ホーム 01【食べに行く】 商店街の裏道の裏道にある「リトル・ベトナム」

商店街の裏道の裏道にある「リトル・ベトナム」

大門商店街の先に津観音があるのは多くの人が知っていることだろう。
日本三大観音の一つに数えられる津市の名所である。

では、そんな津観音のすぐ横にある「大門商店街飲食店街」を訪れたことがある人は果たしてどれほどいるだろうか。

この飲食店街、写真のとおり外観だけで判断するならほとんどの人が「寂れたシャッター通り」と思うことだろう。
現にこの通りで営業する飲食店街はほぼ全てが夜間営業であり、昼間は特に閑散としたものである。
慣れない人はその雰囲気に負の感情を抱いて引き返してしまうだろうが、ぜひ乗り越えて歩みを進めて欲しい。
「たとえ店が営業していたとしても入りたくない」
「これ以上は行ってはいけないと何かが警告する」
小心者の人であればそんな考えがどこからか湧き出てくるだろう。
わたしもかつて訪れたときはそうだったので、否定はしない。そこが第一関門なのだ。

そして飲食店街を進んだところで見えるこの横道。
夜になるとこの横通が「ランタン」で明るく照らされており、見た目とそして文字通り異彩を放つ空間と出くわすだろう。
「なんだここは」
「雰囲気がさらに怪しくなったし怖い」
「これ以上は行ってはいけないと脳が勝手に立ち止ませる」
勇気を出してここまで来ても、そんな考えがどこからか湧き出てくるだろう。
先にも述べたが、わたしも同じ思いをしたので否定はしない。ここが第二の関門である。

この異様な雰囲気すら感じさせる通りはもはや裏通りと呼ぶに相応しいが、勇気を出して進むとその道が分かれておりさらに「裏」へと進む道がある。

ランタンによって明るく照らされた通りが、様々な明かりでさらに異彩を放っている。
いよいよここまで来ると身の危険を感じてしまう人もいるかもしれないが、ここに今回紹介するベトナムカフェがある。

店の名前は「ĂN CƠM CHƯA?」という。
読み方は「アンコムチュア」という。
意味はベトナム語で「ご飯食べた?」という。
ベトナムでは相手の調子をうかがう気軽な挨拶であるという。

一見すると「なんか店っぽいのがある」とチラ見しただけで通り過ぎてしまうかもしれない。わたしも何度か目の前を通り過ぎたことがあるが、看板メニューを見るまでそこがベトナムカフェであることは知りもしなかった。
ある日「そういえば気になるお店があったな」とふと思い立って再びここに訪れ、そして看板メニューの「フォー」という文字を見たときに衝撃が走ったのを覚えている。
というのも、以前某孤独なグルメドラマでベトナム料理を扱った回を偶然見ており、そこでベトナム料理に興味を持っていたからだ。ドラマの主人公が美味しそうにベトナム料理の「フォー」「生春巻き」「ベトナムコーヒー」を味わっているのをみて、一度は食べてみたいなぁと常々思っていたのだ。
まさか津市内にあるわけないだろう、と思って半ば諦めていたわたしにとって、まさに運命の出会いであった。

「行くしかない」
そして数々の難関を乗り越え、ここ「ĂN CƠM CHƯA?」にたどり着いたのだ。

店内はカウンター席がいくつかと、テーブル席もある。
初めて訪れる人は椅子やテーブルに「ん?」思うだろう。わたしもそうだった。
しかし、この「ん?」と思う椅子とテーブルこそベトナムスタイルなのだ。
現地の店舗でもこれらと同じものを使っており、この店でもベトナムらしさを出すために使っているのだという。
ちなみに店主は日本人女性の方なので、「現地の人だったらどうしよう」と思ってる方は安心して欲しい。また、長くベトナムを訪れている方でもあるのでベトナム語も堪能。現地の方も安心して来て欲しい。

