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記憶の中にある故郷 人がつなぐ故郷 今を生きる故郷

帰ってきたなぁ。十人十色の故郷の風景。

鬼ヶ城トンネルを抜けると眼前に広がる七里御浜海岸が「おかえり」と迎え入れてくれる。熊野市から御浜町、そして紀宝町まで続く日本一長い砂礫(されき)海岸。熊野古道 伊勢路の「浜街道」としても知られている。

「やっぱり地元を離れて、帰ってきたなぁと思うのはこっちの海を見た時ですね。」

そう話すのは、紀宝町役場総務課に勤める阪井耕平さん(31歳)。阪井さんは生まれも育ちも紀宝町で、高校卒業後に大阪の専門学校に進学。その後、一旦は大阪の会社に勤めた後、21歳で紀宝町役場にUターン就職をした。

「子供の頃はとにかく外に出て行きたい気持ちでいっぱいでした。周りの友達もそうでしたね。」

土地柄、みかんはタダという感覚があり、地元を離れてお金を払って食べることにみんな違和感を抱くらしい

(華やかな都会で学びたい、働いてみたい)(親元を離れて一人暮らをしてみたい)と地域問わず、そんな思いを抱くのは自分にも心当たりがある。

「大阪で暮らしを始めて・・・ある程度、充実した生活を送ってはいたんですけど、休みには地元に帰ってきてました。今、思うと不思議です。」

よそ見運転は厳禁。でも、横目で見てしまう。

 

地元の良さって何ですか?

「やっぱり落ち着きますね。人の距離もとっても近いです。」

子供の遊びは川遊びや釣りなど。自然豊かな町だからこその遊びだ。

川の色は緑。澄んでいる。
紀宝町のランドマーク 製紙工場の煙突が印象的。

 

-生活に不便さは感じますか?

「うーん、あまり感じないですね。昔と比べて道路の整備やインターネットが普及していますし。時間はゆっくりしていますよ。」

車で2時間なんてなんのその。そんな感覚。

阪井さんの職場 紀宝町役場防災拠点施設から見える夕焼け
紀宝町の冬の風物詩 イルミネーション

 

阪井さんのお気に入りの場所は雪のような飛沫が美しい飛雪の滝。夏は仲間や家族で集まりバーベキューを楽しみ、滝下で子供たちは水遊びをする。

阪井さん:今は少し水量が少ないですね

 

阪井さん:いいところでしょう。

 

雪のような飛沫は朝の日差しで虹も彩る。 提供:飛雪の滝キャンプ場

30歳の大同窓会 MITOE(三十会)を開催して

阪井さんは昨年度、201812日に開催された【30歳の大同窓会 MITOE(三十会)in御浜町・紀宝町 (以下、 MITOE)】の実行委員長を務めた。※.今年は南郡 88会88(ハチハチ)忘年会in御浜町・紀宝町に名称変更。

MITOEは、御浜町・紀宝町で生まれ育った人たちが、30歳で地元に集まり交流し、同級生との再会や新たな出会いを楽しむイベント。今年は第2回目で、阪井さんは映えある第1回目の実行委員長となった。

人が集まるかはとても不安だったそうだ。御浜町(御浜中学校,阿田和中学校,尾呂志学園中学校)、紀宝町(矢渕中学校,相野谷中学校)と町をまたいだ初めての試みに、

「隣町といってもはじめは少し緊張しました。すぐに打ち解けました」

昨年度、集合写真の様子

当日を迎えると町内外から38名が御浜町の「ごちそうダイニングby辻さん家」に集まった。普段から会っている見知った顔、10年以上ぶり(成人式ぶり)の懐かしい顔から、初めて会う顔まで十人十色の交流の場。共通するのは、みんな御浜町・紀宝町に生まれ育ったことだ。

「とにかく楽しかったです。初対面でも話をしていると、実はあそこの子やったんかと驚いたり。地元のお酒を飲みながら、最後まで和気あいあいとした時間でした。」

生まれた地に戻ってくるウミガメの話

紀宝町といえば、ウミガメが産卵をしにくることで有名だ。

阪井さんの幼少期に通った井田小学校では、昭和63年に全国で初めて制定された「ウミガメ保護条例」の一環で、「ウミガメ産卵・放流」を続けている。年によっては孵化がうまくいかない時もあるそうだが、井田小学校で育った子どもたちにとってかけがえのない思い出になっている。阪井さんもその一人だ。

画像提供:紀宝町役場

孵化した子ガメの旅立ち。これから黒潮に乗り、食べ物が豊富な遠く離れたカリフォルニア半島の沖合に向かう。

画像提供:紀宝町役場

そして、成長したウミガメは再び生まれ育った場所に帰ってくるそうだ。

なんか、ウミガメと阪井さん・・・似ていますね。

「あはは、そうですね。似ていますね。」

-子供の頃の目線、大人になってからの目線

「この写真は実はこの間撮ったものなんです。」

そう言って見せてくれたのは、高台にある自宅から見える風景。子供の頃は当たり前で何も意識することのなかった風景が今では阪井さんにとって特別なものとなっていて、現在でもふと写真を撮ってしまうそうだ。

子供の頃から見てきた風景、地元を離れ帰ってきて見てきた風景、そして今まさに見ている風景。時を重ねても変わらない、そこにあるもの。頭の中に焼きついた阪井さんにとってのかけがえのない記憶。

きっと、阪井さんだけじゃなくたくさんの人が別々のカタチで持っているだろう。記事を書いていて少し涙ぐんでしまった。

 

 

阪井さんたちの思いは世代を越えて

今年は30歳を迎える人たちが1988年生まれ(198842日~198941日)であることから、名称「南郡 88会88(ハチハチ)忘年会in御浜町・紀宝町」として御浜町・紀宝町の出身者が一堂に会する。昨年同様、同郷者同士で打ち解けあって食事をしながら童心に戻り、そして、阪井さんのように地元で働く同級生から故郷の良さを聞いたりして・・・ぼんやりしていた何気ない日常の記憶が鮮明に蘇り、「何かいいな」と思ったり。世代が変わりながら、これからも人と人、故郷をつなぐきっかけになっていくのだろうな。

取材を通して感じたことは、行く先々での人の温かさや町のゆったりした風土。包み込むように迎え入れてくれる場所であり、それは御浜町・紀宝町特有のものではないのだと思う。

SNSでは繋がっているけど、最近、会えてない友達。結婚や出産で連絡を取る回数が減っている友達。忙しいかもしれないけど、年末年始の帰省ついでに思い切って連絡してみようかな。

 


南郡 88会88(ハチハチ)忘年会in御浜町・紀宝町

日時:2018年12月30日18:00〜20:00

場所:ごちそうダイニングby辻さん家

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