津市生まれの児童文学作家、村上しいこさんをご存知でしょうか?
中日新聞の記事を読んでご存知の方もいらっしゃると思います。
村上しいこさんは、いじめや虐待を受け続けました。それはどんな過去だったのでしょうか。そして、それらを乗り越え、今を生きる村上さんの中に、どう生き続けているのでしょうか。zoomで行ったインタビューで、村上さんに迫ります。
ー すさまじかった過去とは? ー
物心ついた頃から、継母から殴る蹴るの暴行、言葉の暴力を容赦なく受けました。生傷が絶えず、顔も変形してました。
この生活が20年続きました。
笑ってはいけないと言われ、私が幸せになることを継母は許しませんでした。人権を奪われた生活、、。
これが、村上さんにとっての日常だった。
中学生の頃、死のうと思った。自殺しようと思いました。
ー 何に支えられた? ー
本と人のぬくもりに救われました。
そして、生きようと思った。私は、生きることを選びました。
ー 本のぬくもり ー
学校の図書館で本を夢中で読みました。明るくて、未来を感じられるような、希望の持てる物語を好んで読みました。
本は、いつも私の一番身近にいてくれました。本の中で、私は笑うことが出来たんです。私は、間違いなく本に救われました。
ー 人のぬくもり ー
近所の方から声をかけていただきました。
でも、一番大きかったのは、先生が私を抱きしめてくれたことです。人のぬくもりを深く感じた瞬間でした。
実は、その先生と再会する機会があり、今もたまにお会いしています。
ー 継母への恨み辛みはありますか? ー
もちろん、忘れてはいません。
私の心に、今も生き続けています。今も、フラッシュバックもありますし、過呼吸もあります。
でも、恨みはないんです。
私の人生に関わって欲しくないから。恨み続け、そこに執着したら、人生がもったいないでしょ。
私は、私の人生を生きたい。
(村上さんのお話を聞いて、ある人の言葉を思い出しました。「他人を押さえつけている限り、自分もそこから動くことはできない。」ジョージ・ワシントン、米国初代大統領 / 1732~1799)
ー 生きることを選んだ後は? ー
誰かにそばにいてもらったり、周りに支えてもらったりしながらも、自分の足で立つことです。自分で、自分の道を切り拓いていくことだと思います。
ー タイムマシーンで、当時の村上しいこに会うとしたら、どう声をかけますか? ー
ひとりぼっちじゃないよ。今がずっと続くわけじゃないよ。誰かが手を差し伸べてくれるよ、と言ってあげたい。
でも、一番のメッセージは、「村上しいこは、幸せをつかんだよ」ということ。
ー今の世の中は村上さんにどう見えますか?ー
情報がありすぎていると思います。
忙しすぎるんです。
だから、親も子も、みんな時間に追われています。話を聞いてもらえないと嘆く子供たちがいる。みんな、ゆとりがないように見えます。
1日の中で、自分と向き合う時間はほとんどないのでは?
ー どうしたらいいのでしょうか? ー
自分の時間を持つといいと思います。
自分と向き合うためには、例えば、毎日10分でも本を読んでみるといい。今は、コロナでstay homeですからオススメですね。
もう一つは、想像力を養うこともとても大切だと思います。
自分の思いや気持ちを、自分の言葉で、相手に伝えること。また、相手を理解すること。
ー 作家になったきっかけは? ー
たまたまです。
偶然が重なり、ある方からスカウトしてもらいました。偶然でしたが、作家になったことは、私にとって、とても幸せなことです。
不幸のどん底と幸せのどちらもわかるようになったことを、作品を通して伝える喜びを感じています。
今の子供たちに寄り添っていきたい。そんな想いから、地域見守り隊にも登録していて、下校時間などに子供の話を聞いたりするのもいい機会になっています。
私は、本に救われました。
今度は、私が届ける番かなって。
ー オススメの本を教えてください ー
「赤毛のアン」、「おおきなかぶ」、「アルプスの少女ハイジ」は、希望のもてる話なので、私の幼少期の心の支えでした。
自著からも一冊。「イーブン」、村上しいこ著、小学館。
ー 読者へのメッセージ ー
コロナで、自由に人に会えなかったり、遊べないことが日常になり、息苦しさやストレスを感じていらっしゃる方が多いと思います。
ぜひ、上手に気分転換を図って下さい。私は、散歩していますよ。
読んだことのないジャンルの本を読むのもオススメですよ。
ー ご経歴の紹介 ー
1969年、津市生まれ。
結婚後に創作活動を始め、2001年、毎日新聞《小さな童話大賞》『とっておきの「し」』で俵万智賞受賞。
2003年、「かめきちのおまかせ自由研究」(岩崎書店)でデビュー、日本児童文学者協会新人賞を受賞。「れいぞうこのなつやすみ」(PHP研究所)で第17回ひろすけ童話賞を受賞。
2015年、長編小説「うたうとは小さないのちひろいあげ」(講談社)、第53回野間児童文芸賞(※)を受賞。
(※)野間児童文芸賞: 優れた児童文学に向けて贈られる賞。1963年創設。過去に、詩人で絵本作家の谷川俊太郎さんや、「魔女の宅急便」原作者の角野栄子さん、「バッテリー」シリーズで知られるあさのあつこさんらが受賞している。
これまで世に出した著書は累計97冊、年内に100冊に達する予定。執筆の他、講演活動(図書館や小中学校など)も精力的に行っています。(※)現在はコロナ禍のため講演活動は中止しています。
これからどんな時代になるかなんて、、。いろいろなことがあって、わたしは、今は、「おもしろいことを探す旅」に生きようと思い至りました。「流れるままに身をゆだねていく」スタイルで生きていこうと。得意ジャンル:おもしろそうなことを、感じるままに。たとえば、今の三重と真逆に位置するもののいくつかから、あるいは、無駄だろうと思うことを見過ごさず、振り向いてみる。そこから、三重が1mm動いていくきっかけが生まれることもある、きっと。