身近な商品に”ふるさと”あり。
三重県の”ふるさと納税返礼品”の生産者を巡る。
普段何気なく購入したものや旅先で手に入れたお土産もの、誰かからのいただきものなど、僕たちの生活の中にはたくさんの商品があふれていますよね。
パッケージの裏側を見て、「○○県の○○町の商品なんだ。」とその地域に興味関心を持った経験ってありませんか?
そんなきっかけの一つに、今や世間的にも認知されている”ふるさと納税”がありますね。
ふるさと納税というと・・・過度な返礼品競争などで世間をにぎわせてもいますが、応援した地方自治体へ寄付することで特色のある特産物を寄付者が受け取れることは、やっぱり魅力の一つです。
実はかく言う僕も、昨年は個人的にお世話になった”松阪市”と”尾鷲市”にふるさと納税をしてお肉や水産加工品の返礼品をもらいました。返礼品はとても美味しくて、”松阪市”や”尾鷲市”、送っていただいた生産者さんをより身近に感じて好きになることができました。
「ふるさと納税の返礼品を通じて、その”地域や産業を知ること”ができる。」
この実体験をもとに良いご縁をいただいて、今回、ふるさと納税の返礼品となっている度会町・志摩市・鳥羽市の生産者さんに取材をしてきました。その地域に暮らす生産者さんたちに”ふるさとの魅力・思い”や”地域の空気感”をお尋ねしていきます。
同じ三重県でも三者三様。
自然や気候、出会う人、そこで過ごした時間は良い意味で違っていました。
量より質のこだわり茶農家 喜多製茶 喜多親子【度会町】
「お茶を飲んで、田舎あられとぜんざいも食べてもらって、ホッとしてくれたらええ」
遠くまで広がる茶園は温かな日差しに風車がくるくると回るのが印象的です。
のどかな日本の”田園風景”と対を成す”茶園風景”がそこにありました。小鳥のさえずりが心地よくてとっても気持ちがいい。ここ度会町で車を走らせていると、1級河川”清流 宮川”と”茶園風景“を至るところで望むことができ、ついつい目をうばわれがちになります。また、”古事記”や”日本書紀”に地名が記されていたり、倭姫伝説の軌跡が残る場所があったりと歴史深い土地でもあります。
まず、最初に訪れたのは度会町の茶農家の喜多さん親子です。代表者の喜多嘉一(よしかず)さんは三代目になり、親子でお茶を育て、加工し、販売されています。
身近にある”清流 宮川”の思い出
嘉一さん「子どもの頃、夏休みは毎日お昼の1時〜3時までは宮川がプール変わりで泳いで遊んだな。」
お母さん「今もたくさんの人たちが宮川に遊びにきてくれとるよ。プールもあるけど、やっぱり川遊びも楽しいでな。」
実は・・・僕も夏は同じ度会町の一之瀬川に毎年泳ぎに行きます。宮川も一之瀬川もとても水が綺麗で、水中メガネとシュノーケルを装着し、川魚と一緒に水中を泳いでいると時間を忘れて夢中になります。度会町で育った人たちは、子どもの頃に川で遊んだ記憶が共通の思い出として残っているんでしょうね。
そんな、思い入れ深い宮川は”度会町の美味しいお茶づくり”を支えています。
美味しいお茶と川霧の関係
川霧ってご存知ですか?
