三重県と愛知県の間には、3本の大きな川(木曽川・揖斐川・長良川)が最大の難所として古来から存在している。現代では橋によって何不自由なく渡ることが可能だが、そんな橋をじっくり見たことはあるだろうか?
数年以内に架け替えになってしまう国道1号線の「伊勢大橋」を歩いて観察してみた。
(伊勢大橋の桑名側橋詰)
伊勢大橋の歴史を調べると1934年(昭和9年)に完成。それまでは江戸時代と変わらない渡し船による通行方法しか無く、当然ながら自動車の行き来は不可能だった。
(橋梁の両脇には歩道がある)
伊勢大橋の全長は1,105.7m、伊勢湾岸自動車道の揖斐川橋(2001年完成全長1,397m)が開通するまで、完成当時から67年間も三重県最長であり、現在でも2位の凄い橋なのである。
(橋の上で魚釣りは禁止)
伊勢大橋は、長いこと以外にも歩きながら観察すると、凄いことがザクザク発見できた。
(リベット打ちがいたるところに)
橋の鉄骨をよく見てみるとイボイボがたくさん見られる。これは「リベット」と呼ばれる鉄骨を繋ぎとめる工法で、なんと全て手作業であるとのこと。もう何個あるのかわからないくらい無数にあって、当時の職人さんの苦労を偲びながら眺めてしまった。
(中堤交差点には車が通れるように空間が)
伊勢大橋は、揖斐川と長良川を一気に渡るのだが、その川の境目にある堤防上が道路になっていて、橋のほぼ中間地点には堤防道路との交差点がある。橋の上に交差点があるのも珍しい光景だ。
しかし、右折レーンが取れないために、長島方面からは朝7時~夜7時まで進入禁止の措置が取られている。
(伊勢大橋の長島側橋詰)
橋を渡りきるのに徒歩で約10分かかった。大きく開いた橋の口は車がひっきりなしに出入りしている。
(大きい口の頂点)
帰りはもっと鉄骨を観察することにした。大きい口のように開いた橋の出入り口は、様々な鉄骨で支えられている。直線と曲線が青空に映えて美しい。
(中堤交差点のあたり、橋のアーチの頂点)
伊勢大橋は、「ランガ―トラス橋」と呼ばれる工法で、鉄骨で組み合わせたトラス(三角形)を高く大きなアーチで結んでいるのが特徴だ。曲線と直線以外にたくさんの三角形も随所に発見できた。
(下部のランガ―トラスを大きなアーチで支えているのがよくわかる)
(伊勢大橋の河口側には新しい橋げたが)
そんな伊勢大橋も、河口側には新しい橋げたが埋め込まれ、徐々に「新伊勢大橋」の建設が進んでいる。計画では2車線の新橋が完成後に、現在の伊勢大橋を撤去し、更に2車線の橋を設置することで、上下2車線の「新伊勢大橋」に生まれ変わる予定だ。慢性的な国道1号線の渋滞緩和も期待されている。
(新しい橋げたは設置済み)
新しい橋は、現在のような統一した鉄骨アーチなどの大規模な装飾は取り付けられない予定だ。技術の進歩とは言え味気なくも思える。
(よく見ると穴やちぎれたような跡も)
そしてこの橋を語るうえで忘れてはいけないことは、太平洋戦争や伊勢湾台風に耐えたこと。とくに太平洋戦争では、出来たばかりのこの鉄橋を幾度となくアメリカ軍の戦闘機は攻撃をした跡がよくわかる。
(丸く空いた穴は戦闘機からの銃弾の跡である)
幸いにも戦争と台風では、これ以上の大きな損傷を受けることは無く、現代に至るわけだが、ぜひ読者も皆さんも「戦争遺構」という側面は絶対に忘れないでいただきたい。
そして今でしか見られない伊勢大橋の魅力を残された時間で堪能いただくことと、新しい橋の建設状況については「橋の成長」として注目してみてはいかがだろうか?
四日市出身。小さい頃から地図を見るのが大好き。物流会社に就職後、愛知・上海・東京・静岡他へ引越9回を経て現在は四日市在住でほぼ毎日愛知へ通う。特技は中国語と道案内。得意ジャンル:鉄道、旅行、中国語、航空機、ラーメン