ホーム 01【食べに行く】 #このひと品 炭焼よこい物語「あてのないピンチはない」

#このひと品 炭焼よこい物語「あてのないピンチはない」

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“私は必ずまわりに助けられた”

横井愛子さん

店内は炭火焼きの香ばしい香り。
焼き鳥を手際よく調理しながら、店主の横井愛子さん(以下:ママ)は話しを続ける。

“小さいとき、家がなかったんです”

2歳のときに母を亡くした。1歳の兄弟もいた。船着き場にある3畳ほどの空間で暮らしていたという。

“そこからドラマが始まるわな!”

いつも明るいママは、ヘビーな幼少期もさらっと笑いながら話す。

“あてのない、ピンチはないでな”

カメラを向けると髪を整えながらママは言う。

“スギシンさん(地元の貸衣装屋)行ってこやんでええか?”

 

串5種からはじまった「よこい」。

津市久居、国道165号の野村高架下に店はある。
訪れたのは2020年8月。2020年、飲食業にも大きな被害をもたらす厄介な疫病が蔓延した。緊急事態宣言が開けても、第二波の影響は大きかったという。
書くことで、微力でも何かプラスになることができないだろうか。OTONAMIEの編集会議でそう話すと、どうしても食べたくなるあの店の「このひと品」のことを書こうということになり、私がまず頭に浮かんだのが、よこいの「骨付きモモ肉の唐揚げ」だった。店にきたら必ず注文し、友人にもお節介が過ぎるほどオススメしている。

注文をして、しばらくカウンター越しに調理をしているママと話しをした。

店には久居名物の梨

よこいはママと数名のパートさんで経営している。マスターと呼ばれる男性はいない。
離婚後、28年前にママが二人の子どもを育てるために店を始めた。以前は市内の別の地域で新聞販売店を夫婦で営んでいて、飲食業については全く無知だったという。本当はお好み焼き屋がやりたかったが、什器が高額のため断念。

秘伝のタレ

ママ:別れたおっさん(元夫)のおばあさんが、ダシの作り方を書いた小さな紙を残してくれてあったのを思い出したんです。ダシをアレンジしてタレを作って・・、串を焼くしかなかった。パーマ屋をしていた友人からお金を借りて5月20日にオープンしたときのことは、今でもよく覚えています。

縁のない土地での創業。オープンの日、近くにある日本鋼管(現JFE)の社員寮に、一人でチラシを配り歩いた。

ママ:素人同然。お客さんの声がすべてでした。

最初は串5種しかメニューになかったが、お客さんから突き出しで儲けることや、これが食べたいと言われれば、独学で研究して美味しいと思えるまで工夫を加えた。

常連さんがつけたキャッチコピー・・。ちなみに餃子も「本当に美味しい!」です。

炭焼の焼き鳥が売りのよこいだが、秋口からはじまるダシが染みたおでんのファンも多い。他にも刺身、餃子、カレーまである居酒屋だ。

居酒屋好きで知られるタレントの北野誠さんが、ラジオ番組の収録で何度か訪れた。そのときは、豚足スープが美味しいと誉められたと嬉しそうに話すママ。

ママ:よその味を盗んだことは一度もありません。

 

元気をもらうということ。

電話がなり、米の農家と話していた。

ママ:配達?いつでもええよ。え!そりゃ来年ではアカンやろ。アハハ!

こうやって米の仕入れでも遊ばれると話しながらママが運んできた、骨付きモモ肉の唐揚げ。

このひと品!骨付きモモ肉の唐揚げ

外はカリっと、中はジューシー。塩の塩梅が酒のあてにちょうどいい。使っているのは名古屋コーチン。モモ肉はそのまま揚げず旨みが逃げないよう、丁寧に包丁で切り目を入れることで、身の中までスパイスが染みこみやすくしている。あーこれこれ!このひと品と、骨付きモモ肉の唐揚げをたのしんでいると、常連さんがカウンターに座った。

ママ:生中とゆでたまごでええか?

串5種から始まったよこいさん。今では客の好みに合わせて突き出しを変えている。

ハガキの木(タラヨウ)。葉書の語源でもあり、切手を貼ると本当に送れるそうだ。

お店の人との何気ない会話や、元気な顔を確かめ合うひと時。
あの店の「このひと品」を求めて、そこで元気をもらうということ。

ママはいつも帰りに何かを持たせてくれる。この日は梨だった。

ここは安心できて、肩の力を抜き、落ち着けるところ。
自粛を経て、お店で過ごす大切な意味に気がついたのでした。

・・・、おあとがよろしいようで。

 


 

※2020年12月、ママがご高齢のためオーナーが変わってリニューアルオープン!そしてママも以前と変わらず元気にお店でご活躍中です!

炭焼よこい
津市久居野村町874-1
tel 059-256-8388

 

 

 

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