川霧は夜間に冷やされた空気が、川面を流れる際、川から蒸発した水蒸気を冷やすことで粒となる現象をいいます。川霧が発生する条件は、昼夜の温度差が大きいことで、それは美味しいお茶が育つ条件にも共通します。また、川辺の水はけの良さも同様です。
美味しいお茶処には清流あり!なのかもしれませんね。
お茶づくりのこだわり
慣れた手つきでお湯の温度を確かめ、急須でお茶をいれてくれた嘉一さん。湯気とともにお茶のいい香りが立ちあがります。一口飲み、ホッとして・・・また一口飲んでホッとする。短い時間その繰り返しを味わいました。
昔はお茶を作ったら売れるという時代だったそうです。今は昔に比べて”急須でお茶を飲む”という習慣が減ってきていて、嘉一さんは地元の小学生にも美味しいお茶の入れ方を教えるなど、“お茶の文化”を伝えることに思いをめぐらせます。
嘉一さんが3代目となり、小さい農家であるからこそ“質にこだわった”美味しいお茶づくりを志し、土作りや手入れ、製法に手間ひまをかけていきました。例えば、販売する商品は試飲を何度もして思った味になるか確かめられるそうです。
嘉一さん「お茶作りの成果は年に1回しかない、そこで成果を確認して毎年が学び。まぁ自然相手のもんやから、思ったようにはやっぱりいかんなぁ。」
と控えめに話す中、お茶づくりに信念を持たれていることが一言一言から伝わってきます。喜多さんの思いを受け取った上で、飲むお茶。もともと美味しいですが、さらに美味しく感じました。
あったかいな。喜多親子との時間
お二人との時間はとってもほのぼのゆったりとして、まさに度会町の風景を望んだ時と近い感覚を抱きました。
訪問時はちょうど、お母さんの手作り田舎あられ製造の真っ只中で特別に見学させてくれました。想像を超える色鮮やかなあられたちの姿がそこに!
紫色は紅芋、緑色はお茶やヨモギ、黄色はカレーなどなど。お母さんの田舎あられのこだわりが垣間見えました。
一口頬張ると、素朴な味わいにふわっとそれぞれの色の風味がふわりとのぞき込みます。ぽりぽりと手が止まらなくなります。
お母さん「売りもんじゃないんよ。趣味で作っとって、この時期だけお茶を買ってくれたお客さんにおまけでつけとるんさ。」
美味しいものを作る、食べてもらいたい、飲んでもらいたいといった思いは脈々と親から子へ受け継がれていっているんですね。
伊勢志摩の海藻食品メーカー 安心/安全/健康のカネウフーズ 工場長 廣岡さん【志摩市】
「志摩は人や自然、空気がとっても落ち着くんです。そんな志摩が大好きなんですよ」
毎年、年の初め頃から徐々に伊勢志摩の海辺が緑色の絨毯で染まります。磯の香りで食卓を彩る”あおさのり”の養殖が最盛期を迎えます。三重県では生産量が全国1位であることも有名ですね。特に伊勢志摩地域では”あおさの味噌汁”はご家庭の定番料理です。
海の恵みは幸を育む
美味しいあおさが育つ秘密は、栄養豊富な海にあります。伊勢湾には山々から養分をたっぷり含んだ川の水が流れ込み、温暖な黒潮と混ざり合うことで豊富な栄養が育まれます。
栄養満点の海で育った海藻類、それに”あわび”や”伊勢海老”などの新鮮な海の幸が、三重県を代表する食材となります。そこには、僕たちの元に届くまでにたくさんの人たちが働かれているわけですね。
次に訪れたのは海藻類を加工する食品メーカー カネウフーズの工場長 廣岡さんです。
伺った日は”ひじき”の選別や検査、そして販売用の袋詰めされるまでの工場ラインを見学させてもらいました。
まるで手術室 安心/安全/健康を届ける現場に潜入
鵜方工場は元々は電子部品の工場だったそうです。ひじきを中心とした海藻の需要に対応するため、2年前に増設されました。
早速、工場を廣岡さんに案内していただきました。
まず、専用の服に着替えて、コロコロローラーやエアーシャワーでホコリを除去した上で工場内に入ります。工場では当たり前のことなのかもしれませんが、徹底した衛生管理に驚きです。
廣岡さん「海藻類で特に注意しなければいけないのが異物の混入なんです。自然のものなので避けては通れないことで、機械や人の目で例えば”髪の毛”や”羽毛”などをしっかりと取り除いていきます。」
・・・これが想像以上に大変な作業なんです!
まず、現れたのは色で異物を判別して吹き飛ばす機械です。
中は見えませんが・・・・イメージするとこんな感んじ(´-`).。oO
急にはじまる想像劇場 機械の中
そこはトンネルで”乾燥したてのひじき“たちがベルトコンベアに揺られていた。そこに潜む異物の影が・・・・
ひじきA「わー流されるー」
ひじきB「わーわー揺れるー」
派手めの異物X「わーわー(うまく忍び込めたな・・・ニヤリ)
ひじきA「ん!きみ、ひじきじゃないなー」
派手めの異物X「えーひじきだよぉ(バレたか、しかしすでに遅い!)」
優秀な機械「ハッケン!ハッケン!」
派手めの異物X「!?」
ビュオ! ピュ〜
派手めの異物X「あーれぇ〜・・・」
ひじきB「バイバーイ」
優秀な機械によって、派手めの異物Xの脅威は去った・・・これでお客さんに安心/安全/健康なひじきを届けられる。
・・・かと思われたその時、トンネルを抜ける黒い影が!