「勇気を出して通りに入って欲しい」
と店主の川村さんは語る。

なお、店の前のスペース(近隣の店舗で使う共有スペースらしい)にも同じ椅子とテーブルがあり、店外での食事も楽しめるので団体で来てもベトナム料理を味わえる。

さて、「ベトナム料理」と言われて思い浮かべるものはなんだろうか。
一番有名なのはやはり「フォー」であると思うし、それを目当てに来る人も多いだろう。
わたしもまっさきに注文したのがフォーであるが、そもそもフォーに鶏肉と牛肉の2種類があることも知らなかった。こちらは日によって出す種類が異なるということなのでぜひ数回訪れて両方を堪能していただきたい。
しかし、ベトナム料理はそれだけではない。
それ以外にも日本にはない異国の美味が味わえる料理が多くあるのだ。

では「ĂN CƠM CHƯA?」でいただいた料理を紹介していこう。

まずは先ほど挙げたフォーから。
鶏肉と牛肉の2種類があるが、どちらも肉の出汁を使って作られたスープにまず特徴がある。牛肉は牛の骨や色んな部位とスパイスを使っており、鶏肉は鶏ガラから作られているという。
特に牛肉の方は一見すると濃いこってり系のスープに見えるが、これがあっさりしているから意外だ。
鶏肉も牛肉も麺との相性な抜群。トッピングの野菜も歯ごたえとスープとの絡み具合が最高なので、ぜひ2種類とも味わって欲しい。

こちらは牛肉のフォー。柔らかな牛肉と麺・野菜の組み合わせが最高に美味しい一品だ。

次に、これもベトナム料理の定番メニューであるという「バインミー」だ。
ハノイのバケットのレシピという、外はぱりぱり、中はふわっとするフランスパンとはまた違うバケットにレバーペーストとベトナムのハム、そして様々な野菜を挟んだサンドイッチだ。
正直に言うと、わたしはレバーが苦手なのでこれを注文するのは躊躇していた。
しかし、それが食わず嫌いの愚かな過ちであることは食べてすぐに痛感することになった。
一口食べた時のバケットの独特の感触と、野菜の歯ごたえとハムのうまみ。そして何よりレバーペーストが美味しさを後押しするのだ。レバー独特の臭みはまったくなく、とにかく材料全ての相性が抜群のサンドイッチなのである。

こちらがバインミー。ちなみにここで一番の人気メニューなのだという。納得だ。

麺・サンドイッチときたら米類も欲しくなるのが日本人というものであるが(偏見失礼)、そこもお任せなのがベトナム料理だ。
ここではライスメニューとして「コムスゥン(豚焼き肉のせご飯)」と「コムガー(ベトナムチキンライス)」がある。
どちらも()の中の言葉見れば食べたいと思う内容だ。
下味のついた美味な肉が日本にはないお米(ジャスミン米)に乗っており、これに独自のタレをかければお米がさらさらになって独特の食感を楽しめ、味も食感も楽しめる一品だ。

こちらはコムスゥン。ちなみにライスを抜いたオーダーにも対応してくれる。

主食メニューはこれ以外にも生春巻きや揚げ春巻きといったものもあり、この冬にはココナッツミルクベースのチキンカレーも登場している。
また、ベトナムカフェとうたってはいるが現地で飲まれているお酒やビールも扱っているので、食事+飲みをしたい人にもオススメ出来る。
日本では飲めないココナッツ風味を感じさせる「ネプモイ」や紹興酒のような風味の「ネプカム」といった独特のお酒と、現地のビールも数多く扱っているのでぜひ味わって欲しい。
また、生搾りレモンジュースやベトナムコーヒーといったノンアルコールの飲み物も充実している。特にベトナムコーヒーは食後の一杯としても最適であり、個人的に一番オススメしたいドリンクメニューだ。

カウンターには現地のお酒やビールがずらっと並ぶ。どれも興味をそそられるものばかりだ。
専用の器具を使って淹れるコーヒーは、ミルク(練乳)ありで飲むのがオススメ。
生搾りレモンジュースも、砂糖が入ってるので「酸っぱ甘い」独特の味だ。

