間を決めて書いてみる。そうすることで「文章が苦手だ」と思う気持ちよりが和らぐんですよね。
書いている途中で「もっと質問をすればよかったなと思った」という声も。実際に書いてみることで見えてくることもあるし、他の人が書いた文章を聞くことで、言葉のバリエーションはこんなにも豊かなんだと知ることもできます。
次回は書くことから離れて、写真を撮る講習を行います。記事を作るうえで、欠かせないのが写真。インタビュー記事でも、このようなレポート記事でも、写真は読み手の想像力を手助けするために、必要な存在です。プロのフォトグラファーを先生に迎え、スマホで素敵な写真を撮る方法を教えていただく予定。次回の講習もわくわくしますね!
OTONAMIE×OSAKA記者。三重県津市(山の方)出身のフリーライター。18歳で三重を飛び出し、名古屋で12年美容師として働く。さらに新しい可能性を探して関西へ移住。現在は京都暮らし。様々な土地に住んだことで、昔は当たり前に感じていた三重の美しい自然豊かな景色をいとおしく感じるように。今の私にとってかけがえのない癒し。