忍者異物Y「(ふふふ、Xを吹き飛ばしたとしても拙者がいるでござる・・・)」
Coming Soon
想像劇場はここまでにしまして・・・
機械を抜けた後に待ち受けるのは白い服に身を包んだ目視チェックのプロたちです。
ここでは、ひじきにまぎれて機械を潜り抜けた名付けて”忍者異物Y”を人の目で取り除く場所です。
とても集中力がいる作業で、さながら雰囲気は手術室です。パラパラっとひじきを机に落として異物を見つけていきます。
そして、数々のチェックをクリアしたひじきが最後に機械でパック詰めされます。身近などんな商品も、いろんな機械やたくさんの人たちの働きによって商品になっているんですね。
日本のひじきを食す文化に歴史あり
国産のひじきはとても希少で、そのほとんどが海外産のひじきです。韓国産や中国産が約8割〜9割で、国産ひじきはなんと1割となります。伊勢志摩では国内でも屈指のひじきの一大産地です。
国産ひじきは全て天然物で、海外産は養殖物という違いがあります。天然物は磯に自生して荒波にもまれて育ち、養殖物は入り江でゆったりと育ちます。そのため、筋肉質で歯ごたえがシャキシャキしているのに対して、養殖物はふわっとやわらかな味わいが特徴です。
廣岡さん「実は今から約30年くらい前に先代の社長たちが、中国や韓国にひじき養殖を教えていったことで、現在のひじきが日本の食文化として定着しているんです。」
またまた、驚きの事実を知ってしまいました。当時、日本ではひじきを育てる場所の確保が難しかったそうです。そこで、先代たちが海外に目を向けてひじきの養殖を築き上げたことで、現在のひじきが当たり前のように食べられる食文化があるんですね。
家の近くにプライベートビーチ。志摩の海で育つ
砂浜に青い海、冬じゃなかったら無邪気に泳ぎ回りたいと切に思う非日常空間がそこにありました。
ここは、廣岡さんが生まれ育った家の近くに位置する”いちご浜“です。サーファーや海水浴客にも人気の観光スポットです。
廣岡さんの幼少期は”いちご浜”や自宅から徒歩数分でプライベートビーチのような場所があり、休みは磯場で遊ぶのが日課だったそうです。
廣岡さん「当たり前のように海があって、自然が豊かで。何よりも住んでいる人たちが好きでとても落ち着くんです。」
毎年”いちご浜”では”天然ひじき”の収穫を廣岡さんも行うそうです。遊び場として過ごした海が今でも廣岡さんの日常に当たり前にあることが、とても素敵だなぁと思いました。
廣岡さん「若者にも健康に良い海藻をもっと食べてもらいたいです。健康でもっと元気になって志摩の海にぜひ遊びにきてくださいね。」
総合水産物卸/加工/直売まで ふるさとを届ける 松村 代表取締役 松村さん【鳥羽市】
「生まれ育ちもずっと鳥羽で過ごし、年を重ねて苦労もしてきた・・・ふるさとへの思いはどんどん強くなっていったな。その思いをこれからもお客さんに届けていきたい。」
最後に訪れたのは卸/加工/養殖/販売/外食/活魚貝類出荷と、鳥羽の水産物で幅広い事業を手がける松村 代表取締役の松村さんです。
訪れた場所は、ずらっと生け簀が並んでいて新鮮なあわびや伊勢海老がたくさんいました。普段見ることのない光景で、ついつい数を数えてしまいます。
鳥羽や志摩は日本の海女文化発祥の地と言われています。良い海藻が育つところに、あわびや伊勢海老などあり!ですね。
親に楽をさせたかった。24才の頃を振り返る。
松村さんは一代で今の会社を築きあげた偉大な経営者さんです。お話をうかがうと、創業者としての“ふるさと”に対する強い思いが言葉に込められていました。
松村さんの親は漁業を営まれていました。幼少期から親の背中を見続けていた松村さんの目に映っていたのは、苦労する親の姿。
松村さん「親に楽をさせたくてな。海産物卸の仕事をはじめた。」
当時、松村さんは24才で生まれ育った“ふるさと鳥羽への思い”を抱いての創業でした。