食後に何か物足りない方のために、デザートも用意されている。
これもベトナムでは定番のクラッシュアイスとコーヒーカラメルを混ぜた「ベトナムプリン」に、豆腐にジンジャーシロップをかけて食べるデザートもある。
ベトナムカフェなので、先に登場したベトナムコーヒーとセットで甘味を食べに来るだけでも幸せな気分になれるだろう。

ここに来たら必ず食べたい一品おベトナムプリン。数量限定なのでお早目に。
豆腐に仙草ゼリーとクラッシュアイス、そしてジンジャーシロップとこの組み合わせも抜群だ。

以上がこれまでいただいたベトナム料理であるが、ここに紹介出来ていない数多くの料理もあり、また店主の川村さんも今後新メニューをどんどん追加すると言っているので、興味が沸いたらぜひ訪れて味わって欲しい。

そしてここで何度も登場している「ベトナム」について、店主の川村さんにその魅力を「ĂN CƠM CHƯA?」を開いた経緯とともに伺ってみた。

ー「ĂN CƠM CHƯA?」はいつごろオープンしたのですか?

2018年5月23日にオープンしました。
プレオープンが1日からだったんですけど、そこから練習しながら準備を進めてきました。

ーお店を開いた経緯はどういったものになるのでしょうか?

サルシカのプロジェクトで、大門商店街を盛り上げたいというところからスタートし、ランタン通りにベトナム料理屋を作る話が出て、当時ベトナム雑貨を扱ってたわたしに話が来たんです。
お店の一部もサルシカのボランティアの方々が作ってくれたりしました。
(※サルシカの活動については公式サイトを参照)

ーお店のコンセプトというか、こだわりはありますか?

ここが津市の「リトル・ベトナム」となるようにしたい。
ベトナム通の人が来ても楽しいし、行ったことがない人も楽しい、ベトナム人の人が来たら懐かしいと思ってくれる店にしたいというですね。

ーベトナム歴はどれくらいになりますか?

20年になります。
当時日本で放映していたドラマでベトナムが話題になり、友達と行ったのがきっかけです。

ーずばり、ベトナムの魅力とはなんですか?

ヨーロッパとアジアがミックスされた独特の文化。
古き良き日本のような温かさと、人々の「発展してやる!」という熱い思いからくる人間臭さ丸出しの貪欲さ。そんなまっすぐな生き方が良い意味で生きるパワーに満ちていて、そこに圧倒されてしまった。
そんな人たちを見て、この人たちが何を話してるんだろう、と知りたくなり帰国後すぐにベトナム語教室に行ったほど魅了されてしまいましたね。

ーこの記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。

料理もオススメだけど、お店の外観や雰囲気など、たくさんの人の助けで作られたこの空間を楽しんで欲しい。もともとベトナム雑貨をメインで仕事をしていたので、2階に雑貨コーナーも作ってあります。現地で買い付けたたくさんの雑貨があるので、それだけでも見に来てくださると嬉しいです。
今後も料理のメニューを増やしていきますし、ベトナムの食材販売もやっていきたいと思います。この店を通じてベトナムに興味を持ってくれたらと思います。

店主の川村 陽子さん。 「ベトナムに興味があって行ってみたい!という方もお店にいらしてください!」

商店街の裏道のさらに裏道に、こんな魅力に溢れるな空間があることを知ってる人はどれほどいるだろうか。
まだまだ大門商店街には隠れた魅力がたくさんあると実感した出会いであった。
このお店に出会ってすっかりベトナムに魅了されたわたしも、いつか長い休みを取ってベトナムに訪れることが目下の夢である。

【お店情報】
ベトナムカフェ「ĂN CƠM CHƯA?(アンコムチュア)」
住所:514-0027 三重県津市大門24-20
電話:080-4848-2827

ホームページ:http://www.salsica.com/ancomchua/
Facebook:https://www.facebook.com/ancomchuaDAIMON/

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