景気の波に乗ったという時代背景の中、苦労も多くありました。自分には青春はなかった。その分、苦難を乗り越えて事業を広げていく中で、”ふるさと鳥羽への思い”は時を重ねて大きくなっていったそうです。
真心を届けたい。だから受注生産。
松村さんには3つの信条があります。
1つ 真面目であること
2つ 謙虚であること
3つ 行動力があること
そして、この3つの原動力が自分らしく生きるという強い思いであり、だから苦労しても笑うことができるのだそうです。
お客さんに商品を届ける姿勢にも松村さんの強い思いが見え隠れします。
それは、受注生産で商品を送るということです。
松村さん「鳥羽を離れて鳥羽に思いを寄せてくれている人たちに商品を届けたい。手間はかかるけども、注文が入ってから新鮮な魚介類を捌くことで真心も一緒にお客さんに届けられる。」
100歳まで後28年。夢を抱き青春を送る。
松村さんには夢があります。国産あわびの完全陸上養殖です。
松村さん「100歳まで生きるとして残り28年しかない。まぁ遊んどるだけやでな。」
とニカッと笑いますが、そこには“そんな挑戦を次の世代へと繋げていきたい”とも話します。
松村さんには3人の息子さんがいます。3人とも自然と帰ってきてくれたからなと、その顔はとても嬉しそうでした。松村さんの“鳥羽への思い”や信条は息子さんたちに受け継がれて、これからも此処にあり続けることでしょう。
地域や特産物を知ることは
“ふるさとの思い”を受けとること
取材先は常に感心しっぱなしでした。
同じ三重県でも自然や気候、出会う人、そこで過ごした時間は良い意味で違っていました。
喜多親子に廣岡さんに松村さん
出会った人たちを通じて、度会町も志摩市も鳥羽市ももっと好きになりました。
“ふるさと”の言葉を調べると、その人にとって“生まれ育った場所”や“ゆかりのある場所”という意味になります。
今回、訪れた生産者さんたちにとって”生まれ育った場所”としての“ふるさとの強い思い”を少し受け取ることができたと思います。
生産者さんたちまでとはいかないまでも、自分の中には受け取った“ふるさとの思い”が心の中に今も残ってる感覚があります。
その地域や特産物を知ることは、“ふるさとの思い”を感じることができて、もしかしたら自分にとって”ゆかりのある場所”になっていく機会でもあるだと思います。
そう考えると、全国で実施されている”ふるさと納税”という仕組みってとても素敵なことですよね。”ふるさと納税”をきっかけにいろんな地域の”ふるさとの思い”を感じてみたいです。
まだ、 “ふるさと納税”をしていないという方に朗報です。
2019年1月1日(火)〜2月17日(日)の間に、今回訪れた地域を含めた三重県南部13市町へ”ふるさと納税”された人を対象にして、抽選で招待される特別なバスツアーが開催されます。
内容を確認するととても濃密・・・お話をうかがったら、今回ご紹介した生産者さんたちにも、直接会ってお話を聞くことができるそう。
僕も参加したい。絶対に楽しい。
この記事やツアーが“ふるさと納税”をしてみようかなというきっかけにもなれば良いなと思ってます。
【今回訪問した生産者さんの公式ページ】
【三重南部まるごとスペシャルバスツアー”の応募先など】
【2019年版】通常の観光ツアーとは一味違う!1泊2日の”三重南部まるごとスペシャルバスツアー”に抽選でご招待!
三重県南部の魅力ぎっしり!ふるさと納税者限定のスペシャルバスツアーに密着!(昨年の様子)
濱地雄一朗。南伊勢生まれの伊勢育ち。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごす。探求を続けると生まれた疑問、それが「何で◯◯が知られていないんだ」ということ。それなら、自分でも伝えていくことだと記者活動を開始。専門は物産と観光、アクティビティ体験系も好物。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。